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【ロック名盤100】#62 Steely Dan - Aja

 今回紹介するのは、スティーリー・ダンが1977年9月にリリースした「Aja」(邦題は「彩(エイジャ)」)だ。ジャズ的なアプローチのA.O.R.(アダルト・オリエンテッド・ロック)においてはシカゴと名を連ねるスティーリー・ダン。ジャズ・ロックとしても語られる(マイルス・デイヴィスやマハヴィシュヌ・オーケストラのそれとはやや違うが)彼らの最高傑作であり、今なお本作の影響力は衰えていない。
 本作を聴いた誰もにこのアルバムの洗練されたクリーンなサウンドは印象付けられているはず。ロックとポップとジャズの完璧な融合であり、メロディやハーモニーも複雑そのもの。演奏のレベルも非常に高く、メンバーのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのほかに名だたるスタジオ・ミュージシャンが数多く参加している。スティーヴ・ガッド、ラリー・カールトン、ウェイン・ショーター、バーナード・パーディ…言うまでもなく、彼らエキスパートの貢献度は計り知れない。

1 Black Cow
2 Aja
3 Deacon Blues
4 Peg
5 Home at Last
6 I Got the News
7 Josie

 リズムが面白いアルバムだ。ヒップホップ天下の現世においても依然として高い評価を維持している理由がよくわかる。バーナード・パーディがドラムを提供した「ホーム・アット・ラスト」は特に顕著だろう。思わずノってしまう素晴らしいプレイだと思う。
 3曲目、4曲目と続くため息をつくほど美しい「ディーコン・ブルース」、ハーモニーが魅力的なスティーリー・ダンの代表曲「ペグ」のホットラインはまさに至高。表題曲「エイジャ」でのサックスソロ(ウェイン・ショーター)とドラムソロ(スティーヴ・ガッド)も本作のハイライトだろう。ラストを飾る「ジョシー」もギターソロ含め全部がかっこいい。僕はこの曲がダントツで本作のフェイバリットなのだが、何故こんなに魅力的なのか?と不思議がってしまうほどだ。ウォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲンの作曲デュオ、恐るべしと言ったところか。
 本作はまさに"大人のロック"といった感じだ。ソングライティング、演奏、アレンジなど細部に宿るジャズ的なニュアンスがこのアルバムの大人っぽさを演出していると言える。涼しげだが官能的な雰囲気もあり、絶妙なエッセンス。感動的だとか幻想的だとかそういうものではなく、数学的な美しさを堪能できるのがスティーリー・ダンの魅力だと思う。夜に聴きたいA.O.R.の名盤だ。

↓「ペグ」

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