第一言語と親子のつながり
わたしはアメリカに住んでいますが、日本生まれの日本人です。
アメリカ生まれの日本人の方に会うと、特にわたしと同じか少し上の世代の方は、「日本生まれの日本人」というだけで、わたしに心を開いて一歩近づいて話しかけてくれます。
なぜなら、彼らのお母さんやお父さんが、日本で生まれているからです。彼らはいわゆる日系二世と呼ばれる方々なのです。
「私は日本語を話せないけど、母が日本生まれなので、女性の日本語の音を聞くととても癒されるんです。」
といった感じで。
戦争の影響もあり、日本から渡米した方々の間では、日本の言葉は使わない方がいい、日本人として生きるというよりアメリカに染まった方が生きやすい、という考えがあったと言います。なので、多くの日系二世の方達には、日本語は継承されていなかったようなのです。
でも、家の中では靴を脱ぐとか、おにぎり、お餅、味噌、豆腐などといった生活様式や食文化は、今でも受け継がれているようです。
戦争前後に渡米した日系一世の方々は、現在は高齢になられています。驚くことに、わたしがお会いした方たちは、みなさん、日本語をとても流暢に話せます。日本語での生活より、もう英語で生きてきた時間の方が断然長いのに、日本語を普通に話されるのです。
「あーあなたは日本生まれなのね、私もよ。日本語の名前は、ようこ。ここでは違う名前だけどね。佐賀県のお魚とお米が美味しいところにね、疎開してたのよ。」
なんて、とても普通に。
わたしの知人のお父さん(日系一世)は、高齢になり認知症が進み、英語を全く話さなくなったそうです。家族は皆さん、英語のみで生活をしていたので、通訳を介さないとコミュニケーションが取れなかったとか。
また別の日系二世の方は、お母さんが介護施設に入る頃には、日本語しか話せなくなり、お母さんと会話ができない…と涙を流していました。
そういう話を聞くと、何歳で渡米したかなど詳しくは知りませんが、10代〜20歳前後が多いのでしょうか… その頃までに身に付いた第一言語というのは、本当に根強く人の脳に残るものなのだな、と感じました。
親子の間で、言葉が通じないのは不便でしょうが、親子としての深い繋がりは変わらないはずです。
たとえ、仲の悪い親子であっても、どちらかがあの世に行ってしまっても、縁が切れてしまっていても、命が繋がっている関係は不変だから。
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