クロノトリガー
平日の夜は、なにかしらBGMを流しながら、撮りためた写真をRAW現像することが日課になっております。
いつもどおり、夜仕事から帰り、夕ご飯をビールで流し込んだ後、カフェイン中毒者がコーヒーを片手にパソコンをいじくる。
おっさんは思いました。「今日は、秋に撮った蔦沼周辺の雨の写真を美しく仕上げてみよう。」そしておっさんはなんとなく思いつきました。「BGMはクロノトリガーのサントラにしよう。」
クロノトリガーとはTVゲームでありますが、1995年3月にスーパーファミコンのソフトとしてスクウェアから発売された、言わずと知れた名作中の名作です。
パソコンを眺めるおっさんの目に映っているのは、40歳すぎのおっさんが、おっさんの感性で写したしょうもない写真たち。でも、イヤホン越しに流れ込んでくるのは、当時15歳だったいがぐり頭の少年を熱中させた思い出の旋律。この美しい旋律が、求めてもいないのに、当時の大事な思い出を次々と脳内に蘇らせてくれるのです。
思い出と音楽はリンクするとはいいますが、こうも美しく鮮明に、25年も前の記憶が蘇るものかと、しばらくマウスの手が止まってしまいました。
すっかり忘れていた当時の友達の名前や顔。悪い事をした自分を殴ってくれた恩師のこと。クソ暑い夏休みを過ごした田舎の匂い。冬は寒くて仕方がない北国の学校の体育館。ある日急に勉強が分かるようになったときの衝撃的な喜び。冬休みにみんなで受験勉強しようぜと学校に集まったときに食べた「ごんぶとうどん」という懐かしインスタントのこと。「いやあいつは顔が好みじゃないもん」と言いながらめちゃくちゃ好きだった子のこと。学祭での強烈な一体感。生々しく意識し出した思春期の残り香。原辰徳が4番だったジャイアンツ。94W杯決勝でのロバルト・バッジョの後ろ姿。そして、友達とクロノトリガーのサントラを買いに行ったこと。
こんな他愛もない、どうでもいい、でも、人生の中でとても大事な思い出たちが、ゲームの音楽とともに感情を揺さぶり、25年の時を経て、仕事で疲弊した一人のおっさんを癒す。これってとてもとても素敵なことだと思いませんか。
「TVゲームは、将来自分の大切な思い出を巡るためのトリガーになり得る。」
最近、私は我が子のゲームプレイ時間が徐々に長くなっていることを懸念しておりました。実際、小学校生活や心身の成長に支障が出るようなことにはならないよう見守る必要はあります。
でも、そのゲームで聴いた音楽や紡ぐストーリーは、間違いなく今の小学校生活とリンクすることでしょう。そしてやがて大人になり、ふとしたきっかけで“いつかの音楽”を聴いたとき、自分の昔の思い出を蘇らせるトリガーになる。そう考えたら、やっぱりゲームって決して悪いものではないよなと。
ごくありふれた、日々仕事に追われるおっさんであり、ごく普通の父親である私はそう考えながら、このとりとめのない記事を作成し、現像するはずだった写真はそのままで、窓際の冷たい布団に潜り込むのであります。
では、おやすみなさい。
思い出をありがとう、クロノトリガー。
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