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おばけなんてないさ

幼少期、我が家は貧しかった。
いや、親はしっかり働いているしお給料もしっかりもらっていた。普通に暮らしていれば何の不便もないのだ。

ところが両親はいつしかパチンコにハマり、平日は仕事終わりに、土日の休みは開店から閉店まで居た。彼らはギャンブル依存症になってしまった。そのせいで、我が家は貧乏なのだ。

私には双子の姉がいる。姉と2人で毎日両親の帰宅を待っていた。

両親がパチンコ屋から帰宅するのはだいたい23時。夜ご飯が置いてある時もあれば、無い時もあったので、その時は家中の食材を探した。

本当に見つからない時は、砂糖をそのまま食べたりして、なんとか空腹を凌いでいた。

空腹はなんとかなるが一つだけ問題があった。

幼少期に、夜に親が家に居ないというのが、とてつもなく怖かったのだ。

もちろん携帯電話なんか無い時代だったし、電話料金を滞納していたから家の電話も繋がらない。親がどこに居て、いつ帰るのか分からない夜が毎日続いた。


唯一幸運なことは、私には双子の姉が居たので一人ぼっちではなかったこと。

夜は怖さに怯えながら、2人で布団にくるまって、『おばけなんてなーいさ!おばけなんてうーそさ!』と元気に歌っていた。

いや、元気に歌うというよりは、大きな声で歌って怖さを吹き飛ばしていたんだと思う。


23時くらいに両親は帰宅。
安堵と同時に、夜の怖さよりも怖い事があった。

その日にパチンコで勝てば良いけど、負けた時がとても怖かった。両親が目の前で喧嘩するからだ。

喧嘩を始めると、私と姉は再び布団をかぶって『おばけなんてなーいさ!おばけなんてうーそさ!』と大きな声で歌う。

両親の喧嘩する声を消すために。

今思うと、この時の私たちの『おばけ』の正体は、『寂しさ』『悲しさ』『ひもじさ』だったのかもしれない。


そんな幼少期を過ごした私は、今年40歳になった。子供も息子と娘の2人いる。

子供のために色々考え動き、お金の不自由もなく、家族と仲良く過ごしている。
自分で言うのもなんだが、両親に似ず、ちゃんと『親』をしていると思う。

ある時、子供たちがYouTubeで流れた歌を歌った。

『おばけなんてなーいさ!おばけなんてうーそさ!』

布団なんかかぶっていない。
元気に楽しく歌っている。


当たり前なんだけど
私にとっては、これが普通の幸せなんだと
あの時を思い出し改めて幸せを噛み締める。

育児に奮闘しながら、文章とにらめっこしている毎日なので 脳に甘い刺激がほしいので、ちょっと贅沢なスイーツで自分をご褒美してあげたいです(笑)よろしくお願いします!