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1年前、俺は中島みゆきを叫んでいた

1年前の俺は、会社のカラオケイベントや飲み会の二次会で、中島みゆきの名曲を熱唱するのが好きだった。いや、正確には「好きだと思っていた」。高音を絞り出す曲に挑戦することで、自分に酔っていたんだと思う。特に「地上の星」や「糸」、そして「空と君との間には」。歌詞の深みやメロディーの美しさに感動して、全力で歌っていた。

たとえば「空と君との間には」のさびの部分では「今日も冷たい雨が降る~」のあたりまでは、声が素直に出せて気持ちよかった。だが、その後の「君が笑ってくれるなら~僕は悪にでもなる~」のところが問題だった。中島みゆきさんは力強さとやさしさと同時に兼ね備えたような余裕ある奥深い声で歌うけれど、俺は全力をつかったぎりぎりの単音をなんとか絞り出すような状態だった。気張りすぎた歌い方で、正直なところ聞いている人も困惑していただろう。

それでも、会社のカラオケイベントでは自信満々でマイクを握り、「俺、高音出せますよ」と言わんばかりに熱唱。素敵な女性陣の前で「どうだ!」とアピールしていたけれど、今思えば滑稽だったなと思う。中島みゆきの曲を自分なりに解釈して歌っているつもりが、ただガナっていただけ。あの場の空気感を思い出すと、穴があったら入りたい(笑)。

でも、歌いながらどこかで感じていた。「なんか違う」「なんでだろう」。音程は合っているし、高音も出ている。だけど、歌に厚みがない。中島みゆきさんの歌には人の心に訴えかける力があるのに、俺の歌にはそれがない。何が違うのか明確に分からないけれど、この違和感はずっと俺の中に残り続けた。

そしてその「なんか違う」という思いが、俺を追い詰めるのではなく、新しい一歩を踏み出させてくれた。「もっとうまく歌いたい」「あの違和感の正体を知りたい」と思った結果、俺は40歳を過ぎてからボイトレスクールに通い始めることになった。自分の歌い方を根本から見直したい、そして「歌う」ことをもっと楽しみたいという気持ちが芽生えたからだ。

あの頃の「ガナる俺」は、ある意味で今の俺を作るきっかけになったと思う。

最後に「空と君との間には」の歌詞になぞらえて一言いいたい。
俺とみゆきの間には~未だに大きな溝がある~♬
お後がよろしいようでw。


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