アニメ映画『ウルフウォーカー』と、トム・ムーアの世界
楽しみにしていたトム・ムーア監督の『ウルフウォーカー』が公開されたのでさっそく観に行ってきました。
海外のアニメーションってアメリカを中心に3DCG作品が多いんですが、個人的には手触り感のある2Dの手書きアニメーションが好き。
トム・ムーアの作品ってこの手触り感があってどれもとてもいいんです。
今回は、新作『ウルフウォーカー』とトム・ムーア作品についてネタバレなしで書いてみたいと思います。
『ウルフウォーカー』 (WOLFWALKERS)
2020年 アイルランド、ルクセンブルク、アメリカ 103分
監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート
出演:オナー・ニーフシー、エヴァ・ウィッテカー、ショーン・ビーン
舞台は中世アイルランド。イングランドからオオカミ退治にやってきたハンターを父にもつロビンは、森の中でオオカミと共に暮らすウルフウォーカーのメーヴに出会う。しかしやがてオオカミを森から追い出そうとする軍隊がメーヴたちの森に迫るが…
ウルフウォーカーとは
舞台となったアイルランド・キルケニーには、「眠ると精霊が体から抜け出してオオカミの姿になって大地をさまよい、人間の体は眠ったままになる」という伝説があるそうです。
本作はそんな伝説から生まれた物語。
古代アイルランドではオオカミは共生する畏敬の存在だったそうです。
そこにイングランドからピューリタンが入ってきた時から敵として排除する存在になっていったんだとか。
みどころ
本作のみどころはいくつかありますが、ひとつはおてんば娘のロビンがメーヴと出会い、大好きな父とも対立しながら自分の信じたことを曲げずに信じ抜いたことで成長していく人間ドラマです。 父と娘のドラマとしても感動しちゃいます。
そして、アクション。この作品、結構アクションが多いんです。オオカミが追手をかわし森や街中を駆け巡る姿がとても臨場感があって、テンポも良くて見入ってしまいます。
それに、かわいらしくってとても親しみやすい絵のタッチ。
日本のアニメに影響を受けているトム・ムーアらしい優しい絵作りがすごくいいんです。
ケルト版『もののけ姫』
この映画を観て思ったテーマは、
人間と自然とは共生できるのか?
という問いです。
こういうテーマってよくあるっちゃあるんですが、すごく感じたのが「これ、もののけ姫じゃん!」ということ。
女の子同士っていうのが、アシタカとサンとは違ったりもしますが構成や展開などかなり影響を受けていることは間違いないです。
というのもトム・ムーアはジブリ好きを公言していて、好きなジブリ作品として『もののけ姫』も挙げていたりするんです。
もう観ていただけたらその共通点はいろいろと発見できちゃいます。
なのでジブリ好きにもとってもオススメな作品です。
歌姫AURORA
本作の楽曲を提供しているのが、ノルウェーの歌姫AURORA(オーロラ)です。 彼女は『アナと雪の女王2』でメイン楽曲「Into the Unknown」にゲストボーカルとして参加したことで一躍有名になりました。
すごく透明感ある歌声でこういう古代ヨーロッパの世界観にとてもマッチしてます。
今回の「Running With The Wolves」もすごいくいいです。
アニメスタジオ カートゥーン・サルーン
本作を送り出したのが監督トム・ムーアらが設立したカートゥーン・サルーンというアイルランドのアニメスタジオです。
このスタジオは、過去に発表した『ブレンダンとケルズの秘密』(2003)、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)、『ブレッドウィナー/生きのびるために』(2017)の3作品全てがアカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされるという快挙を成し遂げています。
本国ではポスト・ジブリとも言われているようなので要チェックなスタジオです!
ケルト三部作
このカートゥーン・サルーンの中でトム・ムーアが監督したのが、今回の『ウルフウォーカー』を含めた「ケルト三部作」です。
ケルトの伝説に着想を得て制作された作品で、『ブレンダンとケルズの秘密』、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続き本作が三部作の最終作にあたります。
『ブレンダンとケルズの秘密』
9世紀のアイルランドの伝説を舞台にしたとても幻想的なアニメーション。
世界一美しい聖なる本「ケルズの書」を巡る少年修道士ブレンダンの冒険。
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』
こちらもアイルランドに伝わる神話を元にした、海の妖精とある家族の愛の物語。
これなんかは、雰囲気は全然違うけど『崖の上のポニョ』の影響を感じちゃいます。
配給会社 チャイルド・フィルム
本作を配給しているのは、チャイルド・フィルム。
トム・ムーア作品の他、ヨーロッパの良質なアニメーションなどの映画を日本に届けてくれている映画会社です。
子供も大人も楽しめるアニメや実写映画がありますので、本作が好きな人はこちらも要チェックです。
最後に
トム・ムーアの作品は基本的に全部好きなんですが、本作『ウルフウォーカー』は、一番好きかもしれない。 そのくらい良かったです。
もし少しでも興味ある方はオススメですのでぜひ劇場でご覧いただければと思います。
アニメは日本が強いし、アメリカのディズニーなども強いですが、アジアやヨーロッパにもとても良質なアニメーション作品は多いのでそういう作品ももっと紹介していければと思いました。
最後までありがとうございます。