こわい遺伝
昨日は、妹がうちに遊びに来て
うちの父親は相変わらず恥ずかしい、
という話をしていった。
というのも、うちの父は、
若い頃は見栄えもよく、
勉強も運動もできて、
学校のアイドルだったそうだ。
私は、はいはい、と聞き流しているが、
父と同級生だった母は「あんな嫁と結婚して」
と言われることを心底恐れているらしく、
80歳を超えた今でも、見た目とか、
着るものとかをものすごい気にする。
私と妹からすると、どうかしてるレベル。
でも、自分たちのお金なんやから、
見た目や着るものにお金をかけるのは
どうぞご自由に、ではある。
で、父に話を戻すと、
父は昔から女にだらしがない。
母は、父がもてもてだった過去を
リアルタイムで体験してきており、
何度も浮気騒動はあったが
それを甘受してきた人間だ。
そしていまだに父は、本質的なところは
なにもかわっていない。
私が幼少期の記憶のなかで、
けっこう鮮烈に覚えているのが、
洗面所で母が泣きながら、
父に向かって、
「どうせ私はブスやし」とか
「あの人のほうがなんたらかんたら」とか
そういう明らかに子どもなりに
聞いてはいけない話や、
と分かる話をしていた場面。
私たちがその家に住んでいたのは、
私が小学校に上がる前までなので、
その話は小学生になる前の自分が
聞いたことで、今になっても覚えてるくらい
異様な雰囲気やったんやと思う。
長じてくると
具体的に父の浮気相手がだれかを知ることも
少なくとも三度はあった。
またか、くらいにだんだん慣れていく自分も
なんなんだか。
あるときは、うちの店のバイトの子で
私たち家族とも付き合いがある相手ってこともあり
(しかも娘たちと年齢も変わらない)
ほとほとあきれた。
妹は家業を継いでいるので、
私よりもっとそばで、父のそういうところ、
女にだらしなく、自然と女に媚をうる姿を
見てきているぶん、嫌悪感も強いし、
「お父さんは、ほんまに女に甘くてあかん」
と常々言っている。
今も、父と母は、自分たちのまわりの
同年齢くらいのおじいさんおばあさん達の
コミュニティで、カラオケ大会とか、ゴルフとか、
あれこれと活動をしている。
実家のお店を拠点に、集まることもよくあって
妹はそういう事情や人間関係に詳しい。
そんななかに、マドンナ的存在の
おばあさんがいるらしく、
父がそのマドンナにちょっかいをかけている、
というのが妹の言い分。
今は、妹が店をやっているので、
父や母は気まぐれに顔を出している程度やけど、
妹いわく毎週金曜日の同じ時間に父が来て、
マドンナの習い事の送り迎えをしている、
らしい。
マドンナは、とっくにご主人と死別されているが、
父が下心なしにそういうことをする人物だとは
私たちは思っていない。
80過ぎてたって、恋愛感情っていうのは
もちろんあるやろうし、
なんなら性欲もあるのかもしれん。
ただ、いまだになんならワンチャン、と
思ってそうなところがきもい、
というのが妹の話で
ほんまどうしようもないとかなり怒っていた。
私も決してそれをいいとは思ってないけど、
自分と彼氏との関係に置き換えてみると、
私もへたしたら80過ぎても
恋愛はしてそうな気がする。
そのころに、子ども達に
きもっ、と言われることを想像すると
なかなかにきつい。
私の恋愛に関するゆるさというのは、
逃れようのないこの遺伝のせいでは、
と実はたびたび思ってきた。
妹も若い頃は、もてていたし、
気づいたら彼氏がかわっていて、
彼氏の友達ともいつのまにかできてる、
みたいなところがあったので
私だけじゃないし、これは絶対に遺伝、と
思い込もうとしていたところもある。
だけど、妹は結婚以来、そういうのは
すっぱり切っている。
元彼と連絡をとりあってはいても、
身体の関係はならしい。
うーーーーーん・・・
先のことを考えても何も良いことはないのだが、
妹の怒りは、私への戒めへにも思えて
複雑な気持ちになってしまった。
はっきり書いたことはなかったと思うけど、
私の彼には奥さんがいて、息子さんもいる。
今は彼の離婚を望んでるわけでもないし
再婚願望もほぼないけど、
いつまで今の状態でいるのかな、
とたまに思うことはある。
人生には、どうにかしようと思っても
どうにもできないことはままある、
とごまかしていられるのも今のうちだけ、
とは思いつつ、なにも答えを出せないまま
私もあっという間に両親のように80に
なるんやろうなあ。こわ。