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ペライチ小説~選挙の夢~
<この国も捨てたもんじゃないな>僕はテレビに向かってそう呟いた。
『私たちの党は国民1人1人の目線に立って公約を実行していき、この国に住むすべての人たちが明日を楽しみできる、そんな国にしていくことを約束します!』
選挙が迫る中、テレビで行われた党首討論。
時間をたっぷり使って自分の党のマニュフェストを発表したのは、もっとも多い議席を持つ党の党首だ。党が持つ議席数によって喋る時間は決められており、間をたっぷり使い、表情も変化させながら、自信満々に余裕を持った演説を披露した。
『私たちの党は国民に寄り添い、女性や子ども、弱い存在に光りを当てる政治をしてまいります』
短い時間しか与えられなかったこともあり、党が目指す芯の部分は分からなかったが、女性党首は最後に深々と頭を下げ、何かを必死に訴えようとしていた。
『みんなで手を繋ごう』
少数しか議員を抱えていない党の党首は一言だけ言葉を発してカメラが切り替わった。
熱狂的なファンを持つ党だが、この一言がどれだけ票に影響を与えるのか。
『愛』
一言のみしか許されなかったのは、まだ結成して3年も経っていない小さな党の党首だ。前回の選挙ではSNSを使った選挙戦を繰り広げ、なんとか1つ議席獲得したのだった。
議員は党首1人しかおらず、与えられた時間もごく僅か。そこで最後に司会進行を任されているキャスタ―から「あなたの党が他の党に負けていない点は?」と聞かれ、口から出た言葉が『愛』だった。
そして迎えた総選挙当日。
結果は党首討論で一言しか発することができなかった党が大躍進を遂げ、第一党になった。
そんな総選挙を見て僕はつい呟いてしまった。<この国も捨てたもんじゃないな>
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