訓練1-2
俺はボールをセットして、1、2、3、4、5と心のなかで数えながら後ろに下がった。フェンスの向こうで応援するチームメイトたちの姿が視野の隅に見える。やがて鳴り響く歓声が徐々に消えていった。俺はぎゅっと手を握った。ドラムビートみたいに心臓がドクドク鳴るのが自分でもわかる。GKはおそらく右に飛ぶだろう、いや左かもしれない…。とにかく思い切り蹴るだけ。。。俺は勢いよく助走をとった。右、いや、真ん中! 思い切り蹴った。悪くない! が、想定した軌道の上をいくボールを見たその瞬間、枠を外したと思った。膝が崩れそうになるのを気力で堪えようとしたその時、バーに当たったボールが下に跳ねてゴールラインを越えた。遠のいていた周囲の音が徐々に耳に入ってくる。チームメイトの歓声が聞こえる。気づけば俺はベンチに向かって無我夢中で走っていた。17年生きて今が一番幸せなのだと心の底から思った。
あなたからの僅かなサポートでわたしは元気になり、それはさらなる創作意欲に繋がってゆきます。