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マツタケより美味しいと言われるきのこ9選

日本で最も知られてる野生のきのこ・・・それは間違いなく『マツタケ』である。
その芳醇な香りから「マツタケ=一番おいしいきのこ」的な風潮があるが、マツタケより美味しいと言われているきのこもいくつか存在しており、これを紹介していく。


1. ホンシメジ

「香りマツタケ、味シメジ」でシメジを表すのは本種、ホンシメジ (Lyophyllum shimeji)である。最近「大黒本しめじ」として人工栽培品がスーパーなどでも出回るようになってきている。シャキシャキとした食感と強い旨味で、どう調理しても美味しい。

食材性:旨味と食感
収穫時期:秋
人工栽培:○(季節性)

2. コウタケ

日本のきのこ狩り界隈ではマツタケ並みの人気を誇るのがこのコウタケ (Sarcodon aspratus)である。漢字で表すと「革茸」で「香茸」ではない。醤油のような独特な香りが非常に強い。乾燥させて炊き込みご飯や、スープにして食べられる。

類似菌としてシシタケ (Sarcodon imbricatus)、マツシシタケ (Sarcodon squamosus)、ケロウジ (Hydnellum scabrosus)がある。四種を比較すると、
香り
・コウタケ:乾燥するととてつもない醤油のような甘い香り
・シシタケ、マツシシタケ、ケロウジ:やや不快な臭い シシタケ・マツシシタケは乾燥させるとコウタケほどではないがコウタケのような香りがする
見た目
・コウタケ:子実体の中心に漏斗状の窪みが根元まで達しており中空
・シシタケ、マツシシタケ、ケロウジ:窪みが浅くてはっきりしておらず、中実。コウタケと比べると傘の色がやや濃い。
生息域(これが一番重要か?)
・コウタケ、ケロウジ:コナラ林(広葉樹林)に自生する
・シシタケ:トウヒ林(針葉樹林)に自生する
・マツシシタケ:マツ林(針葉樹林)に自生する

・コウタケ:アクが強いので一度茹で溢す。美味。
・シシタケ・マツシシタケ:コウタケ同様アクが強いので茹で溢す。普通。
・ケロウジ:茹で溢しても強烈な苦みが抜けず不食。
参考:http://s-kinokonokai.sakura.ne.jp/kinoko/common/koutake.htm
  :https://kinokobito.com/archives/2510

食材性:香り
収穫時期:秋
人工栽培:×

3. ポルチーニ

ポルチーニはイタリア語由来の名称。一口にポルチーニと言っても様々な種類があるが、その中でもBoletus edulis (和名ヤマドリタケ)を指すことが多く、また最も美味しいとされる。中国語では美味牛肝菌(=美味しいイグチ)と呼称されるなど、世界中でトップクラスに美味しいきのこと評価されている種。(この中でも特にポーランド産の人気が高い。)主にトウヒ林に分布しており、日本でも北海道のエゾマツ林に生えていることが多い。歯切れのよいサクサクとした食感とナッツのような香り。主にクリームソースの具材とされることが多いが、炒めても美味しい。

食材性:旨味と食感
収穫時期:夏
人工栽培:×

4. トリュフ

日本の「香りマツタケ、味シメジ」をヨーロッパ風に言い換えるならば、「香りトリュフ、味ポルチーニ」といったところ。一口にトリュフと言っても様々な種類があり、代表的な種としてはTuber magnatum (白トリュフ)とTuber melanosporum (黒トリュフ、ペリゴール)を指すことが多い。雌豚が発情するフェロモンと同じ成分という何とも妖しい香りを放つ。きのことしては珍しく生食が可能な種で、薄くスライスしてその香りを楽しんで食べることが多いが、肉質も歯ごたえが良い。
因みに日本や中国でもイボセイヨウショウロ (Tuber indicum)というトリュフの一種が自生してる。白トリュフや黒トリュフには香りは劣るものの美味。

食材性:香り
収穫時期:春と秋
人工栽培:△(畑栽培)

5. オオシロアリタケ

きのこの本場がどこであるかと聞かれれば私は中国・雲南省であると即答する。ここでは食用野生菌約250種類が市場に出回っており、世界で食べられているきのこの品種のうち2/3がここに揃っている。
その中でも人気が高い種の一つが「鸡纵菌」和名:オオシロアリタケ属(Termitomyces)である。「シロアリ」とあるが、これは本種がキノコシロアリと共生関係にあり、シロアリの巣からきのこが出来るため名付けられている。香り、味、食感全てが一級。青椒肉絲で食べられることが多い。
日本の沖縄県にも自生しているが、これは琉球王朝時代に本種の採取を目的にキノコシロアリが中国から輸入されてきたものが由来という説がある。

~以下蛇足~
「鸡纵菌」の学名は百度百科ではTermitomyces albuminosusと書かれているが、これは誤りで現在の学名はMacrolepiota albuminosaである。(カラカサタケの仲間)
そしてMacrolepiota albuminosaは雲南省には自生していない。
では、一般的に「鸡纵菌」と言われるものの種は何か、というとコレガワカラナイ。
というのも、実は中国に自生しているTermitomycesは種が整理中で、T. intermediusとかT. tigrinusとかT. yunnanensisとか新種が最近発表されている。
ということで中国で「鸡纵菌」を見かけたらTermitomyces sp.としておくのが良いだろう。

https://doi.org/10.3897/mycokeys.95.97156

食材性:旨味と食感
収穫時期:夏
人工栽培:△(畑栽培)

6. 干巴菌

これも雲南省で人気のあるきのこの一つ、というか雲南にしか自生していない。なので和名もない。学名はThelephora ganbajun. 非常に香りが強いきのこで、旨味も濃いとされる。炒めて食べるのが一般的。価格がマツタケの3倍くらいとバカ高く、地元民は食べようにもなかなか食べられない品種でもある。

食材性:香りと旨味?
収穫時期:夏
人工栽培:×

7. チチタケ

これも奶浆菌として雲南省で人気のあるきのこの一つであり、そして栃木県でも人気のあるきのことしても知られている。学名はLactarius volemus.食材としてはシイタケに近く、干魚のような非常に濃い出汁が出る。日本産のものは食感がボソボソで段ボールとも評されるが、中国では食感については悪いという感じではないらしい。→これについては中国では千切りで調理されるのが一般的なようで、そうすることでボソボソ感が軽減される模様。

食材性:旨味
収穫時期:夏
人工栽培:×

8. アカジコウ

见手青として中国で人気のあるきのこの一つ。见手青は「青変反応を持つイグチ科全般」を指すが、その中でも红葱菌 (Lanmaoa asiatica)または白葱菌  (Butyriboletus roseoflavus)を指すことが多い。日本ではBoletus specius含めたこの辺りの菌の総称としてアカジコウと呼ばれる。
どちらもイグチ科の仲間で、しっかりとした身質、ナッツのような香り、強い旨味が特徴。唐辛子とニンニクで炒めて食べられることが多いらしいが、どんな料理にも合うらしい。日本にも分布しているが、希少種として扱われており、滅多に見かけない。(雲南の市場で山のように積まれる白葱菌が羨ましい。)

~以下蛇足~
Boletus speciusは北米原産のきのこで、日本では発見されていない。
じゃあ日本の「アカジコウ」ってなんなん?と思うところだが、牛肝菌研究所さんによるとButyriboletus pseudoroseoflavusに近い種だそう。(ここら辺日本ももっと研究してくれ)

食材性:旨味と食感
収穫時期:夏
人工栽培:×

9. アミガサタケ

英語でmorel,フランス語でmorille,中国語では羊肚菌と呼ばれ、世界的に人気のあるきのこ。日本でも普通に見られ、近年人気になった野生菌の一つとなっている。アミガサタケと言ってもいくつか種類があり、代表的な品種としてイエローモレル(和名:アミガサタケ,Morchella esculenta)とブラックモレル(和名:トガリアミガサタケ,Morchella conica)がある。シャキシャキとした食感と濃厚な出汁。クリームソースと和えて食べられることが多いが、どう調理しても美味しい。
一つ注意して欲しいのが、水加ヒドラジンという毒成分を少量含んでいること。この物質は融点が52℃で非常によく水に溶けるので、湯通しして除去するのが効果的。60~100℃の熱水にアミガサタケをぶち込み、きのこも52℃以上になった(頃合いだろうと思った)のちに取り出すことで除去は完了する。
水加ヒドラジンの沸点は114℃なので素揚げでも毒成分は除去可能…かもしれない。(試したことはない)
あとヒドラジンは非常に引火しやすいので、バーナーで満遍なく炙ることでも除去可能…かもしれない。(試したことはない)
ここまで長々と書いてアレだが、毒成分は揮発性が高いので、焼けばまず問題ない。
ケチャップとかワインの酸味を飛ばすのと同じようなもんだと思う(適当)

食材性:旨味と食感
収穫時期:春
人工栽培:△(畑栽培)

その他

スーパーでも普通に売られているマイタケ、シイタケ、エリンギ、ブナシメジ、エノキ、ヒラタケ、なめこ、マッシュルームもしばしばマツタケより美味しいとされることがある。個人的にはこんなかではマイタケの天ぷらが一番好き。

そもそもマツタケが食されてる地域が東アジアに限定されるので、中国が多めになってしまった。

アンズタケは中国でも食されているが、マツタケより美味しいとまでの評価は見られなかったので保留。また、アイタケも中国国内で美味しいきのことして知られているが、「安価な割には美味しい」的な評価なので保留。

アメリカではマスタケ (Laetiporus sulphureus)が非常に高く評価されているが、上の面々と比べると微妙じゃね?ってことで保留。鶏肉みたいな食感を好むのであればホウキタケのほうが良いし。

https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzUxOTg1NTgyNA==&mid=2247486519&idx=1&sn=370625a477580c22f3a719471168c072&chksm=f9f20788ce858e9e752aabc99927797ed00ee177149dbbdef7ebad4872e72d5f4350b6856b7f&scene=27

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