廃香 【廃線と暮らし】
2022年となって早々のある吹雪の金曜日。
私はまた性懲りもなく、ある場所への憧憬に駆られておりました。
2020年の10月、その終末を見届け二度と訪問することはないだろうとサヨナラを告げた秘境、岩泉線。
押角駅という、かつて全国に名を馳せた至極の秘境駅の存在に惹かれていた自分は、いつの間にか、岩泉線の周辺に広がるどうしようもなくノスタルジックな情景に惹かれていたことに気が付きました。
季節が移ろい、極寒の冬を迎えてこそ、思いは強くなります。
雪は、人が去った景色をより一層侘しさでデコレーションしてくれますから。
国道340号を北へ
この日は、以前の3度の訪問と違って南側の岩手県宮古市からアプローチ。
所々に氷を纏った閉伊川を横目に、一路峠を目指します。
宮古市茂市。良い雰囲気です。
難所を物語る石碑と神
4度目の訪問で初めて気づいたこと。それは、街道沿いに多くの石碑が点在し、そして、神を祀る社も多く存在することです。
押角峠は、「九十九折る山路」と詠われし難所。旅の無事を願うこと、山への畏怖を忘れないことは当時の人々にとって当然のことであり、また必要なことであったと想像がつきます。
この日も風が強い荒天模様。峠に近づくにつれて北東北の冬の姿をまざまざと見せつけてくれます。
集落を離れ押角峠へ
前回は、わざわざ駐車できるスペースに車を停めてまで撮りたい衝動に駆られた界隈。自分が知る最狭国道です。
↑↑前回の写真から。
ついつい立ち寄ってしまう押角駅跡
一昨年の秋の訪問では、原野のようなすさまじい藪の合間にかろうじて垣間見えた押角駅の標識。
新しい道路の建設に合わせてでしょうか、かつてのホーム一体はほとんど解体されているように見えました。往年の残滓はほぼ全く存在せず。
押角峠に完成した、新たな峠越えのトンネル。雄鹿戸トンネルが山を貫くかつての道は、旧道として存在を維持するものの、冬季は閉鎖。
見上げると、そこには旧道。九十九折。
ここから岩泉町へ抜けます。
つづく