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何を隠そう、僕は、スポンジ・ボブが大好きだ。
彼は深海の町ビキニタウンで暮らしていて、シャボン玉を吹いたりクラゲ捕りをしていて、そのくせ、勤め先のハンバーガーショップ・カニカーニが休業になると発狂するほどの、重度のワーカホリックである。
そんな彼の住まいであるパイナップの家が、まさか地表に出てくるとは思いもしなかった。
僕はいま、試されているのだと思う。
このパイナップルに触れていいのか――そこにスポンジ・ボブがいるのかを、確かめてもいいのか。
古今東西、パンドラの箱も竜宮城のお土産も、秘匿されてきた箱は開けてはいけないものという、お約束がある。
突然現れたパイナップルの家を開けることは、理想化されたスポンジ・ボブを曝く、冒涜行為かもしれない。