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心が折れるマネージャー達

昨日、引き籠りながらツイッターをしていると、えとみほさんの以下のツイートがTLに流れてきた。そして非常に共感したと同時に私の胸中がモヤモヤした。えとみほさんのツイートは職場での話に限定されていると思うので、ここでは職場で育成が発生する直属の上司と部下を想定して話を進める。

そしてこのリプもまた非常に興味深いものだった

ちなみに一連のえとみほさんのツイートは非常に示唆に富んでいるので、ぜひ目を通していただきたい。

唐突だが、ビールの注ぎ方を分かりやすく説明してください、と言われたときあなたはどう説明するだろうか。相手はビールは何かを知っており、近場で飲んでいる大人を見たことがあるものとする。念のため、ここではビールを飲んだことがない相手という設定にする。

①(相手がいる場合)ラベルを上にし、相手に見せる
②グラスに瓶や缶をつけず、離す
③最初は勢いよく、そして徐々にゆっくり注ぎ、その後に泡を調整する

こんな説明をするのだろうか。別にそんなに悪い説明ではないと思う。しかし、これでは”泡の調整”とは何を指しているのか、一体どういう泡の状態にすれば理想なのかが分からない。そこで、以下の説明が必要になる。

~ビールがおいしく飲める、三度注ぎのやり方~

①グラスを置き、なるべく高い位置からビールを注ぎます。初めはゆっくり注ぎ、途中から勢いをつけて泡を立て、グラスを泡でいっぱいにします。そのまま2分ほど待ちます。

②泡がおさまり、泡の量がグラスの半分程度になったら、2回目を注ぎます。グラスの縁から、そっと泡の下にビールを注ぎ込み、グラスから1cmほど泡が盛り上がるようにして再び待ちます。

③盛り上がった泡がグラスの縁よりも下がる前に、最後にビールを注ぎ足します。泡が崩れないようにそっと注ぎ込み、グラスから2cm程度、泡を盛り上げます。

④理想のビールと泡の比率は7:3のため、確認しながら泡を盛り上げます。

※私が愛するキリンのHPを参考にしました

個人的には後者のマニュアルが一番分かりやすいというつもりもないが、1から10まで記述されたマニュアルが必要なのが現代だと思う。しかし、当方アラサーなのだが、私がまだ新卒の頃は冒頭のような一見悪くないし、分かったような気になるマニュアルがメジャーだった気がするし、そのマニュアルを手に自ら試行錯誤した人が多かった気がする。しかし、今はそれをすると下手をするとハラスメントに引っかかり、部下は一向にして育たないだろう。率先垂範すればいい、と考える方もいらっしゃるかもしれないが、その率先垂範は一体どこまで部下に伝わるのだろうか。効率よく部下が学べるものなのだろうか…。

心が折れるマネージャー達

経年とともに、膝を揃え、部下の能力や意欲をくみ取りながら育成するマネジメントが少しずつデフォルトになってきたように感じる。だが、一方で疲弊するマネージャーも多い。全身全霊で部下と向き合おうとする人ほど、部下に付き合い切れなくなり、心が折れているように見える。

その原因の一つに、えとみほさんが指摘していた「お客様扱いに慣れている20歳前後」の存在があるように感じる。もちろん私個人の見解と経験の話なので、サンプルの偏りがあることは重々承知の上だ。

しかし、先ほどの「~ビールがおいしく飲める、三度注ぎのやり方~」のようなマニュアルを整備し、目の前にあるのに反射的にすぐに質問し、何度も同じような質問をする部下はいる。「マニュアルに書いてあるでしょ」と言えば済む話かもしれないが、では「心理的安全性」という観点からその対応は正しかったのだろうか?

同じような質問をしたからと言って、部下のメールもしくはメッセージを無視するのか?それはハラスメントになる。

1度や2度聞いただけで理解できる人間はどれほどいるのだろうか?一部でも質問を処断することがマネージャーとして正しいのだろうか?どう線引きするのが正しいのか?1度聞いたことは2回聞くなと言って、マネージャーと部下との情報通達が正常に行われるだろうか。

マネージャーの伝え方の問題なのだろうか?しかし、マニュアルに書いていてそれに目を通せば理解できるほどの知性を持った人が、マニュアルに目を通さずに反射的に質問をする場合、それはマネージャーの伝え方の問題なのだろうか?

今回は質問という行為に絞ったが、「相手の時間を奪う」という意識がないことにフォーカスすると、自分で考えずにすぐに答えを求めて上司に回答を急かす人もいるだろう。分からない、苦手だ、得意じゃない、と放棄してすぐに上司に助けを求め、改善が見込めない社員もいる。

全ては本当に教育者、マネージャーの責任なのだろうか。いや、実際にそうだろう。マネジメントできていないのだから。しかし、その責任は「教育者の責任です」という一言に集約されるほどシンプルなものなのだろうか。

肥大化するマネージャー像についていけない

巷に蔓延る理想のマネージャー像は今日も休まず肥大化しつづけ、それを追い求めれば追い求めるほど、心が折れる時代になったなぁと最近痛感する。清濁併せ呑むのはとても難しい。マネーの虎のキャラクター(名前忘れた)みたいに「部下の意見なんか聞いてられるかボケナス!稼いだら勝手に部下はついてくるわ!」と言えればいいけど、多分そんなこと言ったらハラスメント窓口に通報されて、人事からどつかれるし、そんなことしても生きてるのはオーナー企業や不動産屋ぐらいじゃないだろうか。(不動産屋に失礼)

叱るという行為は精神的に疲弊する行為だ。褒める方が簡単だ。叱るという行為に行きつくにはまずは感情という芽が出るところから始まり、そこから不必要な棘を取り除くという作業が必要になる。棘はハラスメント要素だからだ。そして叱らないようにするためには、部下とあまり向き合わない方がいい、期待しない方がいい。ピグマリオン効果を鵜呑みにし、部下に期待し、信じれば、自分が勝手に設けたその期待と虚像が実像とかけ離れていたことに気づいた時、多少は感情的になる。

実際はここまで心が折れる前に部下の適材適所を意識した人員配置や異動を行うだろうし、職務内容の見直しをするだろう。ただ、すべての会社で人員異動や職務内容の見直しが出来るわけではない。(少なからず工夫すべきとは個人的に思うが…)

では、育成が困難な人材を雇うな、採用を見直そうという人もいるかもしれない。しかし、採用は最終的には確率論だ...という話に行きつく。

長々と息が詰まるような文章を書いたが、「この負のスパイラルを断ち切る可能性があるのは何か」と考えたとき、それはマネージャーのフォローアップ体制や支援という組織の仕組だと思う。採用する社員、既にいる社員の思考の癖や長年の環境で身に着けた価値観やコミュニケーションの基本軸を変えることは想像以上に難しく、ほぼ不可能に近い。しかし、彼らを育てるマネージャーのフォローアップ体制や支援はそこまで難しくないのではないだろうか。
難しく、ほぼ不可能に近い。しかし、彼らを育てるマネージャーのフォローアップ体制や支援はそこまで難しくないのではないだろうか。

追記:読み返すとコミュニケーションが下手くそなマネージャーの言い訳のように読み取れる気がしたので、コミュニケーションに関しては過去にこちらで語っているので、そちらに目を通していただけると泣いて喜ぶ

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坂口ジャス子
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