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一年ぶりの東京はなんだか色々寂しかった。

一年ぶりに東京に行ってきた。

森川美穂姐さんのライブを見に。夕方6時半からなので、頑張れば最終の新幹線で仙台に帰れる。
でも、折角なので一泊しました。
19年住んだ小田急線の経堂に。

経堂は人生で一番長く住んだ土地である。新宿から各停で20分、都心に近いのに、住宅地なのでとても静か。住みやすくて気づけば20年近くも住んでしまった。

朝に出発して懐かしい友達とランチする予定だった。
しかし、前日、熱中症になったみたいだと連絡が。
熱はないけど、気持ちが悪いし、お腹を壊していると。
ああ、もう外に出ないで。涼しい部屋で身体冷やして。秋になったら、また会いに来るからね。

彼女とは40年くらい前に放送局のバイト先で知り合った。ほぼ毎日、一緒にいた。お互いの人生をずっと見てきた。しかし、ここ10年くらい会っていない。毎日のように連絡はしているのに、会っていない。お互い両親の介護やコロナ禍とか、引っ越しとかなんやかんやでタイミングを逃している。

会いたかった。

でも、しょうがないよね。熱中症は用心しないと、ぶり返す。
私も去年初めて熱中症になった。あれはなかなかつらい。
根性でなんとかなるもんじゃない。

お大事にしてね。

気分を変えることにしょう。
何か、ワクワクすることをしよう。

小田急線といえば、ドラマ「Silent」のロケ地で一気に訪れる人が増えた世田谷代田がある。
そして、四つ手前の代々木八幡駅には現在、午後の紅茶の広告で埋めつくされているという。そう、目黒連くんのCMのやつ。

行くしかあるまい。

いた!国宝級イケメン、つけ麺、目黒連。


ここにも。
ここにも。Silentを思い出させる制服姿。

ホームには目黒蓮推しの女性達が10人くらいいて、ずっと熱心に写真を撮っていた。
私だけじゃなかった。

さて、いよいよ世田谷代田。
「Silent」で紬と想が再会する駅。

紬が想を待っている姿が浮かぶ。

今やすっかり洗練された世田谷代田駅は、以前、ほんの3〜4年前まで、ちいさなちいさな何もない駅だった。

友達が駅から5分くらいのところに住んでいた。改札を出てすぐのところにお豆腐屋さんがあり、お豆腐好きな友のために絹ごしと木綿をひとつずつお土産にして、よく遊びに行った。
そのお豆腐屋さんは、もうなかった。
友達が住んでいたアパートも見つけられなかった。
すっかり様変わりした世田谷代田に少しうろたえてしまう。歴史に残るドラマの余韻と引き換えに、青春の形跡が何処かへ消えてしまった。

そして、忘れてならない場所が、ここ。

代田富士見橋。

紬と想が再会するも想は耳が聞こえなくなっていて、その事実を泣きながら手話で紬に説明する場所。ドラマ初回のラストで目黒蓮の圧巻の演技に、全国民が震えた。

環状8号線の真上にかかる橋。
行ってみると、なんでもない橋。
目黒蓮がいたというだけで、特別になる橋。

駅の目の前のベンチは、もはや順番待ちになっていた。誰もが目黒くんと同じベンチに座りたくて、その写真を納めたくて列をなす。

すごいね、Silentの余韻。
終わって既に半年以上経つのに未だに人気は衰えず、目黒連の、いや、佐倉想の幻を追いかける。いや、やっぱ目黒くんか。(笑)

20代くらいの二人組の女性がベンチで代わるがわる写真を撮っていた。一緒のところをお撮りしましょうか?と申し出た。では、そちらもいかがですか?と、私の写真も撮ってくださった。ご返杯、ご返杯。
本当は、誰も座っていないベンチが撮りたかった。想がいたであろう空気感を。
でも、その余裕はなかった。
すでに次の順番待ちをしていた女性がベンチに走り寄ってくる。

凄まじき、目黒蓮効果。

しかし、暑い。焦げる。そろそろ世田谷代田をあとにしよう。
そして、いよいよ19年間住んでいた経堂へ移動。

駅へ降りたら、3年前と変わらない駅と駅前。ただ大きく違っていたのは、本日はお祭りだった!

どどん!


駅前のロータリーに紅白の幕がひかれ、太鼓をどんどん打ち鳴らす音が聞こえる。歓声があがる。ハッピを着てお化粧をしてもらった子供達が誇らしげに歩いてくる。

やばい

泣きそうになるじゃないか。

うかつだった。毎年7月の下旬は、経堂祭りがあったんだった。お神輿が練り歩き、屋台が出て、太鼓の音が耳の奥まで響いてくると、子供の頃を思いだす。家族でお祭りとか行った記憶もないのに。嬉しい記憶も悲しい記憶もないのに。太鼓の音には何故か敏感になる。
日本人には共通の感情なんだろうか。
ひぐらしの声に何故か哀愁を感じてしまうように、太鼓の音や響きには、特別なうねりがあるのだろうか。

改札を出てすぐの小田急OXへ向かう。
毎日、ここで食料を調達していたスーパーマーケット。

涼しい

ここですいかとビスケットを買った。


夏のご馳走!


お土産用おフランスのビスケット。
坊やの笑顔が可愛い。

農大通りにあるビジネスホテルにチェックインして、すいかを食べる。
実は私も今朝から熱中症っぽい。新幹線に乗る前、少し躊躇した。
心拍数が高くて身体の中に熱がこもっている感じ。
そういうときは、外出は控えてくださいと人には言う。
自分のことになると「なんとかなるだろう」と想ってしまう。

まあ、なんとかなった。年々、年のせいか暑さに弱くなっている。
熱中症は一日にしてならず。
日々の疲れや寝不足が溜まってある日突然、不調がやってくる。

気を付けないとね。

ライブは盛り上がった。あっという間の二時間だった。
デビューから4年間在籍していたVAPレコード時代の曲を中心に歌ってくれた。当時のキーのまま。まったく違和感なく歌う。
森川美穂姐さんの曲は、美穂姐さんとともに成長する。
17歳の時の歌詞を55歳が歌っても55歳の歌に聞こえてしまう。
彼女の中にずっと少女のような感覚があって、いつでもその感覚に戻れるということなのか。またはその逆で、どんなに昔の歌詞でも、今の自分の感覚に置き換えて歌うことができるということなのか。

本人に確認したことはない。
聞いたとしても、
「そんなの考えたことな〜い」と答えるにきまっている。

翌朝、欲しいものがあったので吉祥寺へ。
熱中症をまだ引きずっている。早めに仙台に帰ろう。
吉祥寺から中央線に乗る。
あ、ということは、中野を通るじゃないか。
あの雄姿を見られるかも!
中野駅から、見えたものは音楽の聖地、

中野サンプラザ!

美しい!中野サンプラザ!

7月2日に閉館。
しかし、まだ取り壊されてはいなかった。
ラッキー!
若い頃、コンサートと言えば、サンプラだった。白くて上品で、この建物を見るだけでも胸が高鳴った。

日常に見えていたものが無くなってしまうのは寂しい。

いつもは、1時間半で着いてしまう「はやぶさ」に乗る。が、今日は席が取れず「やまびこ」に乗る。

ガラガラ!

日曜日のお昼だと言うのに、ガラガラだ。
ふたり席にひとりで座れる。
なんだかリラックスして、2時間があっという間だった。

東京に行けば、喜びで満たされると思っていた。でも、そうでもなかった。
私の大好きな風景が広がり、大好きな友に会えて、今までと同じ時間を分け合えると思っていた。そうではなかった。
世の中はどんどん変わっていく。
思い出は夢みたいなもので、自分が覚えていなければ、なかったようなものになる。

そういうもんでしょ?
いちいち寂しがってどうするの?

そうなんだけどね、
歳をとると、変化ってこたえるものなのよ。

なんて思った自分にもちょっとがっかりしちゃった。


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