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【ロック名盤100】#61 Fleetwood Mac - Rumours

 今回紹介するのは、フリートウッド・マックが1977年2月にリリースした「Rumours」(邦題は「噂」)だ。売れに売れたポップ・ロックの金字塔にしてフリートウッド・マックの最高傑作。今なお再評価の流れは著しく、2020年のローリングストーン誌の最も偉大なアルバム500でも7位という高順位を獲得。実際これこそが「ロック名盤」の筆頭というムードが界隈にもある。
 ピーター・グリーン期のフリートウッド・マックはブルース・ロックの名バンドとして名を馳せていたが、スティーヴィー・ニックスの加入を筆頭にメンバーの入れ替えが起こりポップ・ロック方面に路線変更。そうして生まれたのがこの美しい本作というわけだが、ソフトでメロディアスな音像の裏にはメンバー間のドロドロとした関係があった。
 「バンド内恋愛ほど厄介なものはない」とはよく言ったもので、メンバー間の泥沼不倫の三角関係が起因してバンドの雰囲気は最悪。ただ険悪なムードの中でもクリエイティブに関してはプロフェッショナルだったようだ。ソングライティングはもちろんのこと、演奏も完璧なほどに息が合っている。全体的には、引き算も効いているソフトですっきりしたロックという印象で、思ったより大袈裟さはない。

1 Second Hand News
2 Dreams
3 Never Going Back Again
4 Don’t Stop
5 Go Your Own Way
6 Songbird
7 The Chain
8 You Make Loving Fun
9 I Don’t Want to Know
10 Oh Daddy
11 Gold Dust Woman

 スティーヴィー・ニックス作曲で彼女がボーカルをとる本作のキラーチューン「ドリームス」は非常に完成度が高いソフト・ロックの名曲であり、ハーモニーが魅力的。自然な美しさが印象的なのはそれぞれの楽器の音の鮮明さから来るものだろう。対してリンジー・バッキンガム作曲で今度は彼がボーカルをとる「ゴー・ユア・オウン・ウェイ」はより70年代のポップ・ロック色が強まった印象で、ギターも前面に出てくる。他の曲がすっきりしているからか、煌びやかで分厚さを感じさせる。それぞれのソングライターの違いを堪能できるのもこのアルバムの魅力。
 他にもギターの音色に硬質さが増してめちゃくちゃかっこいいロックナンバーに仕上がっている「ユー・メイク・ラヴィング・ファン」や、ファンからの人気がトップクラスで高い名曲「ザ・チェイン」など名曲揃い。これだけキャラの強い名曲がたくさんあるのに、どこかアルバム通して一貫した世界観が感じられるのはバンドの地力あってこそ。本当に仲悪かったんですか?
 緻密な作曲やコーラスワークは今なお影響を与え続けており、こういうポップめな作品にありがちな「70年代はめちゃくちゃ売れたアルバム」ではなく「反復的に現代のアーティストに参照されるアルバム」としての地位を確立した印象だ。大衆性を持つ作品に芸術性としての価値を見出して正当な評価が下されていくのは昨今の批評界のポジティブな傾向だと思う。

↓「ドリームス」

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