「ユーリ!!! on ICE」によせて
タイトルはフィギュアスケートで使われる楽曲ぽくしてみました。
どうもこんにちは。新作映画と地上波ドラマに生活を支えられているJunoです。
今回は巷で話題の、いや5年ほど前に一世を風靡した伝説のアニメ「ユーリ!!! on ICE」についてお話ししようと思います。
フィギュアスケートを題材にしたアニメということで話題になり、しかもその作中演目の振り付けをあの高橋大輔選手の振り付け等々でお馴染み宮本賢二先生が振り付けした(こういうのって書き下ろしじゃなくてなんていうの? 振り下ろし? 日本語ムズカシ〜)ということでフィギュアファンの注目を集め、さらに豊永利行と諏訪部順一をはじめとする声優界きっての名優を揃えたことでアニメファンの注目も集め、極め付けは原案に久保ミツロウという稀代の天才が関与したことで二度は起こらない奇跡を実現したみたいな、そういうあれです。
きっとインターネットに生きていたら作品は見たことないけど存在は知ってる、TLの誰かが話題に出してたわみたいな、そういう作品だと思います。
で、今回はこちらの感想を書いていきたいと思います。
もう笑っちゃった人ももう少しお付き合いください。
あらすじ
主人公の勝生勇利は男子フィギュアスケート選手、日本のエースと期待されていたが、初めて出場したグランプリファイナルで惨敗。その後も連敗を重ね、失意のうちに地元に戻り進退を考えていた。そこへ絶対的王者・ロシアの生ける伝説(リビング・レジェンド)ヴィクトル・ニキフォロフがやってきて「お前のコーチになる」と宣言。グランプリファイナル優勝を目指して二人三脚の日々が始まった・・・
アニメは全12話。1話が30分弱なので、6時間あれば全編見られます。見て欲しい。
ユーリオンアイスは「見た人がだいたい狂って出てくる」「氷の上の全てを愛とか言い始める」「新規で見た人を囲んで物凄い数のふぁぼとRTがつく」とまあまあ外野から見てるだけでもやばそうな匂いのするコンテンツですが概ね嘘ではありません。今回はファンダムに関してはさておきモノ自体を見る形で感想を書いていきたいので、もし興味のある人は12話まで全部見て「ユーリオンアイス初めて見た、面白かった、感動した」と呟いてみてください。どこからともなく現れた軍勢に圧倒されます。めっちゃ怖いです(やめろ)
それはともかくとしてこのアニメ何がそんなにヤバいかというと、絵を描く人に特に刺さるのが「スケートシーン全部手書き作画」というところです。さらにいうならば地上波放映版と円盤仕様でかなり作画修正が入っているので、円盤であれば尚更のことミスのない、滑らかな、動きを全てアニメーションで描いている、気の触れたプロの所業が見られます。アニメーション好きな人にはこの時点で見て欲しいのと、制作会社がMAPPAという(最近のアニメ界隈で名前を知らない人がいたらそれはモグリだ)とんでもない制作会社であり、今や進撃の巨人やら呪術廻戦やらで話題を掻っ攫うここを一躍有名にした(きっかけの一つの)アニメと言えるので、この辺りの原点を探りたい人にもおすすめです。
さらにさっきも言ったようにアニメーションの元となる振り付けを全て宮本賢二氏が踊っており、言うなれば「トップレベルの新プログラムがキャラの人数分見れる」状態なのです。しかも現実の試合で組み込まれてもおかしくない難易度、完成度、得点計算を添えて…ちなみに作中で出た歴代最高得点は現実世界で選手があっさり塗り替えましたが、作品が発表された時期には「さすがアニメw こんな点出るわけないやろwww」と揶揄されていたという謎のリアリティがあったりします。また、音楽に関しては梅林太郎と松司馬拓という二人の若手音楽家をメインコンポーザーに据え、楽曲の大半を新規で作成という音楽ファンにも嬉しいこだわり。この松司馬氏、「大豆田とわ子と三人の元夫」で私が発狂していた坂東祐大氏の別名義、私がまめ夫にどハマりした一因の一つでもあります。この二つの作品のサントラ、聴き比べてみたらきっとお分かりいただけると思います。セ、センスがいい、なんてお洒落な音選び。ちなみに演奏したEnsemble FOVEさんも二つの作品で大活躍されています。
そしてこうした前情報に負けないくらい、シンプルに話が面白かった。
崖っぷちのスケーターがもう一回頑張る、挫折を経験した人間がもう一度這い上がるという話の軸になる部分は結構普遍性があるテーマだと思うのですが、その過程において変な誤魔化しや美化、気取った自己愛がない。主人公は進退を考えてはいますが、完全にやめると舵を切ったわけでもなく、これからを続けていくために地元に戻るという建設的な選択をします。この将来を見据えた建設性、実際にありそうなままならなさ、希望、挫折の描き取り方が心地よかった。スポーツものでありながら主人公の年齢設定が23-4歳と比較的高齢なのもよかった。実際、夢を取るか現実を見るか、みたいな選択を最も迫られる年代だと思いますし。このあたりの話は既に書いた「AWAKE」「コントが始まる」でも再三触れていますが、言うなればこのあたりの作品が描いていた「その先」の話を、2016年時点でアニメ媒体を使って表現していたのがこの作品だと思います。
また、主人公の勝生勇利という男がなんとも愛嬌があって可愛らしく、しかし面倒くさいところもあり、一筋縄でいかない難しい男なのも(若いのに! いや若いからか?)愛され注目を集めた要因かと思います。息を吐くように自虐を飛ばす割に不遜なところもあり、変に向こう見ずかと思いきや根の部分は大いに大胆で、凄むし泣くし照れるし振られるし(未遂ではある)彼の情緒に振り回されるだけで充分楽しい12話となります。
さらにその勇利の憧れの存在でかつコーチとして辣腕(?)を振るう傍若無人の絶対王者ヴィクトルですが、強キャラのわりに可愛さ極振りみたいな揺らぎの部分も大きく、ただの振り回し系ではないことが徐々に明らかになる描き方が巧妙でした。彼もまた異なる経緯から己の将来を再考することになり、その過程において教え子である勇利の存在がどう影響してくるかが作品全体を概観してハイライトとなる箇所だと思います。ヴィクトル自身は思慮深く経験豊富なベテラン選手ですが、コーチとしては新人でまだ20代というある種の未熟さにフォーカスされるのも良かった。いわば発展途上の2人が共通目的に向けて、または互いの目指すものの差異に気付こうとする過程の12話、たいへん実りが多い。視聴後の感触の良さは折り紙付きです。ハマらなくていいので見てください(ハマった後の責任は取れん…)
また、脇役を固めるのも良いキャラばっかりです。もう1人の主人公格としてパラレル的に語られる「ロシアのユーリ」ことユリオ。ヴィクトルの間近で切磋琢磨しつつ必ず2位に付けてきた屈指の実力派クリス。実力と運を兼ね備えるサラブレッドJJ、勇利を慕う日本の若手である南、などなど……ちなみにここまで書いてきましたが女性キャラも結構濃い、というか選手内外の女性キャラがめちゃくちゃいいのがこのアニメの特徴です。ちなみに私の最推しはロシアの女子スケーターことミラなのでよろしくお願いします。
ここまで読んだ皆様はお気づきかと思いますが、この感想は初見感想でもなんでもありません。なんならリアタイで視聴後、5年くらい引きずったこええ!!! という記事です。コワイ。これぞ本当の怪文書。2016年の私は怒りを見て、シン・ゴジラを見て、逃げ恥を見て、この世界の片隅にを見て、響けユーフォニアムを見て、最後にユーリオンアイスを見ていました…怖いなあ。今でも毎日のように話題に出す作品ばっかりじゃん。
しかもユーリに至っては2019年に「続編が出る」と2018年に告知されてからの3年放置です。怖いよー!!! すごく良い作品だけど「ハマっても責任取れない」と言ったのはこのためです。3年前に劇場公開されたティザーを去年唐突に何の追加要素もなくYouTubeに公開して、それで今年の新規供給終わり!!! っていう扱いに耐えられる人にしかお勧めしない。
私みたいにFilmarksの作品一覧見て「2019年 ユーリ!!! on ICE 劇場版 ICE ADOLESCENCE」の表記に「修正してください」と冷静にお気持ち表明する人になってはいけません。とりあえず「見たい」ボタン押しといた。「見た」ボタン押した人は何を見たんだ…?(ちょっとだけいた)
とにかく今なら5年前に放映されたアニメが全12話だけで履修完了です。今のうちに履修して来るべき映画に備えよう。サブスクで配信されてる綾野剛作品全部見るのに比べたら楽勝です(今年2月のわたし)。
記事のまとめとして何を書こうか迷いましたが…
先ほども書いたように2016年は国産映像作品が本当に当たり年で、もう何を見ても最高に良かったですね。と同時に、私がどこの沼にハマっていたか、もう2016年にまで遡って考えたら結果論でしかないなと。仮に「怒り」をもう少し周回出来ていたら、たぶん2016年に突き落とされたのはユーリオンアイスではなく綾野剛の沼だった気がするんですよ。「シン・ゴジラ」に関してもそう。「逃げ恥」にしてもそう。全然抜けられてないからね。
でも結局今こんな感じになってるじゃん? 要は遅かれ早かれ、どう選択しても自分の嗜好は自分の嗜好なんで遅かれ早かれこうなってるってことで、全ての道はローマに通じるってことかな! ははっ!(ワニの絵文字) と思いながら楽しく生きています。日々新規供給で溺れっぱなしの綾野剛ファン生活に鑑みると、現在進行形で貢げる先もなく、めちゃくちゃ枯渇してるユーリオンアイスに今更沼ってたら地獄度合いが更に強かったな…と思うので、この順番で良かったってことにします。見逃した綾野さん情報はたくさんあるけど、気になった時が旬、今が旬。ということでユーリオンアイスも今見ても絶対良いので、未見の方はぜひ!
Netflixで全話見られます。Midsommerのついでにぜひ。食い合わせが悪い…
今回はこの辺で。
初見感想を装った導入ですみませんでした。記憶なくしてもういっぺんみたい。昨日この記事書くにあたって軽く冒頭だけ見直したけどめちゃくちゃ作画良かった、絵柄は正直好みだと思うけど作画の質の良さは劇場並みです1話。
またよろしくどうぞ。では。
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