75年という月日
間もなく75年を迎える。
此処から春に島へ向かい、秋に戻ってきた人々。
それが普通の日常だった。
島に大事なものを置いてきた人々。
すぐに戻ることができると思っていた人々にとって75年という年月はあまりにも長く、島に帰りたいと願った人々の多くが亡くなった。
時間というものは無限ではない。
私たち人間にとっての時間は長くて100年あるかというところだろう。
ごくごく単純な帰りたいという願いも自由に行き来したいという願いも叶えられることはないまま、この日を生きる。
生きることは死に近づくこと。75年という年月は短いとは言い難い。この年月と共に生きた人々のことを知りたいと思っている。それは私が祖父に出会う作業であり、記憶の断片を拾う作業…
30年近く前に亡くなった祖父にもう一度、会えるような気がする。
そして祖父の記憶の欠片を集めて未来を見つけたいと思う。私たちの未来はどこにあるのか?
それを探していきたいと思う。