「LEDの街灯は健康・安全面に問題がある」と米国医師会が発表、一体どんな影響があるのか?
「LEDの街灯は健康・安全面に問題がある」と米国医師会が発表、一体どんな影響があるのか? - GIGAZINE
電球には白熱灯と白色LEDの2種類がありますが、2つを比べるとLEDは、消費電力が圧倒的に低く、おまけに白熱灯よりもかなり明るいという特長を持っています。より明るく、節電にもなるということで多くの場所で採用されている白色LEDですが、米国医師会(AMA)は、「街灯に使用されている白色LEDには健康・安全面で問題がある」と警告しています。
AMAは公式の年次報告書の中で、道路照明に使用されているLEDを弱めて暗くすることを明らかにしました。年次報告書の中で明かされたこの決定は、2016年6月14日にシカゴで開催された、AMAの年次総会の中で満場一致で決定した事項だそうです。アメリカでは近年、街灯でのLEDの使用が加速しており、シアトルやニューヨークの街灯にもLEDが使用されています。その中で下された決定ですが、AMAは「街灯に使用されているLEDライトが潜在的に持つ、人間の健康や環境に対する悪影響を最小限にするため」と、LED利用に関するガイドラインまで公開しています。
アメリカの多くの地方自治体は、既存の街灯をLEDに取り替え、エネルギーの節約と街灯のメンテナンス性の向上を図ってきました。しかし、LED街灯には2つの大きな問題がある、とAMAは指摘しています。
AMAは年次報告書の中で、夜間の屋外照明、特に街灯は色温度を高くても3000K程度に抑えるべき、としています。色温度というのは、光源が放つ光の色を定量的な数値で表現する単位で、屋内照明の「電球色」が3000K程度とされています。色温度は数値が大きくなれば大きくなるほど青色に近くなっていき、白色LEDの色温度は4000~5000Kです。この白色LEDは見た目は真っ白な光に見えますが、可視光線の中でも最も強いエネルギーを持つ青色光、ブルーライトを多く含んでいます。
対して、LEDが普及する前に多くの家庭で使用された白熱電球の色温度は約2400Kです。これは、LEDライトよりもブルーライトが少なく、ブルーライトよりも波長の長い黄色・赤色光を多く含んでいるということになります。ライトが発明される前、人間は木々を燃やして明かりを作り出していましたが、木などを燃やしてできる明かりの色温度は約1800Kで、白熱電球よりもさらに黄色や赤色の光が多く、これにブルーライトが含まれていません。しかし、LEDが広く普及した現在、屋内から屋外にいたるあらゆる場所で、照明として白色LEDが使用されています。
その白色LEDが抱える問題点というのは、ひとつが「不快なほどにまぶしい光を発する」という点です。LEDライトはブルーライトが凝縮されており、これにより非常にまぶしい光を発します。しかし、白色LEDから発せられるブルーライトは、波長が長い黄色・赤色光よりも人間の目の中で多く反射し、網膜にダメージを与えるため、目の瞳孔が過度に縮小する縮瞳を引き起こす原因にもなるとのこと。白色LEDをしばらく凝視すると、目が痛んで目を閉じざるを得なくなります。「これはLEDの発する光が強すぎることをよく示している」と、海外ニュースサイトのThe Conversation。
AMAが指摘する、白色LEDの持つ問題点の2つ目は「サーカディアンリズムへの影響」です。
色温度からどのような色の光を含んでいるのかは予測可能ですが、色温度ではLEDから発せられる光の色を測定することはできないそうです。そこで用いられるのが相関色温度(CCT)と呼ばれる指標。CCTでは、同じ3000Kの光でもどちらが多くブルーライトを含んでいるか、などがわかるそうです。したがって、AMAは色温度が3000K以下になるようにLEDを選ぶだけでは不十分としています。
AMAの年次報告書が公開されたのは、世界中で夜間の人工光がいかに発せられているかを示す「The World Atlas of the Artificial Night Sky Brightness」が公開されたタイミングと非常に近く、このマップの中の人工光のにはLED街灯も多く含まれているだろう、とThe Conversation。
また、夜間のLED街灯による人体への影響についてもAMAは記述しており、白色LEDはトンネル内の照明としても有名なナトリウムランプよりも、夜間のメラトニン量を5倍も抑えてしまうことも判明しています。メラトニンの抑制はサーカディアンリズムの崩れにつながり、ここから睡眠障害に発展する恐れもあります。また、LED街灯のまぶしすぎる光が野生動物に悪影響を与えてしまう可能性も示唆されています。
なお、AMAはエネルギー効率と人体への影響を鑑みて、白色LEDの使用を推奨しながらも、ブルーライトが最小限になるように照明をコントロールするべき、としています。