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フローズンショルダー


"首が痛い"はゴールデンボンバーの歌だが、わたしは今、肩が痛い。大きな声では言えないが五十肩というやつだ。病名で年齢層がわかるのも厄介なやつだな。もし、四十肩になった人が誕生日を迎えたら病名は五十肩に変わるのだろうか。

数年前に左肩をやった時と同じ痛みが、今回は右肩に来た。肩関節周囲炎は悲しいかな、一種の老化現象だ。個人差はあるが数週間から数ヶ月、重症の人は一年以上続くらしい。週三でエクササイズをしていても老化はやってくる、ツライ。

わたしの場合、常に痛みがあるわけでなく、ある可動域を過ぎるとジーン、時にはズキッっと痛みが走る。以前、左肩をやった時は保険を使ってフィジカルセラピー(理学療法)にしばらく通った。ホノルルのドクターズオフィスが集まるビルの中のイギリスから来た若い女性セラピストを紹介された。

英語ではフローズンショルダーと言うが日本語でも凍結肩と呼び名がある。そのままだ。ブリティッシュアクセントの先生の英語は独特で、キャント(Can't)をカントと言うのは知っていたが、ヒー、ヒーと言葉の終わりに言う。よくよく聞いてみると、ヒア(here)をヒーと発音していた。腕を上げてヒー(ここよ)!って感じで心で笑った。

先生はホットパックをわたしの肩に当てて温熱療法をしたり、リハビリの運動やマッサージをしてくれた、にも関わらず結局、痛みは変わらないので自宅でも同じ運動を毎日するように言われた。

そして、先生から聞いていた通り、ある日突然なおってしまった。今迄、後ろに腕を回すとあれだけ痛かったのがウソのように、ぐるぐると腕を回せる日がくるのだ。数ヶ月続いた痛みが急に「あれ? 痛くない」になるのだから不思議だ。今回の右肩の痛みもある日突然、そうやって消えるんだろうと思う。

フィジカルセラピーの流れで、ナース時代の思い出話をひとつ。もう十年以上たっているので書いてもいいだろう。当時、働いていたクリニックには、美容院でいう面貸しのようにクリニックの幾つかある部屋を一つ借りて治療をするフィジカルセラピストがいた。彼は自分の患者さんの予約がある時だけやって来て治療が終わると帰っていくアメリカ人の先生だった。そして帰る前にいつも、しわでクシャクシャになった1ドル札を数枚持ってきて受付の女性に頼んで大きなお札に逆両替をするのだ。彼のその行為をわたし達は不思議に思っていた。

ある日、クリニックに診察に来た女性の患者さんと、その先生が廊下で出くわしお互いが「あーー!!」と驚いた様に声をあげた。その患者さんが診察室でわたしに聞いた。「あの人ここで何をやってるんですか?」わたしが先生だと答えると患者さんは驚いたように言った。「あの人、夜ショーパブで裸で踊ってますよ!」と。患者さんは、そこの常連客で彼をよく見ていたので、二人はここで鉢合わせて驚いたというわけだ。

それを聞いてわたしは府に落ちた。あのクシャクシャになった1ドル札はお客さんが裸で踊る先生のパンツに挟んだチップだと......。

世の中、知らない方が良いこともある。クリニックのレジ銭は先生のパンツを通過してやって来たなんて知ったら 誰もそのお釣りは要らないかもしれない。確かに先生は筋肉隆々で服の下にはシックスパックがきれいに割れていそうだった。

色々なことが通りすぎていった思い出深いクリニックは今はもうない。







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