どくはく8「橋の下で拾われた私」
父と母によく言われていた。
「きりしまはどっちにも顔が似てないね」
なぜ、顔が似る似ないを気にするんだろう。
そんなに重要なことなのかな。
不思議だった。
お兄ちゃんは父に似ていて、「似てるね~」って言われて嬉しそうだった。
私だけのけものだった。
そして、あるとき言われた。
「貴方は橋の下で拾ったのよ」
あぁ、なるほど。
だからお父さんとお母さんと顔が似ていないんだ。
私はこの家の子どもじゃないんだ。
2人と血がつながってなくて、どこか別のところで生まれたんだ。
よくある冗談のはずなのに、何故か私はそんなふうに信じ込んだ。
母が私を嫌っていて、好きじゃないのは、私が血がつながってないから、本当の子どもじゃないから。
妙に納得した。
だったら、傷つけられても、どんなに怒られても、この人達は私を大事にする理由がないのかなと思った。
実際血はつながっているらしい。
でも、心のつながりは感じられない。
なにが正しい親子なのか、なにが正しい関係性なのか、わからない。
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