異色の骨太映画、『異端の鳥』がヤバかった
映画館で何気に手にしたチラシを見たときから気になってしょうがなかった作品、『異端の鳥』。
首まで土に埋まった少年とカラスが向き合うモノクロのポスター。
この異様ともいえるビジュアルながら美しさのあるクリエイティブにグッときてしまった。
今回はこの異色の問題作『異端の鳥』を紹介していきたいと思います。
『異端の鳥』 (The Painted Bird)
2019年 チェコ・スロバキア・ウクライナ合作 169分
原作:イェジー・コシンスキ
監督:バーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コラール、ウド・キア、ステラン・ステルスガルド、ハーベイ・カルテル、ジュリアン・サンズ
<あらすじ>
東欧のどこか。家を失った少年はひとり辺境の地を歩きはじめる。
それは想像を絶する過酷すぎる苦難のはじまりだった…
悪夢のようなおとぎ話
冒頭からもうその迫力に圧倒される展開!
つかみのシーンだけで少年の過酷な状況を一切の説明なく強烈に叩き込まれます。
そこから始まる少年の苦難がすごい。戦時中とはいえ、そりゃないでしょ…の連続。
「昔々、あるところに子供がいて、おばあさんが狼に食べられて、継母にいじめられて…」みたいな昔のおとぎ話って実は結構残酷だったりしますけど、なんかそんな感じです。
どこか「とある国」の感じとか、この映画の持つ無国籍的な世界観が"おとぎ話"感を出しています。
だけど悪夢のような展開なんですが笑
圧倒的に強くて美しいモノクロ映像!
冒頭からして結構激しめの展開なんですが、それでもすごく観ていられるのが、圧倒的な映像美があるからなんです。
どのカットを切り取ってもそのまま絵画になるような構図の美しさ
もうホントに画が圧倒的に美しいんです。
ずっと観ていられる感じになるほど画面に吸い込まれていきます。
意外と登場している各国の大物俳優
これ東欧の映画で監督もチェコの人なんですが、割と各国の個性派俳優が出演してるんです。
ハーヴェイ・カイテル(アメリカ)、ステラン・スカルスガルド(スウェーデン)、ウド・キア(ドイツ)、ジュリアン・サンズ(イギリス)などなど、いずれも個性的な世界の名匠のもとで存在感を発揮する役者陣。
こんな個性的すぎる俳優が集結する映画も他にない…笑
曰く付きの原作
原作は、イェジー・コシンスキの「ペインテッド・バード」。
この"ペンキで塗られた鳥"というのは本編を観るととても象徴的なシーンで登場しますので、すごく納得感あるタイトルです。
コジンスキはポーランド系ユダヤ人移民としてアメリカにやってきて、英語でこの本を出版しました。他にも話題作をいくつも発表し、セレブのような生活を送りスキャンダルにまみれていた人物だったようです。
最後には自宅の浴槽で自殺してしまったんだとか。
当時はこの本の内容がコシンスキ本人の自伝的な内容だと信じられていて、何て過酷な生い立ちなんだと思われていたのに創作だったことが後から分かり大分叩かれたそうです。
そんな原作ではあるのですが、戦時中の様々な資料が発見されている現在からしてみるとこの本の内容は、「意外と合ってる」ことが分かってきています。
異端を排除しようとする人間の闇
この映画のポイントとしては、
異端を見つけると人は排除しようとするところです。
それがどれだけ残酷で悲しいことなのか。
だけど、我々には誰しもそんな感情や感覚が備わっている。
そんな人間の闇の深さが描かれています。
間違いなく傑作
これだけの悪夢のような内容でありながら、観せきってしまう手腕はさすがだと思いますし、こんなにガツンとやられた映画は久しぶりだし、映画を観終わった後の余韻がハンパないです。
もちろん好みはとても別れるタイプの作品だとは思いますが、自分的にはとても大好きな作品で間違いなく傑作だと思いました。
とにかく「映画観た感」がすごい!
覚悟を持った方には、とてもオススメです!!
映画『サタンタンゴ』
とても、ついでなんですがこの作品にすごく雰囲気が似ている映画も紹介させていただきます。 タル・ベーラ監督の『サタンタンゴ』です。
こちらは7時間の超大作! しかも鬼のような長回し笑
観終わった後には、劇場にいる人たちが戦友に見えてきます笑
これは一生のうちに機会があれば観ておいた方いい名作です。
配給会社トランスフォーマー
こちらもついでなんですが、『異端の鳥』を配給したのがトランスフォーマーという映画会社です。
あの車が変身するハリウッド映画とは全然関係ないです笑
割といい作品を配給してくれているミニシアター系の配給会社で、最近ではジョナ・ヒル監督、A24製作の『mid90s』を配給しています。
今後も良さげな作品が控えていますので、要チェックです。
最後に
作品の内容やネタバレなどはしないからもっとコンパクトにまとめるはずだったのに思ったより長くなってしまいました。
今回は映画ファンじゃないとなかなか手を出さないようなタイプの作品だけど良い作品だったので紹介してみたいと思いました。
今後も新作映画についてももっと書いてみたいと思いました。
最後までありがとうございます。