図書館総合展で「―文芸3団体、出版5団体、そして図書館の取り組み」を聴いてきた
こちらのイベント。
先日発表のあった「読書バリアフリーに関する三団体共同声明」および「読書バリアフリーに関する出版5団体共同声明」を受けて、声明が出るきっかけになった「ハンチバック」の市川沙央さんにコメントを聴き、それに対して三田誠広さん、落合早苗さん、立花明彦さんがそれぞれに語るというイベントだった。各声明はもちろん知っていたけど、市川沙央さんが「総論賛成、各論反対」になるのじゃないか、と言われていて、まあそうですよね、という感じ。独裁国家じゃないんだからそんな簡単に歩調は合わせられないだろう。とは言えこういう声明が出たことは評価するとも言われていたのでまずはここから、ということか。
電子書籍に関連する話としては、ビューアに読み上げさせる図版の代替文字は著者がつけておくべき、という話も出ていた。これ、本来そうあるべきというのはわかるし、新しく作るものはそういう方向に持って行きたいというのもわからないではないが、1冊だけ実験的に作る分にはともかく、今後作成する本全てに対してそれを義務化するなどということが果たして現実的なのか。相当手間が増えることになるはず。中小出版社が及び腰になるのは当たり前なのでは。
またもちろん、世の中にはこれまでに電子化された本が大量にあるし、電子化されていない紙の本まで含めれば膨大な数の本がある。著者さんが亡くなられているケースも当然当たり前にあるはず。そういうものの読み上げ対応のためのテキストを全て著作権者がつけるべき、というのはおよそ全く現実味がない話だと思う。アクセシビリティ方面の話は全体に手間を含むコストを無視した意見表明だけに終始することが多くて、それでは回らないよなと思う。
世の中の技術的にはAIを使って図版の解説を生成できるところまで来ているし、本全体の要約もテキスト化されていればもう可能なので、そういうことを著者や出版社の合意の元に図書館などのサービス内でできるようにする、というのが現実的な落としどころだと思うのだけど。まあああいう場でそういう尖ったことは言いにくいというのはもちろん分かるけれども。