ファンドレイジングの全体像をざくっと把握するには
~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~
〈質問〉
新たにファンドレジングの担当になりました。まず最初に全体をざくっと捉えたいのですが、どうしたら良いのでしょうか。
〈回答〉
まずは財源のバランスを確認することから始めると良いでしょう。
一般的に「助成金・補助金、寄付、会費、事業収益」のバランスをとることで、組織運営の”安定性”を確保できると言われています。
ファンドレイジングの基本的な要素のため、詳細は他に譲りますが、下記の図のように見ることが一般的です。
<図1>
実はここで触れた「使途指定の有無」というバランスも大切な要素で、組織運営の”柔軟性”に繋がります。
財源において「使途指定の無し」が多いと、当然ですが支出先の自由度が増します。例えば、新規プロジェクトを行う場合、組織の判断でスピーディに開始できます。また、助成金・補助金の打ち切りや減額において、減損分を一時的に補填して事業継続を実現できます。
ちなみに、
「使途指定の有り」は、主に助成金・補助金が思いつきますが、寄付でも使途指定があります。
「使途指定の無し」は、主に会費や事業収益、(指定のない)寄付となります。
さらに、時間軸による「新規・継続・離脱」の流れを踏まえた、組織の”成長性”を確認します。例えば、会員継続率や寄付リピート率などが代表的です。
このように組織全体を見る場合は、”安定性”、”柔軟性”、”成長性”、で捉えてみると良いかもしれません。
実際にどう算出したらよいのか
算出方法について簡単に触れます。
1.安定性
「助成金・補助金、寄付、会費、事業収益」の4カテゴリーに分けます。
近年は「マンスリーサポーター」や「ふるさと納税」などが出てきましたが、いずれも「寄付」扱いとして管理することが一般的です。また「クラウドファンディング」はどうかというと、一種のキャンペーン活動であり、「歳末募金キャンペーン」などと同じ意味合いとなります。
<図2>
2.柔軟性
「使途の有無」で分けて、先の”安定性”の区分と組み合わせて見ます。必要に応じて、種類までブレイクダウンします。この時点では、使途先まで詳細に見ることは少ないかと思います(ファンドレジングの施策を分析する、輸入と支出のバランスを細かく管理する、という目的下では必要になってきます)。
脇道にそれますが、情報管理の際に使途先を細かく記入していくなかで、有無を判断できない管理方法になってしまうことがありますので、気を付けましょう。
3.成長性
さまざまな「(新規)獲得」と「継続・リピート(≒退会・離脱)」を見ます。特に、先の”安定性”の区分や種類のなかで、占める割合が多いものに着目します。
例えば、会費または寄付のマンスリーサポーターであれば、獲得率と継続率(≒退会率)を算出できるようにします。
〈サンプル〉
寄付の獲得率=(寄付した対象者数 ÷ 寄付依頼した対象者数)×100
寄付の継続率=(継続した対象者数 ÷ 継続予定の対象者数)×100
可能であれば、獲得や維持に費やしたコストを登録し、利益率まで算出できるとベストです。
算出された数字をどう見るのか
見方について超簡単に触れます。
ポイントは、何かと比較することです。まずは組織内の過去の数字と比較します。次いで、組織外の数字、これは「寄付白書」や他団体が公開している数字と比較します。比較するなかで、良し悪しや特徴などが見えてきます。
いかがでしょうか。
実は着任当初だけでなく、継続して見ることで、ファンドレジングの効果を高めることにもつながっていきます。
最近ではデータベースを導入している組織も多く、(そのデータベースの設計が適切であり、寄付などの情報が適切に入力されていれば)比較的簡単に上記を算出できるかと思います。
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