2023年度 第1回講義 熱中症について(副塾長 福島理文先生)
📚はじめに
2023年5月22日(月)19時より御茶ノ水センタービル601教室にて、2023年度第1回目の講義が開催されました!今回はスポーツ医学塾副塾長の福島理文先生に「熱中症について」というテーマでご講義いただきました!🌞対面とオンラインのハイブリット形式で、学生約30名が参加しました。また、講義の前後では学生同士の交流の場も設けられました。
✅講義1⃣ 熱中症のメカニズム
熱中症は命に関わる!
予防をすれば熱中症は減らすことができる。運動時に熱中症にかかっている人は10〜19歳が最も多く、熱中症対策が十分でないことが考えられる。熱中症の発症が多いスポーツとして、野球、バスケ、サッカー、陸上などが挙げられる。
気温が30℃前後であっても湿度が高いと死亡率は上がる。死亡例の半数近くが気温30℃以下で発症している。
運動開始から熱中症発症までの時間は、約40%が2時間以内に発症しており、短時間でも注意が必要である。
体内のメカニズム
体温上昇 → 皮膚血流増加 → 循環血液量低下 → 1回心拍出量減少
高体温は1回心拍出量の低下など心臓に直接作用する。
対策として、暑熱順化(暑さに慣れること)が重要となる。
ただし暑熱順化には10日間くらいかかるため、ウォーキング、自転車、サウナなどで汗をかき、少しずつ体を暑さに慣らしていく。
熱中症の症状と対処
⚠軽症
症状:大量の発汗
顔が赤い
めまい、立ちくらみ
生あくび など
対処:涼しいところで安静にする
身体を冷やす
適度な塩分を含んだ水分補給 など
⚠⚠中等症
症状:頭痛
嘔吐
倦怠感
ぼーっとする
対処:医療機関の受診
体温管理 など
熱中症を予防するために
☀WBGT(暑さ指数)
湿度、日射輻射などの周辺の熱環境、気温の3つの要素を取り入れた指標。Jリーグなどのプロスポーツの現場でもWBGTの測定器があり、試合前にチェックされている。
☀日本スポーツ協会の熱中症予防指針
31℃以上:原則運動中止
28℃:厳重警戒
WBGTや気温が高いと、体温は低下しにくい。末梢の血管が収縮し血流が流れにくくなるためである。水分補給をしてたくさん汗をかいて表面を冷却しても血液は冷却されないため、体温冷却の効果は少ない。そのため、飲水タイムやクーリングブレイクを設定することが重要となる。
☁水分補給と体表冷却
WBGTが低い場合・・・水分補給
高い場合・・・水分補給+体表冷却
経口補水液
腸で吸収されるまでの時間が早い。深部体温を上げないことが熱中症を
防ぐことにつながる。
どこをどのように冷却する?
首、脇、股をアイスパックで冷やすことがよく言われるが、実は冷却効
率が悪い…。
⇩
効率が良い方法は?
①氷水浴
②手足の浸水
③濡れたガーゼと送風
緊急時はまず「水をかけて風を送る」こと
☁暑熱環境でのコンディショニング維持
①経口補水液+体表冷却
②体全体を氷水につける
③冷たいシャワー
④冷やしたバスタオルを巻く
⑤アイススラリー
⑥ミスト+送風
⑦手足の送風
⑧アイスパック
自分自身での水分補給がしにくくなったら…
・救急要請
・全身を冷やす(氷水に入る、水をかける)
・経口での水分補給が難しい場合は点滴
☁プレクーリングによる予防
・冷水浴
・クーリングベストを着る
・スラリーアイスを飲む
・手掌冷却 などを運動前に行う
冷却のポイントは、 冷却方法×タイミング×冷却時間
✅講義2⃣ 実際に行われている熱中症予防
予防方法は様々あるが、実際にはプロチーム以外の大学チームなどでは氷を大量に用意できなかったり、クーラーボックスも1つしかなかったりと、できる対策に限界がある…。
そこで代替方法など、実践されている方法を紹介する。
手掌冷却
サッカーの代表カテゴリーでは、ロッカールームやピッチの近くに用意されている。いつどこに設置するか、準備もしっかり行う。
コロナ禍では手掌冷却ではなく、冷やした霧吹きなどで代替していた。加えて扇風機も設置した。
選手への周知
体重管理を行い、尿比重による脱水の有無を確認できるよう選手に理解してもらう。
また、実施している熱中症対策についてメカニズムを説明したポスターを掲示し、選手が理解したうえで取り組めるようにする。
水分補給のポイント
運動後の脱水率および体重の減少は2%以内にとどめることで、パフォーマンスの低下を防ぐ。
経口補水液
成分濃度:ナトリウム50mEq/L
カリウム20mEq/L
クエン酸15mmol/L
ブドウ糖1.8%
スポーツドリンク
成分濃度:ナトリウム9~23mEq/L
カリウム3~5mEq/L
ブドウ糖6~10%
経口補水液はスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く糖濃度が低いため、水と電解質の吸収が速まる。
📖経口補水液の代用レシピ
・水1L
・塩3g(小さじ1/2)
・砂糖40g(大さじ4~5)
・レモンやグレープフルーツ果汁
✅質問
Ⓠ1.野球のアンダーシャツは長袖か半袖かどちらが良いか?
Ⓐなるべく半袖の方がよい。一方で直射日光を防げるので長袖も良い点はある。スライディング時の怪我予防にもなる。
Ⓠ2.水をかけた方が良いとあったが、汗でも濡れてしまう。 濡れたままか着替えた方が良いか?
Ⓐ服が濡れていると汗が蒸発しにくくなるため頻繁に着替えるのが理想。その他タオルで拭くなどして汗を蒸発しやすくすると熱中症対策につながる。
📚最後に
5月でも30℃を超えるの日もあり、早めの熱中症対策が必要となるなかで、これからの本格的な夏シーズンに向けて具体的にどのような対策が行われているのかを学ぶことができました。ご講義いただいた福島先生、ありがとうございました。
また今年度最初の講義で、新入塾生を迎えて学生同士の交流の機会となりました。今年度も学部、学年を越えて積極的に講義やイベントに参加し、共にスポーツ医学を学んでいきましょう!
最後までご覧いただきありがとうございました。
文責:宮澤、平田