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保護猫への共感が、「メタの蛇口」を締めていく。

保護猫を取り巻く問題は根深く、山積しています。だから全体像を理解してボトルネックを把握するのに時間がかかる。そのために、殺処分が起こる仕組みを可能な限り簡素化し、誰にでも理解できるように書かれている1枚の絵があります。

引用:NPO法人 人と動物の共生センター

業界構造を的確に捉えた「水槽モデル」

まず右上に、保護猫/殺処分対象の猫が「発生」する原因が描かれていますね。それらが水を注ぐタンクから、さらに3つの蛇口が生えていて、それぞれが猫の命の行方を示しています。

「水槽モデル」と呼ばれるこのイラストに準えて、猫の殺処分を減らすための活動も「蛇口を締める」「受け皿を広げる」という表現で大別されます。

「蛇口を締める」活動

ペットショップや悪徳ブリーダーを糾弾する動き、法改正、適正飼養への啓蒙活動、TNR活動がこの活動に含まれます。この背景には「殺処分対象となる/なり得る命を減らそう」という考え方があり、そのエネルギーを強く持つ方々によって保護猫業界の歴史は築かれてきました。

あくまで個人的な見解ですが、ここに分類される活動の多くには「蛇口」を悪とする価値観や怒りが通底しているように見えます。悪を正すことを否定するつもりはありません(そもそもそんな立場ではない)が、今後は「完全に締め切る」ではなく、「いまの締まり具合をいかに継続させるか」に焦点を移してもいい気がします。何事も「完全に0にする」ことに捉われると、余計な感情論や、できないこと、「悪者」に目が行きがちになってしまうので。

もちろん、現時点(2022年5月23日)の締まり具合を良しとするほど楽観的ではありません。これまでのエネルギーを引き継ぎつつ、より的確な締め作業を行なっていく必要はあります。

「受け皿を広げる」活動

譲渡会や保護猫カフェの運営などがこれにあたるので、わかりやすいですね。課題として明確なので、緊急度も世の中からの理解度も共に高いのが特徴です。「蛇口を締める作業」と対比するとすれば、こちらは「殺処分から救われる命を増やそう」という考え方が基礎となっています。

しかしその現場は決してラクなものではなく、最前線で活躍される方々は、文字通り毎日命と向き合っています。ゆえに、情報発信や仲間集めなどに割く時間がなく、活動をスケールさせる発想を持ちにくいことが、内外ともに認めている課題でもあります。

さらっと説明しましたが、「蛇口を締める」「受け皿を広げる」活動両方の必要性は理解いただけたかと思います。しかし、この業界構造は長らく変化できていませんし、その糸口が見えている人も少ないと思います。膨大な課題の対応に追われ、打ち手が後手に回ってしまっている。前線で活動される方だけでは、問題の根源である「メタの蛇口」に目がいかないからだと僕は考えています。

「メタの蛇口」とその締め方

メタ水槽モデル ©️neconote inc.

これが、neconoteが見ている「メタ水槽モデル」です。我々は、いままで見えていた蛇口の水源はもっと上位概念にあると考えました。その水源(根本的な課題)というのが、我々生活者の行動(およびその背景にある関心/知識)です。

では、「メタの蛇口」を締めていくためにはどうすればいいのか?

「メタの蛇口」の栓を開けているのは生活者なので、蛇口を締めるためにアプローチすべきは彼ら彼女らであるはずです。また、生活者の行動や価値観を変えていくためには、保護猫と接する時間をポジティブな感情を抱く時間に変えていくことが重要です。

そのためには、悲しい現実を100%で伝えるだけでは足りなくて、50%にしたり、A-Zに変換して届けていかねばなりません。だからneconoteでは、猫好きクリエイターたちの協力を仰ぎながら、保護猫のリブランディングを推し進めているんです。

「保護猫のリブランディング」とは

イベント『Do One Good』の風景

「保護猫のリブランディング」とは、保護猫の存在を「当たり前」にすることだと私たちは考えています。誤解を生まぬように補足していくと、「保護猫がいても当たり前」という諦めの考えではなく「保護猫の存在を認め、偏見なく向き合う」という意味です。

「そもそも保護猫を生まれないようにすべき」という意見も聞こえてきそうですが、猫が伴侶動物である限り、人間の都合に振り回される猫はどうしても出てしまいます。そうした猫は紛れもなく保護猫で、幸せになる権利を持っています。だから、いかに生まれないかだけを考えるのではなく、保護猫が生まれないように思考と努力を続けつつ、生まれてしまった保護猫をいかに幸せにするか?を追求していきたいんです。

『neco-note』のキービジュアル

だから、メッセージ出すときに気をつけているのは「伝え方」ではなく「伝わり方」。「不快に思う人はいないか?」「ちゃんと理解してくれた人が気持ちよく使ってくれるか?」「保護猫のことを始めて知る人でも、手に取りたいと思うか?」そんな問いを、メンバー全員で繰り返しながら磨き上げています。

単に「可愛い」や「おしゃれ」なのではなく、届けたい生活者に適切に届けていけるよう、色や雰囲気、言葉遣い、フォント、余白にまでお互いの専門知を結集させています。

誰にも気づかれないような努力が、誰にも気づかれないうちに沁み込んでいく。

想いを込めたデザインは、そうやって社会を変えていけると信じています。


p.s. 
悲しいことに、最近は「保護猫」という言葉を使い本質を欠いた取り組みをするケースが増えています。結局それも、生活者の審美眼を養うことで改善していけると思っていますので、そのことでneconoteのスタンスが変わることはありません。

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