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誰のこと?私のこと?・・・僕のこと。

昨年の夏、MRS.Green Appleの「点描の唄」について好き勝手語ったら、たくさんのかたに読んでいただけた。
ありがたい。
改めて、彼らのパワー、人気ぶりに圧倒された。

昨年末、日本レコード大賞を連覇しちゃった彼らだけども、受賞曲「ライラック」も昨年の「ケセラセラ」も素敵だったんだけども、
MRSの真骨頂は、やっぱ、バラードじゃないか?と、思うのだ。

MRSの曲で一番好きなのが「僕のこと」だ。
2019年1月9日にリリースされた。
そう、6年前の今日なのよ。

しびれるわね。

のちに(2022年)カロリーメイト受験生応援CMに使用されて、見る人達の心を揺さぶった。受験勉強に悪戦苦闘する若者たちの映像と詞の内容が見事にマッチし、ドキュメンタリー映画を見ているようで、見るたびに涙した。

唄は問わず語りのように静かに始まる。
楽器もギターのみだ。

僕と君とでは何が違う? 同じ生き物さ 分かってる
でもね 僕は何かに怯えている みんなもそうならいいな

「僕のこと」1コーラスのAメロ

「みんなもそうならいいな」で、ぐっと聴く者のハート掴んじゃってる。
一気に「一般人参加型の曲」にしちゃってる。
ずるいなあ。うまいなあ。
なに?なに?私もそうなんだけど・・・
って、大森元貴の世界に巻き込まれたあと、Aメロは続く。

がむしゃらに生きて誰が笑う? 悲しみ切るには早すぎる
いつも 僕は自分に言い聞かせる
明日もあるしね・・・

Aメロ続き

ここまでは、スタート時と変わらないテンション。わずかにドラムが入り込む。
しかし、物語で言えば起承転結の「起」に過ぎない。
なのに!次がもうサビ!になるのだ。

ああ なんて素敵な日だ
幸せと想える今日も
夢やぶれ挫ける今日も
ああ あきらめずもがいている
狭い広い世界で奇跡を唄う

「僕のこと」1コーラスのサビ

いきなりの展開!
え?さっきまでボヤいてましたよね?
なんでいきなり「なんて素敵な日だ!」なんて歌っちゃってるんですか???なんでそんなに潔いのですか?
あなた、人生何周目ですか???

オケのほうもね、それまで静かにギター、ドラムス、シンセで静かに成り立っていたのが、オーケストラふうに「これでもか!」って勢いで盛り上げるの。しかもマーチで。

泣けるわ。
マーチって何故だか泣けるのよ。
泣いている人を強引に励ますみたいで。あ、いい意味で。

で、「ああ」の唄い方なんだけども、ここの「ああ」は、
なはあ~」なのよ。(笑)
ただの「ああ」じゃないのよ。
「確かにボヤいてましたけども、生きてるってすごい!って僕、わかっちゃったんです!」って、訴える「ああ」なのよ。一番聴いて欲しいところなのよ。だから「なはあ」になる。

で、ここでサビが終わっちゃっても十分なのにサビはまだ続く。

僕らは知っている 空への飛び方も 大人になるにつれ忘れる
限りある永遠も 治りきらない傷も みんな僕のこと
今日という僕のこと ああ・・・

「僕のこと」1コーラス目の二つ目のサビ

最後の「ああ」は普通。(笑)
しかし、ここでまたひとつ、大森元貴氏のすんごい唄い方に腰を抜かした。「空への飛び方も」から「大人になるにつれ忘れる」へつづく箇所。
「飛び方も」の「も」が、「もうお」と唄い、「となになる・・・」の「」へ繋げる!そのアプローチのしかた、お見事!

人生何周目???

「僕のこと」のPVより

この頃の大森氏って、すんごく若くない?
ビジュアルだけ見ると中学生か?って思ってしまう。
確かに若かったんだけども、まだ22~3歳だったんだけども。
もがきながら泳いでるわりには、人生俯瞰で見ている仙人みたいで、いや、違うか、アイルランドの森にいる妖精みたいで、何度も聞いてみたくなる。

人生何周目???

この曲ねフルで聴くと、すごく長い。
2コーラスが終わったあとに、まるで別の曲?と思うCメロがやってくる。

冬に咲く花に命が芽吹くよ
駆けるは冬の大地
青すぎた春を忘れずにいたいと
語るは友との地図 駆けるは人の旅路

そしてさらにサビがやってくる。

ぼくらは知っている 奇跡は死んでいる
努力も孤独も 報われないことがある

ええ、報われないことばっかです。

だけどね それでもね
今日まで歩いてきた日々を人は呼ぶ
それがね 軌跡だと

お見事!!!
すごい着地点!!!奇跡と軌跡ね。
なんかすごいゴールを見せられた気がする。
箱根駅伝で走者が切ったテープがひらひらと舞っているようだ。

でもね、これがゴールではないのだ。
まだ胴上げ出来ないんだ。
またサビに戻るのよ、元貴っちゃん。

ああ なんて素敵な日だ
幸せに悩める今日も ボロボロになれている今日も
ああ 息をして もがいている
全て 僕のこと あの日の僕らのこと

しかし、まだ終わらない。(笑)
また最初のAメロに戻る。

僕と君とでは何が違う?
それぞれ見てきた景色がある
僕は僕として 今を生きてゆく
とても 愛しいことだ

くどい。(笑)
くどいが、「とても愛しいことだ」の箇所を唄う元貴っちゃんは自信に満ち溢れている。唄い始めの不安だらけの表情とは別人のように。
ここでやっと「僕のこと」が終了する。
長編映画を見て、スピンオフまで付いて、その後の主人公の続編まで見せられたような豪華版の1曲だ。

聴くほうも体力が要る。(笑)

大森元貴氏は、学生時代、不登校が続いていたそうな。
常に自分と向き合い「なぜ?」と疑問を持ち続ける少年だったのだろう。
学校へ行かない日々にも曲を作り、学校では学べない「生き方」を模索していたのだろう。
こう書いてしまうと語弊があるけど、これだけすごい曲を次から次へと作れてしまう才能があれば、学校なんて必要なかったと私は思う。
まあ、でも卒業アルバムに自分が載らないのは寂しいから、修学旅行などの行事があるときだけは登校していたらしい。

笑っちゃう。

なんで大森氏の唄は若者の心を鷲掴みにするんだろう?と、考えてみた。
たぶん、大森氏が当事者になっているからだ。
「悩んでいる人を励ます唄」ではなく、「悩んでるんだよね」と、打ち明けられる曲が多い。
え?そんなに才能があるのに?と悩むの?迷うの?と、ちょっと驚いてしまう。そして、悩んでいたはずの聞き手が一瞬「悩みを聴く側」になる。
大森氏は無責任に「がんばろう」とは言わない。
その代わり「夢やぶれる日でさえ素敵な日だ」と唄う。
しらずしらずのうちに、光がさしてくる。
悩んでいても大丈夫だ・・・と思わせてくれる。

そう、うまくいかない日でも、生きているだけで人間は得を積んでいるのだと思う。

かなえたい夢はなんですか?と、今月NOTEさんがお題を出している。
結構生きてしまったので、あきらめばかりなのだけど、敢えて言うなら、
これしかない。
大森元貴氏に逢いたい。もうれつに逢いたい。

そして、聞きたいことがあるのだ。

人生、何周目ですか?と。

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