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鬼才ロイ・アンダーソン、『ホモ・サピエンスの涙』の見どころ
スウェーデンの鬼才ロイ・アンダーソン監督の新作が公開されて、さっそく行ってきました!
今回もロイ・アンダーソン節が全開の野心作でした。
最近まで新作があるって知らなかったので、もう楽しみで初日に行っちゃいました。
ただこの監督、クセがかなり強くて本作もかなり独特なので、何の免疫もなくいきなり観てもポカンとしてしまうかもと思い、見どころをnoteに書いてみたいと思いました。
ロイ・アンダーソン監督
1943年生まれ、スウェーデン出身
<主な作品>
『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』(1970)
『Giliap』(1975)
『散歩する惑星』(2000)
『愛おしき隣人』(2007)
『さよなら人類』(2014)
『ホモ・サピエンスの涙』(2019)
2作目以降かなり映画を作っていませんでしたが、自らスタジオを持ちCM制作などでスウェーデンで活躍していた監督です。
カンヌやヴェネチアなど各国の映画祭で受賞もしていて、CMではカンヌ国際広告祭でなんと8度も受賞しています!
『ホモ・サピエンスの涙』
2019年 スウェーデン、ドイツ、ノルウェー 76分
監督:ロイ・アンダーソン
出演:マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、他
この映画、いろいろな人々が登場します。特に決まった主人公などはおらずちょっとした小噺を集めたようなオムニバス形式の内容となってます。
時代も設定もバラバラなんですが、久しぶりに見かけた学生時代の友人に無視される男や、信じることを失ってしまった牧師さんや、ボーッとしてワインをこぼすウェイターや、音楽に合わせて踊り出す女子たち。
そんな人々の悲喜劇。
箱庭のような独特の世界観
とにかく、ロイ・アンダーソンの魅力はこのバッチリ決まりまくった画の構図です。シンメトリーでどのカットをとっても決まっているし、統一感があってまるで箱庭で同じシリーズの人形を並べているかのような世界観です。
それに、登場人物がみんな白化粧でぎこちない動き笑
この淡い感じの背景美術に合わせて人間たちもなんだか血色の良くない感じの表情の人たちばかり。
そのくらいこだわりまくった統一感があってロイ・アンダーソンの世界に引き込まれてしまいます。
ウェス・アンダーソンもかなり完璧主義者で自分の映画の世界観を大事にしています。
Studio24
この独特の世界観を生み出しているのが、ロイ・アンダーソン監督が所有する巨大な制作スタジオ「Studio24」です。
ストックホルムの中心地にあるらしいのですが、元電報局を改装したこのスタジは、天井が6メートルもあって、防音スタジオに編集室、音声編集スタジオとサウンドミックススタジオ、それに何千もの衣装のストックと、様々なセットがあるんだとか。
ここに巨大なセットを組んで撮影することによりロケではなく完璧にコントロールされた独自の世界観が生み出されるのです。
それにしてもここまでスタジオを所有してるなんて、なかなか他にはいないんでロイ・アンダーソンのすごさを感じます。
オムニバスの4コマ漫画のような映画
今回の映画は決まった主人公によるひとつのストーリーではなく、オムニバス形式です。
とはいえ、ひとつひとつのエピソードはめっちゃ短くて多分5分くらい。
だからひつとが4コマ漫画くらいのワンアイデアだったり、ひとつのネタだったりします。 同じ登場人物が何回か出てきたり、これが全体像になるとまた見えてくるものがあったりします。
全部で20話以上もあるのでかなりのオムニバス感です笑
動く絵画
本作は絵画からもかなり影響を受けているそうで、この男女二人が荒廃した街の上空を飛んでいるものは、シャガールの「街の上で」からインスパイアされているそう。しかも設定を戦禍に見舞われたドイツ・ケルンに置き換えています。
さらにこの背景のケルンの街並みは、全部Studio24内に作った模型なんです! 発泡スチロールをでこれらを作っているんだとか。
こだわりが尋常なくて、すごい。。
シャガール作「街の上で」
もう本当に動く絵画のような、こちらのヒトラーの最期が描かれているシーンは、旧ソ連を代表する画家グループ、ククルイニクスイ(KUKRYNIKSY)の「The end」という作品からきてるそうです。
他にもイリヤ・レーピンの「1581年11月16日のイワン雷帝とその息子イワン」なんかも自分の娘を殺めてしまった男のシーンとして描かれていたりします。
もうとにかく画力が本当にすごいです。
観ていて楽しい!
かなり面白い! ロイ・アンダーソンのCM集
巨大なスタジオで全部作ってしまったり、絵画から影響を受けたシーンを作り出してしまったり、20話以上のオムニバス形式だったり、もう尋常ないこだわりが感じられる監督だということは分かっていただけたんじゃないかと思いますが、このロイ・アンダーソンの作家性やユーモアやセンス、その世界観が感じれる過去のCM集の映像がありましたので、ぜひチェックしてみてください。 これもすごく面白いです!
CMの最後に出てくるクライアント名がオチだったりするんですが、最初は保険会社のCMから始まってます。
なかなかクライアントがどこなのか分からないかもなんですが、それがわかると膝をポンとたたいてしまうような「なるほど感」があります。
映画『ホモ・サピエンスの涙』予告編
なんやかんやホッコリさせられる、監督の魅力が分かっているとちゃんと楽しめる作品です。
たまにはこういう変わった作品も自分の糧になると思います。
最後に
なかなか不思議な映画なんですが、見どころを押さえておけばちゃんと楽しくて、とってもいい映画なのでぜひ観ていただきたいなと思います。
もう年末に差し掛かってきましたが、2020年もラストスパートで見逃しがないように気になる映画は全部観ていきたいなと思います。
そしてまたnoteで紹介もしていければと思います。
最後までありがとうございます。