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「陶芸家になるには」ースタイル編ー 12 <離:スタイルを育てる>
離:スタイルを育てる
「破」では、フロー学習を行い、効率的に基礎を吸収しつつ、スタイルの芽を見つける方法を紹介しました。
基礎の幅が増え、スタイルを深める段階に入ってくると、自分の「目」が変化していることに気が付きます。
この段階で「離」、すなわち基礎からオリジナルへの重心移動が行われます。
ポイントとなるのは、「目」の部分。内省です。
「破」で述べたフロー学習の構造は…
アウトプット ↔ インプット
↕ ↕
内省 内省
このような往復運動でした。
ここで内省として行っていることは、作品や技法・知識に対しての感覚的な自問自答です。(好きか嫌いかなど…)
この自問自答を、もう少しロジカルに、理性的に行うと「フィードバック」となります。
この状態を構造化すると…
インプット → アウトプット
↖ ↙
フィードバック
このような回転運動となります。これを「創ることの基本構造」と呼ぶことにします。
「学習の構造」 から 「創ることの構造」 へのシフト。
これは、スタイルの芽を見つけるという目的から、スタイルを育てるという目的への変化でもあります。
基本的な行動としては、インプット・アウトプットは、学習の構造から大きな変化はありません。
なぜなら、この2つは、「食べる」「出す」のように、本能的な行動だからです。
これらをコントロールし、作品として昇華させていくための唯一の方法が、「判断」すなわちフィードバックです。
つまり、客観的な視点での判断を自分の行動に対して行っていくことになります。
この章では、創ることの構造を軸に、それぞれのカテゴリ「インプット・アウトプット・フィードバック」を底上げする質と量という観点から見ていきます。
スタイルを「見つける」は主観的ですが、「育てる」は客観的な行動です。
ここからは、客観的視点で自身の行動を認識していくことが、キャリアにおいて重要になってきます。
▽ 創ることの基本構造
スタイルを育てる
これが、「離」での目標となります。
そして独立後も制作を続ける限り、自身のスタイルを磨き上げることが、陶芸家としての軸となります。
「創ることの基本構造」は、その磨き上げの過程をまとめたものです。
再度、3つの要素を確認していきます。
様々なものを見る、知る、体験する。
作家を志し基礎を学ぶときも、新作の企画に対しても、まず必要になるのはインプットです。
そしてそれを形にするアウトプット。
アウトプット ↔ インプット
ここで、このような話があります。
画家は作品を2か所で制作する。
作品の前。
作品の3メートル前。
これは、
直接制作する身体的、感覚的なアウトプットと、距離をおいて客観的に判断する時間、このどちらも制作には必要だとしたメタファーです。
この後者の判断する時間が、フィードバックです。
インプット → アウトプット
↖ ↙
フィードバック
自分の作品を見ながら、たった今触った軌跡を、過去の記憶や、思い描いている完成図などをベースに、評価していきます。
すぐに作品を修正することもありますし、自分に足りない部分を見つけたりすることもあります。
そして、作品が完成した後、制作での発見や、今後の方向性を定めるために、総評的なフィードバックをしていきます。
まとめると、これらのフィードバックは短期的フィードバックと長期的フィードバックに分けられます。
短期的フィードバックは、作品制作時の瞬間的な判断。これは、素材に対する経験や、自身の積み重ねてきた嗜好などを元にしたアウトプットとフィードバックのピボット運動です。
長期的フィードバックは、作品完成後の客観的判断。うまくいかなかった場所や、面白い失敗の発見、自分には何が必要なのか等、自分の作品からのインプットや、他の作品のインプットの必要性など、次のインプットに働きかけるフィードバックです。
これを踏まえて、「創ることの基本構造」をアップデートすると…
インプット → アウトプット
↖ ↙↗ (短期・長期)
フィードバック
このようになります。
では、スタイルを育てていくために、この3つの要素をどう高めていけばいいのか…
基本的に、私たちが知識や技、さらには身体的な要素などをレベルアップさせていくためには、反復練習や数・量を増やす鍛え方以外にはありません。
そして、それにともなって、狙いを定めた質への意識も、自ずと重要になってきます。