毒キノコの見分け方教えます!(大嘘)きのこの迷信一覧
「食べられるきのこと食べられないきのこはどうやって判別するの?」
この問いに関して結論から言うと、キノコの特徴を網羅的に覚えて種を同定することのほかない。
しかしどういう訳か、「野生きのこはある法則に従えば毒か食用か見分けが付けられるぞ!」という迷信が非常に多い。ここでは私が知る限りのそんな迷信を紹介する。
1. 柄が縦に割けられるきのこは食べられる。
きのこは食毒問わず多くの種が縦に割けられる。
画像のドクツルタケも縦に割けられるが、1本食べたら余命4日となる。
逆にアイタケ (Russula virescens) やチチタケ (Lactifluus volemus)など、縦に割けられない食用菌も存在している。
2. 色が派手なきのこは毒、地味なきのこは食
きのこの世界に危険色というものは存在しない。
クサウラベニタケのように地味な色合いだが猛毒なもの、逆にタマゴタケ (Amanita caesareoides)のように派手な色合いでも食用のものもある。
3. ナスと一緒に加熱すると毒は消える
単に「きのこの毒」と言っても様々な種類があるが、ナスにそんな万能薬みたいな効果や成分はない。
そもそも、毒きのこというのは加熱しても毒素が残るものを指す。シイタケやマツタケですら加熱が不十分だと毒症状が出ることがあり、ほとんどのきのこは加熱調理が必要。
4. 虫やナメクジが食べてるきのこは食べられる
お前ハエがウ●コ食ってるからってウ●コ食べれると思うの?
野生きのこは、主にキノコバエというハエによって大なり小なり食害を受けている。多くのきのこは虫が食べられると言えるが、人と虫では消化器官構造が異なる。
逆にハエトリシメジ (Tricholoma muscarium)など、ハエを殺すきのこでも人が食べられるものもある。
5. 齧って変な味がしないものは食べられる
きのこを同定する上で齧るという行為は実は有用で、クリタケとニガクリタケ、ニガイグチ属の判別では重要な要素となる。
しかし毒の有無の判断に味そのものは全く関係ない。無毒で不味いものと美味しいもの、有毒で不味いものと美味しいもの両方が存在する。
その例の一つがドクツルタケで、齧ると美味しい。もちろん飲み込めばそのままあの世行きとなる。
6. 塩漬けすると毒が消える
塩漬けによって毒症状が出ない仕組みは、塩析で脱水が起きる際に水に溶けた毒素も抜けて希薄されるためという説が有力である。つまり毒素が残留している。
ツキヨタケやベニテングタケなど比較的攻撃力が低いマシな毒キノコが塩漬けで食べられる場合があるが、あくまで毒素が希薄されたものという認識が必要だろう。
7. 茹でると毒が消える
確かにシャグマアミガサタケやウスタケなど、茹でこぼすことによって毒素を加水分解して食用になるが、これは毒素の融点が100℃以下のものに限られる。
ドクツルタケの主要な毒素であるα-アマニチンの融点は255℃で、加水分解できない。
また、毒が加水分解できるきのこでも、毒が消えるというよりはお湯に溶けて薄くなった状態なので、スープで飲んだりすると無事毒症状が発現する。
8. 不快臭がしたら毒、いい匂いがしたら食
ドクツルタケとかカエンタケとかは特に匂いないし、キヌガサタケとかウ●コの臭いするけど食べれるが?
9. 木から生えるきのこは食べられる
ぱっと思い浮かぶものでも、コレラタケ、ヒメアジロガサ、スギヒラタケ、ツキヨタケ、ニガクリタケ、ニセショウロ。こいつらは木や倒木から生える毒きのこで、特に前者3つは致命菌。
欧米圏で広く知られている。こんなもの知らなくていいから(良心)
10. イグチ科のきのこは全て食べられる
イグチ科とは傘の裏がスポンジ状になってるキノコである。(一部例外あり)
勿論イグチ科にも毒キノコがあり、代表例としてドクヤマドリ、バライロウラベニイロガワリ、アシベニイグチなど。毒の他にもニガイグチなど不食菌も大量に存在する。
これも欧米圏で広く知られてたもので、イグチ文化の乏しい日本でもある程度認知されるようになった(半ギレ)
11. 銀のスプーンが黒く変色したら毒
意☆味☆不☆明
銀が黒く変色するのは硫黄に反応した場合(硫化)や、塩素に反応した場合(塩化)の呈色反応であるが、銀に対して硫化や塩化の反応を見せるきのこは発見されていない。
呈色反応としては水酸化カリウムやアンモニア水を用いることが多い。
12. 傘の裏や肉が青く変色するきのこは毒
青く変色するキノコって大体イグチ科なんですが、さっき「イグチ科のきのこは全て食べられる」とか言ってませんでしたかね…
青く変色するきのこは有毒無毒どちらも存在する。
アカジコウは非常に美味しい食べられるキノコだが、傘の裏や柄が青く変色する。逆に俗説通りバライロウラベニイロガワリ、アシベニイグチなどは青く変色する毒キノコ。
13. 白いきのこは毒
まあ分かるよその気持ち。ドクツルタケは絶対に警戒するべきキノコだし、オオシロカラカサタケも公園でよく見かける毒キノコだ。
しかしよく考えてみて欲しい。市販のホワイトマッシュルームは食べられるが?
市販品がレギュレーション違反だとしても、シロマツタケモドキやササクレヒトヨタケなど白くて食べられる野生キノコはある。
番外:毒キノコに触れると危険
アホ「イヤァァァアアアアアイヤァァァアアアアア!!カエンタケがあるぅぅぅううう!!カエンタケがあるぅぅぅううウウ!!!!気持ち悪ぅういい!イヤァァアアアアアアアア…!!
自然公園の中なのにカエンタケが生えてるぅうううイヤァァアアアア!イヤァアアアアアアアアアア!!
ウウウゥゥゥゥゥウウウウウ!どうしてカエンタケがあるるノォォォオオオオオオオ!!?
どうしてカエンタケがあるのヨォォォォオオオオオオオオ!!!!!」
このレベルに達していたらもはや迷信と言っていいであろう。
ほとんどの毒キノコは触れても何の問題なく、カエンタケも手で少し触れるくらいならば全く健康被害の心配はない。(手に持ったまま移動するとかはやめた方が良いだろう。)
毒キノコの種類によっては齧ることによって同定する場合もある。
カエンタケなんかより、チチタケ(食用菌)を触った後の方のほうが大変なんだよなぁ…