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Motivator100の世界観:大切にしたいこと

障害がキャリアを積む上で”障害”にならない社会をつくる会社Connecting Pointの阿部です。

これまでの記事の中で、Carolineさんとの出会いに始まり、私の野望が生まれるきっかけになった「問い」についてお伝えしてきました。

Motivator100::企業に「対話」と「共感」をもたらす知的障害のある100人であり、障害者雇用を流行らせる100社

今回は、「Motivator100」という場で大切にしていきたいこと、
それは、つまり、
「セルフ・アドボカシー活動で大切にしていること」
についてお伝えしながら、これまでConnecting Pointが行ってきた
セルフ・アドボカシー活動である「出張授業プログラム」
についても触れながら、Motivator100の世界観を描ければと思っています。

■Motivator100で大切にしたい4つの要素

私がオーストラリアに留学していた時、知的障害のある人のセルフ・アドボカシー活動に取り組むVALIDというNGO団体と活動を共にしました。
そして、その団体が、セルフ・アドボカシー活動を進める上で大切にしていた4つの要素があります。

  1. To find your voice(自分の意見をもつ)

  2. To speak up(発言する)

  3. To be respected(尊重される)

  4. To be heard(聴いてもらえる)

勇気をもって発言する本人の努力と、
その勇気に敬意を払って、より良きオーディエンスになろうと聴く努力

その両者の努力が不可欠であり、どちらかが欠けたら、セルフ・アドボカシー活動は成立するものではありません。

NGO団体VALID 知的障害のある人のセルフ・アドボカシー全国大会

Motivator100では、この4つの要素を大切にした場をデザインし、
企業で働く知的障害のある人たちに、
これまでの経験やキャリアを語ってもらうことこそが、
社会・企業の人たちに
「障害や障害者雇用について、”驚き”をもって知ってもらう機会」
になると信じています。

知的障害のある人たちが、
企業の中でビジョンを共有したメンバーとして、
どのような活躍をして貢献しているのか、
職場でどんな困り感があるのか、

について、自らの言葉で勇気をふり絞って語り
その語りを、障害の有無に関わらず、ともに働く人たちや応援したい人たちが敬意をもって耳を傾ける。

この機会の繰り返しが、
社会に広く、深く、根を張る
知的障害に対する無意識の偏見に気づくきっかけになるとともに、
当事者の人たちが、
自分と同じような境遇の仲間に出会い、
自分の可能性を知る等、
様々な形でエンパワーされ、
それぞれの秘めた可能性を開花する
ことにもつながると思います。

■出張授業プログラム

私が、セルフ・アドボカシー活動の可能性を強く信じられるのは、以前、Connecting Pointとして特別支援学級の中学生や保護者の方を対象に、
セルフ・アドボカシー活動のエッセンスを取り入れた
「出張授業プログラム」
を企画、実施した経験があるからです。

当時、区立中学校の特別支援学級の先生より、
高校卒業後の進路を視野に、進学先を考える必要があるにも関わらず、
高校卒業後の知的・発達障害のある人たちの活躍の様子が分からず、
進路指導に困っている
との相談がありました。

そこで、私は、障害者雇用に取り組む企業や特例子会社、就労移行支援事業所の方々にお声がけし、
中学校での出張授業で、
社会人として活躍する(もしくは、社会に出る準備をしている)自分の経験やキャリアを語ってくれる当事者の皆さんと、
その活動を応援してくれる企業を探しました。

出張授業プログラム(2018)

出張授業の主なオーディエンスは、
中学生と保護者、教員の皆さんだったので、先輩役の当事者の皆さんには、
・中学時代の様子(学校での様子、困ったこと、好き/嫌いな科目等)
・高校時代の様子
・就職先を決めた理由
・入社当時の様子
・社会人になって成長したこと
・今の夢
を語ってもらいながら、
最後に、中学生へのメッセージも届けてもらいました。

知的障害のある人が、自分の経験を自分の言葉で語るにあたって、
準備から本番までを、すべて一人で完結することは難しいことが
多い

そのように思います。

しかし、出張授業に登壇して下さった当事者の先輩方は、
職場の上司や支援者にあたる人たちにフォローしてもらいながら、
自分の経験を整理し、オーディエンスの心に届く文章を準備し、
一つ一つの言葉を大切にしながら語ってくれました。

そして、職場の皆さんは、その準備のプロセスこそを
「社員を知るための時間」
としてとらえて、社員の成長につなげる大切な時間として
喜んで協力して下さっていました。

出張授業プログラム(2017)

当事者の皆さんの語りを聴いた時、
私は、知的障害のある人が、
普通学級の中でどのような困り感をもって学生生活を送ってきたのか、
その時、その困り感をどのように乗り越えてきたのか、
について、初めて、支援者でもなく、
同じ社会に暮らす一人の人として、耳を傾けることが出来ました。

そして、

「あぁ中学時代からすごい経験を積み重ねられてきたのだなぁ。」

と、自然と尊敬の念が起こりました。
もしかしたら、この「出張授業プログラム」は、
私の中から、”知的障害のある人”というフィルターが取り除いた出来事であったと思います。

"知的障害のある人の可能性に蓋をしていた自分"に気付く瞬間

とも言えるかもしれません。

だからこそ、私は、今度は”企業”を舞台に、
セルフ・アドボカシー活動である「Motivator100」を進めていくことで、
私と同じような体験を共有できる人を一人でも増やし、
インクルーシブな職場づくりに向けた大きな一歩にすることができると、
自信をもって、言い抜けるのだと思います。

そして、勇気をもって語ってくれた当事者の人たちは、
この授業での語りが”一皮むけた経験”として、
自分なりに意味づけをしてくれていることを事後インタビューで知り、
セルフ・アドボカシーが、
本人と周囲にもたらす影響の強さを感じざるを得ませんでした。



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