ロンドンで片腹痛い④
前回までのお話はこちら。③
ここへ来てロンドン研修のメンツをざっくり書いておこうと思う。
(某大手旅行代理店)
【青山】(女性)見た目はふんわり系だが敏腕。
【紺野】(男性)優しさで溢れているオネエ系おじさん。
【藍沢】(女性)肝っ玉母さんのようなチャキチャキ系。
(学校チーム)
【愉快でアホな可愛い学生たち140人】
【I先生】(男性)生真面目でしっかり者だけどちょっと気が小さい。
【M先生】(男性)目指すは高田純次と豪語する陽気ないいかげん男。
【S先生】(男性)私のバディ的先生だが変態。
【私】(女性)この旅行の責任者。非常に口が悪く、隙あらば酒を飲む。
改めて書いてみると学校チームの不安を覚えるラインナップに笑う。
この旅の中で忘れられないエピソードの一つは「紺野さんとディナークルーズ」だ。
後に登場する添乗員の紺野さんは物腰柔らかで、優しくて、学生にも丁寧な言葉で話してくれる、女子力高めのおじさんである。
威圧的で、怖くて、学生に対して超絶口が悪い私とは正反対だ…。
ある夜、自由参加のオプションでディナークルーズがあった。
意外にも男子学生の参加者が多く、ドレスコードがあるため、彼らは一張羅のスーツを持参していた。
(と言ってもリクルートスーツ)
青山さんからは「先生達はどうされますか?私が一緒に乗船しますしホテルには藍沢がおりますので、少しの時間ですが、よければ自由になさって下さい」と有難いお言葉。
I先生は「折角なのでクルーズに同行したい」
M先生とS先生は「ロンドンのアダルト事情をじっくり研究したい(←おい)」
私は「街を1人でぶらぶらしながらパブを梯子したい(←おい)」という事で教員チームはそれぞれ行動することになった。
私はクルーズ船の出航を見送ってから街ブラに出掛けようと思い、テムズ川ほとりの乗船場までやって来た。
参加者がゾロゾロと乗船していく。
オシャレにドレスアップしてる人々に混じって、リクルートスーツを着た集団が異様に目立っている。
「背広」の語源にもなった、「サビルロゥ」という震える程かっこいいスーツ専門店の通りがあるロンドンで、サイズの合わないリクルートスーツを着た集団はシュールであり、そのダサさがなんだか愛おしくもある。
(※因みにサビルロゥには1人で足を運び、素敵なスーツを見てハァハァ興奮しながら写真を撮りまくりました←変態です)
乗船していく彼らを見ていたら何故か急に不安になって声をかけた。
「ねー!あなたたちテーブルマナーとか大丈夫?コース料理食べた事あるの⁇」
「いとこの結婚式で食べた〜」とか「はじめてっす〜」とかガヤガヤ言っている集団の中の1人が、無言でニヤリと私を見ながら親指を立てた👍🏻
何いまの?「大丈夫、任せろ」って事か?怖っ!
そこはかとない不安がじわじわと出てくる。
何事も無ければ良いけど…。
クルーズ船には出航1時間前から乗船可能で、学生達は50分前には全員乗船した。
今日は何とか大丈夫そうだ。
よし!私も早速パブに行こう!!
その時、何やら揉めている様子がみえた。
しばらく様子を見ていると、同行のI先生が私の方に走ってやってきた。
「学生の1人がスニーカーだったんですよ!スニーカーじゃ乗せられないって言われちゃって。僕の革靴を履かせて僕が代わりに降りようと思ったんだけど、僕のサイズじゃ全然入らないんですよ。」
「まじですか…、どうしましょう」
そこに青山さんと張本人の学生がやってきた。
学生はリクルートスーツに目が覚めるような真っ赤なスニーカーを履いてる。
何でまた…それにした?
まあ、今はそれはいいとして、さてどうするか。
青山さんが「先生、この近くに靴屋さんがいくつかあるらしいのでそこで買ってきたらどうかと、クルーズ船のスタッフに言われました!それで、あの〜…」
一瞬で察した。
「私が彼と靴屋を探して、靴を買えばいいのね…」
「はい〜、、私はここを離れられませんし…」
I先生は英語が全くダメなのだ。
「いや〜、面目ない!ごめんね!」とI先生。
“いえ、いいんです。先日飲み過ぎて夜の点呼の時間に寝てしまい、I先生1人に点呼をやらせてしまったのを、体調不良と誤魔化してしまったので…“
と心の中で唱えながら…
「わかりました。よしじゃあ靴買いに行こうか。時間ないから急ぐよ!」
私とリクルートスーツに真っ赤なスニーカーの学生はすっかり暗くなったロンドンの街に飛び出した。
走り出した私に学生が言った。
「あ!先生、いつものピンヒールじゃないと意外と小さいっすね」
「うるさい、そんな事言ってる場合か!ディナークルーズのお金無駄なるよ!」
クルーズ船の出航まで45分。
なんとも微妙な時間だ…。
そして、キーパーソンの紺野さんが出てくるのは、もう少し先である。
【続く】