不登校の海⑨ 無意識の抑圧
2020年5月、新5年生になったばかりの長男が不登校になりました。noteでは長男が9ヶ月かけて学校に復帰するまでの記録を公開しています。
「はじめに」はこちら★
どんどん悪口を言ってください
不登校のカウンセリングでは、O先生から宿題を出されました。
内容は、「親子の会話を文字起こしすること」
O先生はこのように言いました。
「会話をするときは、できるだけH君のマイナスの感情を引き出すことを意識してみてください。そのためには、お母さんが人の悪口を言うことも必要です。実在の人物の悪口を言うと角が立つかもしれないので、テレビのタレントさんでもドラマの人物でも構いませんからどんどん悪口を言ってください。」
確かに我が家では、夫も私も家のなかであまりマイナスな感情を口にすることがありませんでした。
夫も仕事の愚痴など言わないですし、私も人づきあいが少ないので嫌いな人の悪口を言う機会もありません。
誰かの悪口やマイナスな感情を言わないように気を付けているというわけではなく、私達は2人ともあまり他人のことに興味が無いだけなのです。また「言っても仕方ないことをわざわざ口にしない」という価値観も共通していました。
でも、まさかそのことが長男の気持ちを抑圧する原因になっていたなんて、夢にも思いませんでした。
私達夫婦は、子供たちが学校や保育園で「何か嫌な事」があったときは自分に教えて欲しいと思っていました。
だけど、その機会を奪っていたのが私と夫だったことに、この時ようやく気が付きました。
この日、会社から帰宅した夫にカウンセリングで言われたことを全て伝えました。
そして、できるだけ夫もカウンセリングに同行することを決めました。
「今日の最高」
少し話は逸れるのですが、ストーリーオブラブという映画があります。
1999年に公開され、たいして話題になったわけでもないので、見たことある人は少ないかもしれません。
ブルースウィルスとミシェルファイファーが演じる結婚15年目の夫婦が、倦怠期で普段は喧嘩ばかりしていたけれど最後はお互い考えなおしてハッピーエンドというお話です。
まだ子供が生まれる前にDVDで見たのですが、夫婦喧嘩のシーンばかりで不快だし全然面白くないと思いました。私は好きじゃなかったです。
ただ、一か所だけ印象に残ったシーンがありました。
映画の中で夫婦と子供たちが、今日最高だった出来事と最低だった出来事を報告し合っていたのです。
「今日の最高」を報告した時は家族みんなでハイタッチ、「今日の最低」を報告したときは「Boo!」とみんなで嫌な顔をし合う。
映画は面白くなかったけれど、そのシーンだけは「すごくいいな」と強く思いました。
その日以来、夫と「今日の最高」を報告し合うことが習慣になりました。
一日の終わり、眠る前にその日の良かった出来事を思い出すと、その日一日が幸せに過ごせたことを実感できたような気がしました。
映画では「今日の最低」も報告していたけれど、それは真似しませんでした。
良い気分で一日を終えたいのに、わざわざ最低な出来事を思い出さなくていいと思ったからです。
その習慣は子どもたちが生まれてからも続きました。寝る前や夕飯の時に「今日の最高」をお互いに話し合いました。
「○○くんと遊んだ」とか「給食が美味しかった」とか、そんな他愛ない「今日の最高」を聞くことが、楽しくもあり愛おしい時間でした。
だけど、今思えばその時に「今日の最低」も聞いてあげるべきだったのかもしれません。
大人である私たちは、多少嫌な事があっても自分の中で気持ちをコントロールできるし、嫌だったことを忘れるための発散方法もいろいろとあります。
お酒を飲んだり、好きな本を読んだり。
子どもたちはまだ、そんな技術を身に付けているわけもありません。
嫌だったことや辛かったことを誰かに伝えることで気持ちに折合を付けたり、安心することができるのだと思います。
我が家の子供たちは、その機会を与えてもらえていませんでした。
嫌いな子がいたり嫌なことがあったりしても、自分の気持ちに蓋をして、少しずつ少しずつ小さな胸にマイナスの感情を溜めていたのかもしれません。
実際に親子の会話を文字起こしして見て、そのことが浮き彫りになってきました。
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