赤い車
母親の運転する、赤い軽自動車が好きだった。
ボロっちくて、音もすごくて、くるくるまわさなきゃ開かない窓も、不便だった。
音がすごいもんだから、迎えに来たらすぐにわかった。帰ってきたら、すぐにわかった。
ポケモンを買いに行った母親が帰ってくるのを、窓に張り付いて姉ちゃんと2人、待った。
ポケモンを手にしたら、母親なんてそっちのけで、夢中になった。
ゲームボーイ、でかかった。
よくスピッツがかかってた。頑張って覚えて、意味もわからず歌った。メロディが好きだった。正直、声は嫌いだった。海賊版のCD、無限ループ。
そんな赤い車が、好きだった。
カーナビのない赤い車。
ここ2年、ほとんど会ってない母親に、お互い生きてるうち、あと何回会えるだろう。
車の色、迷ったら赤にしよう。