はじめてのnote | 自己紹介 | 非農家出身の私が祖母の農地をアクアポニックスで再生する
高齢化の壁を超える新しい農業の形:アクアポニックスの実践
皆さんは、植物と魚が共に育つ「アクアポニックス」という技術をご存じでしょうか?
水産養殖と水耕栽培を組み合わせたこの持続可能な農業システムは、環境に優れた新しい方法として注目されています。
アクアポニックスは、限られた水資源を最大限に活用し、持続可能な農業を実現する手法です。
このシステムを導入することで、自然環境に配慮しながら、より効率的に食料を生産することができます。
なぜアクアポニックスを始めたのか
私が住んでいる地域では、農家の高齢化が進み、年々休耕地が増えて資材置き場に変わっていっています。
全国的にも同じような現象が起こっていると思いますが、自分の身近でそれが現実のものとなるとは思いもしませんでした…
実はこの農地は妻の祖母、つまり義理の祖母の土地です。
もし妻と結婚していなければ、こういった状況には直面していなかったでしょう。
ある種の運命的なものを感じています。
さらに、私の実の母は観葉植物が趣味で、父は熱帯魚が趣味でした。
この背景が、私の考えに大きな影響を与えていたのかもしれません。
子供の頃から家の中には植物と魚が常にあり、それらが共存する空間に慣れ親しんでいました。
この経験が、後にアクアポニックスというアイデアにつながるとは当時は思ってもいませんでしたが、今振り返ってみると、この環境が私の現在の活動の原点であったと感じます。
農地の活用を模索して
義理の祖母は昔から農地を大切にしてきましたが、年々農業を続けることが難しくなり、その農地をどう活用するかが課題になっていました。
私はもともと農家の育ちではありませんが、祖母の土地を活かす方法を模索し、何かできることはないかと考え始めました。
農業の世界は私にとって未知の領域でしたが、それでも祖母の大切な土地を守りたいという思いが強く、その思いが私を動かしていました。
植木屋から農業への挑戦
私は植木屋として5年間働いており、植物に関する知識はある程度持っていました。
植木=野菜という考えが頭に浮かび、野菜の栽培にも挑戦できるのではないかと考えたのです。
しかし、実際に祖母を手伝う中で、植木と野菜は似ている部分もあれば、全く違う部分も多いことに気づきました。
農業は私が想像していた以上に過酷で、除草作業や水やり、しゃがんだり、腰を曲げての作業、そして重機などの機械を扱う危険な作業があり、体に大きな負担がかかることを痛感しました。
これが、祖母が苦労してきた現実なのだと理解したのです。
アクアリウムからアクアポニックスへ
そんな中、私はアクアリウム、アクアテラリウムを管理していく経験から、ふと『水草、観葉植物=野菜』という考えがよぎりました。
アクアリウムの中で水草や観葉植物が育つ仕組みを見て、「もしかしたら、これを野菜の栽培に応用できるのではないか?」と思うようになったのです。
アクアテラリウムのメリットの1つとして、陸上植物が硝酸塩を吸い取ることで水槽の水換え頻度が劇的に減ることを知っていたため、このアイデアに自信がありました。
実際に水槽で野菜の種をまいたり苗を植えてみると、魚の排泄物を栄養として植物が育つという仕組みがうまく機能し、野菜が育つことを確認しました。
まさにアクアポニックスのシステムであったのです。
自分の考えが間違っていなかったことに気づき、まるで頭の豆電球が光ったような感覚でした。
アクアポニックスの導入とその成果
この経験から、私は「アクアポニックス」という技術に強い興味を持つようになりました。
アクアリウムと水耕栽培を組み合わせた持続可能な農業システムは、まさに私が探し求めていたものでした。
アクアポニックスは、水と栄養分の循環を利用し、魚と植物が互いに助け合う仕組みです。
このシステムにより、化学肥料を使わずに野菜を育てることができ、魚の成長にも良い影響を与えることがわかりました。
アクアポニックスを導入してから、農場では多くの変化がありました。
まず、水やりの必要がなくなったことが非常に大きな変化です。
従来の農業では水やりは毎日の負担となっていましたが、アクアポニックスでは自動的に水が循環するため、水やりを心配する必要がなくなりました。
また、水の使用量が劇的に減少しました。
魚と植物の共生関係を利用することで、水を無駄にせず、持続的に使うことができるようになったのです。
さらに、耕運機などの重機を使う必要がなくなり、危険な作業から解放されました。
畝立てや土づくりの必要もなくなり、これまで重労働だった除草作業も不要になったことで、腰を曲げて行うような体に負担のかかる作業が激減しました。
これは、水資源が限られた地域にとっても大きな利点です。
また、肥料を購入する必要がなくなり、コストの面でも大きなメリットを感じています。
魚の排泄物が植物にとっての栄養となるため、自然な循環の中で植物が健康に育つのです。
こうした変化により、農業の効率が格段に上がり、祖母の農地を新しい形で活用できていることに大きなやりがいを感じています。
地域との繋がりと未来への展望
ありがたいことに、今では全国各地から、法人・個人問わず多くの方に見学に来ていただいています。
見学に訪れる方々は本当にさまざまで、親子連れから新事業を検討している企業、福祉関係や教育関係の方々まで幅広く、私たちの取り組みに関心を寄せてくださっています。
また、地域の方々からの反響も多く、見学を通じて地域のコミュニティとの繋がりが深まりました。
農業の新しい形を見て「こんな方法があるんだ」と感心していただけることが多く、私自身もそれが大きな励みとなっています。
アクアポニックスを通じて、地域の農業に新たな息吹をもたらせたことが非常に嬉しいです。
私たちの農場に見学に訪れる方々は、農業に関心を持つ個人だけでなく、持続可能なビジネスモデルを模索する企業や、福祉施設での新しい活動を検討している関係者、さらには教育の現場で生徒たちに持続可能な農業について教えたいという教育関係者まで多岐にわたります。
アクアポニックスという技術が、ただの農業手法にとどまらず、さまざまな分野で応用可能なものであることを実感しています。
また、地域との交流を通じて、コミュニティの一員として貢献できていることを実感しています。
アクアポニックスを導入して以来、近隣の農家の方々とも意見交換をする機会が増え、お互いの知識や技術を共有することで、新しい取り組みへの意欲が生まれています。
「農業って楽しい」「自然と一緒に何かを作り出せるんだ」という子どもたちの声を聞くたびに、アクアポニックスを通じて未来に繋がる経験を提供できていることに誇りを感じます。
今後の展望
アクアポニックスを始めるにあたっては初期投資が必要ですが、それを補うほどのメリットを感じています。
水の節約だけでなく、農薬を使わない安心・安全な食材の生産、そして都市部でも導入可能な効率的なシステム。
これらの特徴が、今後さらに広がっていく可能性を秘めていると感じています。
私たちが目指すのは、ただの農業ではなく、持続可能で環境に優しい農業なのです。
将来的には、このアクアポニックスの取り組みをもっと多くの人に知ってもらい、導入をサポートする活動も視野に入れています。
都市部の限られたスペースでも取り組めるこのシステムは、今後の食糧問題の解決策の一つになると信じています。
また、地域の高齢者が再び農業に参加できるような、身体に優しい農業の形としても広がっていけばと願っています。
著者紹介
もり
兵庫県西宮市在住。
植木屋として5年、アクアリウム歴10年の経験を活かし、2021年から義理の祖母が大切にしてきた農地でアクアポニックスに取り組んでいます。
高齢化が進む地域で、祖母の農地も休耕地になる可能性があり、なんとか活用できないかと考えた結果、アクアポニックスを取り入れることに。
持続可能な運用を目指し、日々試行錯誤を続けています。
≪SNS総フォロワー1万人以上≫
インスタグラムを中心にアクアポニックスや農業の魅力を発信中です。
≪農場見学について≫
関西を中心に、全国から法人・個人問わず多くの方が訪れる農場です。
見学では、アクアポニックスの基本や日々の管理のポイントを初心者にもわかりやすくお伝えしています。
訪問者の中には、同じように休耕地の活用方法を探している方も多く、私の取り組みが参考になればと願っています。
≪応援をお考えの方へ≫
アクアポニックスの取り組みを通じて、祖母の農地の活用と地域の農業活性化を目指しています。活動に関心を持っていただける方や応援をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
≪メディア実績≫
ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」
Mer編集部「Mer Vol.36」 その他
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