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「新・小説のふるさと」撮影ノートから

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小説のゆかりの地を訪ねて、その世界を写真で表すことを試みました。それぞれの小説の撮影ノートから気づいたこと、感じたことを綴ってみたいと思います。
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#写真

「新・小説のふるさと」撮影ノートより『奇蹟』について思ったこと。

「新・小説のふるさと」撮影ノートより『奇蹟』について思ったこと。

 伊半島豪雨(平成23年9月初旬)のすぐあと、名古屋でようやく特急の切符を手に入れて新宮へ向かった。駅に着く少し前に列車は熊野川を渡る。かつて筏師(いかだし)が運んできた杉や檜が川面を覆っていた河口は雨が運び来た土で赤茶色に染まっていた。中本の「高貴にして澱んだ」血はこういう色だろうか。この川にかかる巨大な鉄橋を渡って中上健次の世界に足をふみいれた。
 翌日も雨が降っていた。新宮図書館の三階に設け

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「新・小説のふるさと」撮影ノートより『赤目四十八瀧心中未遂』について思ったこと。というよりはちょっと場所の解説

「新・小説のふるさと」撮影ノートより『赤目四十八瀧心中未遂』について思ったこと。というよりはちょっと場所の解説

 赤目四十八瀧は名張川にそそぐ宇陀川の支流、滝川の上流部にある。厳めしい名前に深山幽谷を想像するが、滝を巡る約4キロの道のりは遊歩道が整備され関西、中京の小学生たちも遠足で訪れる場所だ。景観は目くるめく変化し高低差はあるがどんどん歩いて行ける。近鉄赤目口からバスで20分。渓谷の入り口、オオサンショウウオセンターから生島とアヤちゃんが辿った道を行った。
 四十八とはその多さを示すが実際には二十ほどの

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