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トレイルランナー
お昼少し前、秩父方面があまりに混んでいたので諦めて299号を引き返してきて、正丸駅に寄った。
ここは何度も来ていて駅前の広場に小さな食堂がある。
実は少し前にリニューアルされていた。
オープンが早朝ではなくなってしまったけれど、この時間は余裕で開いている。国道を通り過ぎるだけの人たちの目には入らないから駅を降りてハイキングに行く人達の利用が多いのだろう。メニューには「塩むすび 200円」なんてのもある。
一人でカレーうどんを食べている若い男性がいた。
軽装でそばにはサロモンの小型のリュックが置いてあった。ハイカーだと思った。
彼は食事が終わると丼を返して外に出ていった。
こちらも武蔵野うどん風の冷やしたぬきを食べ終えて外に出ると彼がリュックの中身を整理していた。
「これから山登りですか?」と声を掛けると
「はい、これから子ノ権現を超えてさわらびの湯まで行って帰ります。」
秩父の駅から羊山公園を通ってここまで来たそうだ。国道だけなら14kmはある道のり。
「子の権現はこちら側はいい道だけど飯能側は急でハードだよ」というと
「今度大会で走るのでその下見にいいかなと思って」
続けて
「これから雨みたいなんですけど、それも含めて予行練習に。」
そう言って荷物を背負うと“じゃ、行ってみます”と駅の横のハイキングコースを降りていった。
雨と聞いてはこちらも急がざるを得ない。さっさと支度を済ませて299を戻ることにした。
少し走ると見覚えのあるリュックを上下に揺らしながら路肩を走る人の姿が見えた。
彼はトレイルランナーだったようだ。確かに“今度大会で走る”と言っていた。
この先を右に折れて山道を登って行くのだろう。
彼に近づいたときに少しオートバイのスピードを落として軽くホーンを鳴らして手を上げた。
彼も気づいて片手を上げて返してくれた。
“雨は降らないに越したことはないよな“と、遠くのグレーの雲を見ながら帰宅した。
オートバイを降りて物置から出ると、空から雨粒が落ちてきた。