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【ロック名盤100】#16 The Who - Tommy

 今回紹介するのは、ザ・フーが1969年5月にリリースした2枚組アルバム「Tommy」だ。60年代中盤からビートルズ、ストーンズらと共にブリティッシュ・インヴェイジョンを牽引していたザ・フーが挑戦したものは、ロックンロールとオペラの融合———「ロック・オペラ」なる作品の制作だった。ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」で提示した「コンセプト・アルバム」という価値観のブラッシュアップとも言えるアプローチだろう。
 ちなみにザ・フーが発表したコンセプトアルバムは本作が初めてではなく、前作「ザ・フー・セル・アウト」ではアルバム自体をラジオ局かのようにするというテーマを基に制作された。本作で扱われるコンセプトは、三重苦の少年トミーについての架空の物語というものだ。ここで冒頭を掻い摘んで説明してみると、「父が殺害されたところを見てしまった少年トミーは、この出来事がトラウマとなり三重苦を患う」といった内容で、ここから彼を襲う様々な出来事について歌われる。

1 Overture
2 It’s a Boy!
3 1921
4 Amazing Journey
5 Sparks
6 Eyesight to the Blind (The Hawker)
7 Christmas
8 Cousin Kevin
9 The Acid Queen
10 Underture
11 Do You Think It’s Alright?
12 Fiddle About
13 Pinball Wizard
14 There’s a Doctor
15 Go to the Mirror!
16 Tommy Can You Hear Me?
17 Smash the Mirror
18 Sensation
19 Miracle Cure
20 Sally Simpson
21 I’m Free
22 Welcome
23 Tommy’s Holiday Camp
24 We’re Not Gonna Take It

 「ロック・オペラ」というくらいだからあまり曲単体で見るものではないし、小品やインストも多い。しかしまず取り上げるべきはザ・フーの代表曲「ピンボール・ウィザード」だろう。壮大でポップ調な楽曲が多い本作では数少ない純然たるロックナンバーだ。僕が好きな曲はコーラスワークが美しい「クリスマス」。クリスマスがどんな日なのか知らないトミーに嘆き悲しむ両親は彼に「聞こえるかい」と語りかける。そしてトミーは内なる心で「僕を見て、僕を感じて」と語る———といった内容が歌われている。ラストの「ウィー・アー・ノット・ゴナ・テイク・イット」も「僕を見て、僕を感じて」という一節で締めくくられる。
 圧倒的なボーカルでトミーを演じきってみせたロジャー・ダルトリーは本作で最大の見どころだと思う。もちろん他のメンバーが提供したパフォーマンスも圧巻だが。彼ら4人が完成させたロック・オペラはロックによる芸術の最高峰なのではないだろうか。プログレ方面にも影響を与えたであろう本作をぜひ全て聴いてみてほしい。

↓「ピンボール・ウィザード」

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