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桜の時期に急に寒くなることを、花冷えと呼ぶらしい。昔のひとの表現力には感心するが、そんな風雅な響きでは片づけられないほど、シンプルに寒い。三月だぞ。
冬に寒いのは耐えられる。冬とはそういうものだから仕方がないと、身も心も受け入れる胆力がある。
でも、三月に寒いのはいけてない。春への期待値上昇と、体の寒さへの耐久力減少は連動しているものだ。外気温の低さを受け入れる心もすり減る。
だって、寒くなり始めた十月から数えるともう五ヶ月以上「さむい」をやらされているんだぞ? さすがに長い。飽きも感じる。
いきなり暖かくなれとは言わないけれども、せめて、三寒四温フェーズへ移行しようという兆しくらいは見せてほしい。
慣用句と季語を無視するな。春らしくあれ。寒い。くそ。三月。花冷えだって、春は暖かいという前提条件のもと急に寒いことを言うのであって、ずっと寒いのは違うんだぞ!
僕はキレ散らかしながら布団に潜った。あすの朝寒かったら空気を殴る予定。
(了)