【黒人差別】トニ・モリスン、ずっとなぜだか逃げてきた
とうとう買いました。
トニ・モリスンの小説。
アメリカの黒人女性作家で、
93年にはノーベル賞も。
黒人差別について書き続け、
ピューリッツァ賞も受けた、
世界的第一人者だ。
今までは手が出なかった。
だって、あまりに悲惨な、
息詰まる世界がそこに
広がっていると思うと、、、、。
いじめを書いた川上未映子『ヘブン』すら
途中で読めなかった。
黒人差別を当事者としても
受けてきた作家の、
人種差別を正面から描く作品に、
耐える自信がなかったのです。
出ているのはハヤカワepi文庫。
祖国(ユーゴ)を失った亡命者
アタゴ・クリストフの名作や
独裁政治を描くジョージ・オーウェルの
『1984年』などが並ぶ。
日本の部落差別を描いた
島崎藤村『破戒』でさえ読めない。
読む前から心が痛くなる。
ハンセン病患者・北条民雄の
自伝的作品だって、怖くて
ちょっと手がでない…。
まだまだ、これから読む本は
いっぱいあるなあ、、、、。
そんな私が、いきなり
アメリカの黒人差別問題を、、、?
私は私の日常や感覚では
想像もつかない悲劇は
取り込めないんです…。
とはいえ、最近のアメリカの
黒人差別デモや暴動、
またその原因になったあの
白人警官の仕打ちの動画を
見ながら、頭には、
何度も、トニ・モリスンが
浮かんできました。
これは読むしかないか?と本屋に行く。
冒頭や解説を読む…やはり重い。
本を棚に戻す。買わないで帰る。
この繰り返しが続いた。
で、今日は他に色んな作家や本が
見たくなって、隣駅の本屋に行く。
日本の現代小説は、
みな生活に困らない人達の
自意識による生き辛さ、
同調圧力、格差社会、
自分を見出だせない青春の悩み、、、。
なんだか見慣れた狭い世界だ…。
ふと、ハヤカワ文庫に向かう。
やはりトニ・モリスンがある。
デビュー作『青い眼がほしい』の
冒頭を開く。
あまりにさっきまでいた日本文学とは
次元が違う何かに捕まった、、、。
青い眼がほしいという
自己否定しかできない黒人少女の話。
私の日常の感覚とは
かけ離れた世界だ、、、、?
本当にそうだろうか?
私と縁がないと言い切れるだろうか?
重過ぎると言って逃げたままで
本当に良いのだろうか?
同じ「生き辛さ」が話の中心でも、
日本の文学が扱う「生き辛さ」ばかり
読んでいては、
井の中の蛙になるだけだろう。
自分の頭の中を、
ダイナマイトでぶっ飛ばしてみないか?
今日は、モリスンの本を棚に
戻さなかった。
連日、目にしたアメリカの
デモや暴動の映像を見た影響が
こうしてじわじわ効いていたのかな?
さて。今まで遠ざけてきた、
差別問題や弱者問題の小説を、
逃げずに読んでみようかなと思う。
『破戒』や北条民雄や『ヘブン』も
いつか、いつか読める時が
こうしてやってくるのかな?