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水を無駄にしない新しい農業の形:アクアポニックスの驚くべき節水効果

この記事を読んでいただきありがとうございます。

私は兵庫県西宮市でアクアポニックスに取り組んでいる「もり」と申します。植木屋として5年、アクアリウム歴10年の経験を活かし、持続可能な農業の形としてアクアポニックスに挑戦しています。

祖母の農地を守りたいという思いから始まったこの取り組みは、単なる家庭菜園の延長ではなく、未来の農業の可能性を探る挑戦でもあります。近年、気候変動や水資源の枯渇が叫ばれる中で、少ない資源を最大限に活用することが求められています。その中で、アクアポニックスは持続可能で環境に優しい農業の解決策として注目を集めています。

アクアポニックスを選んだ理由は過去記事▶【非農家出身の私が祖母の農地をアクアポニックスで再生する|もり / アクアポニックス】◀をご覧ください。

アクアポニックスとは何か、その仕組みがなぜ節水に優れているのか、そして私自身が実践を通じて感じたその効果について、この記事で詳しくご紹介していきます。

アクアポニックスの導入が水の節約や農業経営にどのような影響を与えるのか、具体的なデータや実体験を交えて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

アクアポニックスとは?


アクアポニックスとは、水産養殖と水耕栽培を組み合わせた持続可能な農業システムのことです。魚と植物の共生によって、双方が必要とする栄養や環境を補い合い、自然の力を利用した持続的な農業が可能となります。

このシステムでは、魚が排出する栄養分を含む水が植物の栄養源となり、植物は水中の栄養を吸収することで水を浄化します。このようにして、アクアポニックスは水を効率的に循環させることで、水の使用量を大幅に削減することができるのです。

水の使用量が劇的に減少する理由

従来の土耕栽培においては、植物に水を与える際、土壌を通して蒸発したり、地中に浸透して失われる水が多く存在します。

一方、アクアポニックスではシステム内で水が完全に循環します。魚の水槽で使用された水は、植物の栽培ベッドに送られ、そこで植物に吸収されると同時に浄化されます。その後、浄化された水が再び魚の水槽に戻るという仕組みです。この循環によって、アクアポニックスは通常の農業と比べて水の使用量を最大で90%削減することができると言われています。

私自身の施設でも、この節水効果は非常に大きなインパクトをもたらしました。アクアポニックスを導入する前は、日々の水やりや灌漑にかなりの水量を使用していましたが、アクアポニックスに切り替えてからは、その水使用量が激減しました。

これは、特に水資源が限られた地域や、雨が少ない季節には非常に大きなメリットとなります。

循環システムによる水の再利用

アクアポニックスの最大の特徴は、水をシステム内で循環させるという点です。従来の農業では、植物に与えた水が地中に吸収されたり、蒸発することで失われてしまいます。しかし、アクアポニックスでは魚と植物が共に存在することにより、水が無駄なく再利用されます。

魚の排泄物は水中に栄養分(アンモニア)として蓄積されます。このアンモニアは、システム内のバクテリアによって硝酸塩に変換されます。硝酸塩は植物にとって非常に重要な栄養源であり、これを吸収することで植物は成長し、その結果として水も浄化されます。このサイクルにより、水が常に再利用され、無駄になることがほとんどないのです。

この循環システムを活用することで、私の施設では毎日の水の補給が最小限で済むようになりました。具体的には、通常の農業であれば毎日のように行っていた水やりが、アクアポニックスにおいては週に数回の水の補充だけで済んでいます。この節水効果は、農業経営におけるコスト削減にも大きく寄与しています。

節水効果とコスト削減の関係

アクアポニックスの節水効果は、環境面だけでなく経済面でも非常に有利です。農業用水を使用している場合でも、取水の手続きや管理に一定のコストがかかります。特に広大な土地で農業を行う場合、その水の使用量は膨大であり、水資源の管理や取水コストが経営を圧迫することも少なくありません。

しかし、アクアポニックスでは水がシステム内で循環するため、新たに必要となる水の量は非常に少なく、水の使用コストの大幅な削減が期待できます。私の施設でも、アクアポニックスを導入する前と後で比較すると、水の使用にかかるコストが約80%減少しました。

これは単に経費削減というだけでなく、限られた資源を効率的に使うという持続可能な農業の実現にもつながっています。

さらに、節水効果により、乾燥地帯や水資源が乏しい地域でも農業を続けることが可能になります。これは、地球環境の保護という観点からも非常に重要です。地球全体で見れば、今後ますます水資源が重要な課題となることが予測されています。その中で、少ない水で効率よく作物を育てるアクアポニックスは、未来の農業における希望の光とも言えるでしょう。

地球環境への貢献

アクアポニックスによる節水は、単に水の節約にとどまりません。それは地球環境全体への大きな貢献でもあります。農業は世界的に見ても非常に多くの水を使用する産業であり、特に乾燥地域や水不足に苦しむ地域においては、農業による水の消費が深刻な問題となっています。

アクアポニックスは、その水の再利用システムによって、農業に必要な水の量を大幅に削減することができるため、水資源の保護に大きく寄与します。水資源が枯渇しつつある現代において、農業が持続可能であるためには、水の使用をいかに効率的に行うかが重要なポイントとなります。アクアポニックスは、その課題をクリアするための非常に有効な手段であり、未来の農業のスタンダードとなりうる技術です。

実際、地球上で人間が利用できる淡水は全体のわずか2.5%程度しか存在していません。

その中でも、湖や河川などの形で容易にアクセスできる淡水はさらに限られており、全体の1%にも満たないと言われています。

「地球は青かった」と語った宇宙飛行士の言葉がありますが、その大部分は人間が直接利用できない海水です。このように、私たちが使える水資源は非常に貴重なのです。

こうした背景から、世界中の国々や企業が水資源の確保に力を入れ始めています。最近では、外国の企業や投資家が各地で水資源を購入し始めているというニュースも目にします。水は今や石油やガスと並ぶ戦略的資源として扱われており、将来的には水を巡る争いが起こる可能性さえあります。私たちは、限られた水資源をどのように効率よく使うかを考える必要があり、アクアポニックスはその答えの一つであると考えています。

私がアクアポニックスを導入したのも、祖母の農地を有効に活用しつつ、地球環境に負荷をかけない方法を模索した結果でした。地域の資源を最大限に活用し、無駄を省くことが、持続可能な農業にとって最も重要なことだと感じています。そして、アクアポニックスの節水効果は、その持続可能な農業の一翼を担うものであると確信しています。

幸いなことに私が住んでいる地域は水が豊富ですが、水資源が限られた乾燥地帯では、アクアポニックスのような節水型の農業技術が特に有効です。乾燥地帯での農業は、土壌への水の吸収や蒸発によって多くの水が失われるため、持続的な作物の生産が難しいとされています。しかし、アクアポニックスでは、システム内で水が循環するため、乾燥した気候でも効率的に農業を行うことが可能です。

例えば、オーストラリアのような乾燥地域では、アクアポニックスを活用して野菜や魚を育てている事例もあります。これらの地域では、地中に吸収されてしまう水を最小限に抑えることで、持続可能な農業が実現されています。このように、乾燥地帯における農業の新たな方法として、アクアポニックスは非常に大きな可能性を秘めています。

節水のための工夫と取り組み

私の施設では、アクアポニックスによる節水効果を最大限に引き出すために、いくつかの工夫を取り入れています。一つは、水の蒸発を防ぐための対策です。例えば、植物の栽培ベッドの表面を覆うことで、水が蒸発するのを防いでいます。また、水槽の水温を一定に保つことも重要です。水温が高くなると蒸発が進むため、適切な温度管理を行うことで水の蒸発を最小限に抑えています。

また、雨水を利用することでさらに節水効果を高め、効率的に水を使うことができます。私自身は雨水の利用を行っていませんが、雨水を貯めて必要に応じてシステムに補充することで、水の使用を減らすことが可能になります。これにより、限られた水資源をより効率的に利用することができ、さらに環境への負荷を軽減することができます。

このような取り組みを通じて、アクアポニックスの節水効果を最大限に活用し、持続可能な農業を実現しています。これらの工夫は、誰でも取り入れることができるものであり、初めてアクアポニックスに挑戦する方にとっても有益な情報となるでしょう。

節水がもたらす地域社会への影響

アクアポニックスによる節水効果は、地域社会にもさまざまな影響を与えます。水資源を節約することで、地域全体の水の使用量を減らし、結果的に地域の水供給に対する負担を軽減することができます。特に、農業が盛んな地域では、農業による大量の水使用が原因で水不足に悩まされることが多く、地域全体の水利用計画に悪影響を及ぼすこともあります。

私の住む地域でも、アクアポニックスを導入したことで、周辺の農業に与える水資源の影響を少なくすることができました。農業は地域社会にとって重要な産業ですが、その一方で水資源を大量に使用するという課題も抱えています。アクアポニックスは、その課題を解決し、地域社会全体で持続可能な農業を実現するための一つのモデルとなることができるのです。

また、地域の人々がアクアポニックスに興味を持ち、見学に訪れることで、節水型農業の重要性を広めることにもつながっています。地域での啓発活動を通じて、限られた水資源を有効に活用することの大切さを伝えることができるのは、とても有意義なことだと感じています。

アクアポニックスは、水産養殖と水耕栽培を組み合わせることで、持続可能な農業を実現する優れた技術です。このシステムにより、従来の農業と比べて水の使用量を大幅に削減することができ、環境保護やコスト削減に大きく寄与します。特に、水資源が限られている地域や乾燥地帯では、アクアポニックスが農業の未来における重要な選択肢となるでしょう。

また、アクアポニックスを導入することで、地域社会における水資源の使用効率が向上し、持続可能な農業の普及につながります。この記事を通じて、アクアポニックスの持つ可能性とその節水効果が、多くの人々にとっての新たな選択肢となることを願っています。

著者紹介

もり

兵庫県西宮市在住。
植木屋として5年、アクアリウム歴10年の経験を活かし、2021年から義理の祖母が大切にしてきた農地でアクアポニックスに取り組んでいます。

高齢化が進む地域で、祖母の農地も休耕地になる可能性があり、なんとか活用できないかと考えた結果、アクアポニックスを取り入れることに。
持続可能な運用を目指し、日々試行錯誤を続けています。

≪SNS総フォロワー1万人以上≫
インスタグラムを中心にアクアポニックスや農業の魅力を発信中です。

≪農場見学について≫
関西を中心に、全国から法人・個人問わず多くの方が訪れる農場です。見学では、アクアポニックスの基本や日々の管理のポイントを初心者にもわかりやすくお伝えしています。訪問者の中には、同じように休耕地の活用方法を探している方も多く、私の取り組みが参考になればと願っています。

≪応援をお考えの方へ≫
アクアポニックスの取り組みを通じて、祖母の農地の活用と地域の農業活性化を目指しています。活動に関心を持っていただける方や応援をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

≪メディア実績≫
ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」
Mer編集部「Mer Vol.36」 その他

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