箱根駅伝2021 情を捨てきれなかった監督と、捨てた監督
青山学院大学 5区 竹石尚人
やっぱりそう来たかという思いはあったが、同時に不安もあった。そして、昨年5区を2位で走った飯田貴之が補欠で控えており、これは当日変更があるのかとさえ思わせた。いずれにせよ、竹石が今回の青学大、ひいては箱根全体の行方を握ると思っていた。
竹石の箱根を振り返ってみよう。
2018年、2年生で初の箱根5区に出場。2位で襷を受け、前を行く東洋大を猛追したものの、途中脚がつるアクシデントもあって、区間5位。青学大はそのまま往路2位で、往路優勝を東洋大にさらわれたものの、復路6区で逆転して、青学大が総合4連覇を達成した。
2019年、再び5区で出場。3位で襷を受けるも、再び脚がつるアクシデントにみまわれ、順位を落とす。最後盛り返すも往路6位でフィニッシュ、区間13位に沈んだ。青学大は復路優勝はするものの、追い上げ実らず総合2位となり、東海大に初優勝されてしまう。
そして、昨年2020年、竹石はケガのため欠場したものの、青学大は箱根王座に返り咲く。そして4年生だった竹石は留年して、再び箱根を走る決意をして、今回の箱根を迎えた。
しかし、結果はご存じの通り、竹石はまた途中で脚がつる様子が映し出され、区間17位に沈み、青学大は首位創価大と7分半差の往路12位、総合連覇は絶望的となった。歴史は繰り返されてしまったのである。
原監督は竹石の調子は悪くなかったと言っていたが、全日本を回避したところを見ると、絶好調とは言えなかったと思うし、そして何よりも飯田という駒を持ちながら、使わなかったのは結果として失敗ということになる。
じゃあ何故そこまでして、過去に失敗している竹石を使うのか?以前箱根の特集番組で青学大の合宿の上りのタイムトライアルで竹石が他の選手を置き去りにした様子が放送されていた。そんな感じだから原監督は竹石の上りの強さを評価しており、ひょっとしたら、青学大OB「三代目山の神」神野大地より上りの力が勝っていると思っていたのではないかと思う。
そんな選手が、留年までして箱根にチャレンジするというのだから、上りで使いたくなるのは指導者の情とだし、竹石の5区起用こそが絆大作戦なんだと思う。また、箱根の5区、6区は普通のレースでは走らない山岳コースを走るため、その代わりとなる区間が用意できない。そこが箱根の難しいとこなのだ。
一方、非情になったのは、優勝した駒沢大の大八木監督。10区にエントリーしていたキャプテン神戸を3年生石川に当日エントリー変更。石川は期待に応えて区間賞の快走、そして残り2kmで首位創価大を捉えて、駒沢大を見事総合優勝に導いた。
もちろん竹石だけが、青学大の敗因ではないが、青学大の連覇は露と消えた。以前の青学大ならこんな悩みはなかっただろうが、強くなったがための難しい決断だったと思う。毎年選手の入れ替わる学生スポーツで強さを維持するにはこういう悩みを抱え続けるのだろう。
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