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仕事の成功を分かち合う「相互成長」の物語(3/3):ソニー希望・光株式会社&ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

第3部は、美間さん、幾島さんをはじめ、ソニー希望・光の皆さんとともに仕事の成功を分かち合ってきたソニーセミコンダクタソリューションズの足立さん(写真右)へのインタビューです。「画像アノテーション業務」の協業を通じて、個と個だけでなく、組織と組織の間に生まれた相互成長の物語をお楽しみください。


ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社とは?

阿部:足立さん、はじめまして、どうぞよろしくお願いいたします。まずは足立さんが所属されている会社と、足立さんのお仕事についてお伺いしてから、本日のテーマに入っていけたらなと思っております。

足立:こちらこそ、よろしくお願いします。ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)は、ソニーグループの中で半導体製品を中心 に設計、製造、販売している会社です。事業の大部分が、画像を撮影するためのイメージセンサーという半導体となります。例えば、デジタルカメラやスマホで撮影をする際に、撮像するための素子にあたる部分の半導体です。
阿部:余談ですが、私もソニーのα6700のミラーレス一眼カメラを愛用しています。
足立:あぁ!α6700もSSS製のイメージセンサーを搭載していると思います。
阿部:瞳オートフォーカス 機能を実現しているのでしょうか?
足立:そうですね。瞳オートフォーカスは これからお話しするAI(人工知能)で検出していますが、SSS で扱っているのは、半導体デバイスというハードウェアとそれに関連する一部ソフトウェアということになります。
阿部:ありがとうございます。その中で、足立さんが今、ご担当されているお仕事の内容を教えていただけますか?
足立:はい。私が所属してるのは、SSSのシステムソリューション事業部です。この事業部では、インテリジェントビジョンセンサーと呼んでいるイメージセンサーに画像のAI処理を行える機能を持たせたチップを手掛けています。私はこのインテリジェントビジョンセンサーに載せるためのAIモデルを開発しています。このセンサーを活用し、物流業界やコンビニなどの課題解決に繋げている事例を、記事などで目にする機会も増えてきましたので、 もしご興味あれば是非ご覧いただければと思います。
阿部:ありがとうございます。続いて、足立さんが歩まれてきたキャリアについても、教えていただけますでしょうか?

フラットな人でありたい

足立:私は、2004年8月にソニーに入社したので、今年で20年目になります。これまでハードウェアエンジニアとしてのキャリアが長く、ソニーに入社する前までは、アメリカのシリコンバレーで、半導体のマイクロプロセッサーの開発をやっていた時期もありました。その後、イギリスのケンブリッジにある会社に誘われて、全世界の携帯電話の99%以上に使われているCPUの設計にも携わってきました。

阿部:足立さんにとって、仕事のやりがいはどんなことがありますか?私は、「もの」というより、「人」相手の領域でキャリアを積んできているので、私とは違う「やりがい」を感じられているのかなと思いました。
足立:なるほど。そういう意味でいうと、私は小学生の頃から、電気関係が好きで、秋葉原によく出かけていました。キットを買ってきては、はんだ付けをしてトランジスタラジオを作っていましたね。中学生になっても、オーディオのスピーカーシステムを作ったり、アマチュア無線の免許を取ったりもしていました。なので、振り返ってみれば、好きなことを仕事にしてきたのかもしれません。
阿部:足立さんが仕事をする上で大事にしてきた考え方、価値観があったら、ぜひ教えていただけますか。
足立:私も50代後半になりましたが、やっぱり若い人と、気兼ねなくフラットにコミュニケーションを取れたら良いなと思います。もちろん、私の経験で伝えられることもあると思いますが、逆に、若い人から学ぶこともあるなと思っています。だから、あまり上とか下とか関係なく、特に技術にかかわる話は対等に出来たらいいなと思っています。
阿部:働く中での学び合いが、足立さんの働き方や働く上で大事にしていきたい部分でもあるということでしょうか?
足立:そうですね。やっぱりフラットな関係でありたいです。昭和の時代には、自分の思っていることを提案しにくい雰囲気があったのですが、やはり若い人には言いたいことを言って欲しいですよね。

1つ1つステップを踏みながら始まった協業

阿部:ありがとうございます。今、ソニー希望・光(以下、希望・光)の皆さんと協働して2年くらいの時間が経過していると思いますが、協働のきっかけを教えていただけますか?

足立:弊社社長の清水から事業部長経由で、希望・光との協業を考えてくれないかという相談がありました。それが最初のきっかけだと思います。当時は、正直、希望・光の名前は存じ上げずに、ソニー・太陽(大分県)とは別の会社があるんだなと思っていました。
阿部:「特例子会社」という存在は、ご存知でしたか?
足立:そうですね、私がかつて扱っていた製品の中に、ソニー・太陽に製造委託をお願いしていたものがあったので特例子会社の存在については知っていました。
阿部:ソニー・太陽と希望・光は、取り組んでいる業務の内容も、働く上で社員の皆さんへの必要な配慮も変わってくると思いますが、協業にあたって、不安だったこと、もしくは懸念されたこと、心配されたことはありましたか?
足立:最初は、やはりきちんと仕事が出来るかどうかが不安材料としてあったので、まずはトライアルでやってみましょうとスタートしました。これなら大丈夫だろうと思う仕事をやっていただいて、徐々に難しいテーマの仕事に進んでいくような流れです。1つ1つ積み重ねていく中で、ここまでは大丈夫だな、という確認のステップを踏みながら、2年目に突入している感じかなと思います。
阿部:画像アノテーション業務領域で協業されてるかと思いますが、希望・光の皆さんと協業する前は、社内で行われていたのでしょうか?もしくは外注されていたのでしょうか?
足立:プロパーの若手社員にやってもらうか、インドにあるSony India Software Centre に委託をしていました。もしくは社外のサードパーティーの会社にお願いすることもありました。アノテーションも比較的簡単なものから、高度で難しいものまであるので、その難易度と案件の規模感によって依頼先が変わりますね。
阿部:なるほど。ありがとうございます。

まずは希望・光の皆さんにお願いしよう!

阿部:少しずつ希望・光の皆さんとの協業の幅を広げていかれたとのことでしたが、足立さんから見て、この2年間における成長・成果はどんなところにあると感じますか?

足立:まず、仕事のやり方が大きく変わりました。協業するにあたって、アノテーション業務の効率をあげるために、あるソフトウェアツールを使うことになりました。そのソフトウェアは、アノテーション業務を自動化するためのツールなので、私たちがAIを活用しながら、新たなAIモデルを作るイメージです。そのツールを使うことで、おおよそ7-8割ぐらいの精度で、AIが画像上に四角をつけてくれるので、実際に作業する人は、四角のつけ漏れであったり、おかしいものを修正したりするような作業がアノテーション業務の中心になります。結果、作業効率、生産性が上がるんですね。
阿部:そのソフトウェアを希望・光の皆さんも使われているということですか?
足立:はい。ただ、当初は、希望・光の皆さんも「そんな難しいことは…」とやや抵抗感を示されていました。というのも、最初は、そのツールであるAIが、特定の作業が出来るようになるために、繰り返し学習をさせていく必要があります。きっと、その前段階にあたる作業が難しそうに感じられたのだと思います。でも、今は、希望・光の皆さんにも、ソフトウェアを使いこなしていただいていて、その姿を僕もすごく心強く思いますし、皆さんの成長を感じています。最近では、希望・光の皆さんから、ソフトウェアの会社に対して、独自の改善要望も出されるようになったみたいなので、その辺りの変化も含めて、楽しいなと思っています。
阿部:そうした変化の中で、希望・光の皆さんへの期待値は変わりましたか?
足立:そうですね。当初は、希望・光の皆さん以外にも、アノテーション業務を依頼していましたが、最近では、まずは希望・光の皆さんにお願いしよう!という方向性になっています。
阿部:おぉそれはすごく大きな変化ですね。
足立:はい、大きいと思いますね!やっぱり作業のクオリティであったり、作業スピードも当初の心配を払拭するレベルですし、むしろ、外部に頼むよりも速く仕上げてくれるなと感じています。なので、本当に頼りにしています。

阿部:振り返ってみて、そのような変化・成長を生み出すきっかけになった日々の実践はありますか?
足立:そうですね。協業を始めてから、今日まで毎週月曜日に、希望・光の皆さんとは進捗確認の会議をしています。その会議も、2年間、毎週毎週やっていると100回ぐらいは会議をしているんですよね。その時間の中で、やっぱり人間同士だし、私もなるべくフラットに仕事をしていこうと思っているので、発注者側と受注者側といった関係性を出し過ぎず、「ここについてはちょっと相談にのってもらえませんか?」といった姿勢で関わってきました。
阿部:なるほど。足立さんが仕事をする上で大事にしている部分でもありますね。
足立:はい。やっぱり2年ぐらい一緒にやっていると、意思疎通がしやすくなるというか、お互いのことをよく分かってくるなとは感じています。
阿部:意思疎通が図りやすくなったなぁと感じる、最近のエピソードがあれば是非、教えてください。
足立:ある1つの案件の中に、希望・光の皆さんにお願いしたい作業の部分と、難易度が高めに思えた作業部分があり、後者の作業については、我々のメンバーで分担してやろうと当初考えていました。そのことを希望・光の皆さんに相談したところ、翌日には、「分担することなく、すべての作業を希望・光でやらせてください。」と言ってくれて。
阿部:おぉそれは足立さんからすると、「そこまでお願いできるんだ!」という嬉しい驚きであったということですね?
足立:そうです。希望・光の皆さんにやっていただけるのであれば、我々も助かるので、やる気もあって、すごいなと感心したのを覚えています。

「知っている」から「感じる」へ

阿部:この2年間の協業を通じて、足立さんが感じてこられた成長は他にもありますか?

足立:やっぱり弊社メンバーの障害者雇用に対する認識が確実に高まったと思います。
阿部:というと?
足立:希望・光の皆さんと仕事を始めるにあたって、希望・光の社員の皆さんの中には、健康面において配慮が必要な方もいらっしゃると聞いていたので、弊社メンバーでは希望・光の皆さんの様子を常に意識し、対話を続けながら、適切な負担のもと、業務の量や難易度を調整していくことを常に心がけるようになりました。
阿部:なるほど、お仕事を依頼するときに心がける点をメンバーの皆さんと共有されてきたということですね。まさに「合理的配慮」だなと思います。
足立:そうですね。阿部さんは、「黄金律」や「白銀律」という言葉はご存知ですか?
阿部:是非、教えてください。
足立:黄金律は、「人にやってほしいことを他の人にやってあげなさい」という考え方であり、白銀律は「自分がやってほしくないことは、他人にもするな」という否定形で記されています。僕の感覚としては、「白銀律」かなと思っています。例えば、社会人の経験が長ければ長いほど、過去に自分の経験の中で、嫌な思いをした経験もあると思います。でも、自分が嫌だなと感じたことは、他人にもしない、という単純なルールで、実は結構、世の中がうまくいくのではないかなと思っています。だから、希望・光の皆さんとの関わりの中でも、僕が、希望・光の皆さんの立場だったら嫌だろうなと思う行動は一切やらない、と決めています。それは、相手に障害がある、ないではなく、すべての人に対して同じように、この単純なルールのもとで接しています。
阿部:なるほど。先ほどお話してくださった発注先、受注先という関係をこえた先にある、「人」への思いやり、配慮というところにつながっていきますね。
足立:言葉で表現することが難しいですが、私の印象として、ソニーの従業員は、障害者雇用やLGBTQ+、SDGsについても定期的に教育を受けて、意識の高い方が多いので、頭の中では、多様性への取り組みや考え方の重要性は理解していると思います。ただ、イメージしていたことと実際にやってみて感じることには違いがあるので、私は、やっぱり実際に一緒に働いてみることが重要なんだなと改めて感じました。

協業のきっかけは、社長からの提案でしたが、我々の若いメンバーも含めて、実際に希望・光の皆さんと実践することによって、「障害者雇用」という枠組み、取り組みであることを今はほとんど意識していないと思います。もう自然な形になってきていると思います。
阿部 :「自然になってきたな」と感じられるきっかけはありましたか?
足立:最初は、我々のメンバーもどうしても固定観念があり、色んな意味で遠慮していたような印象もありました。でも、最近は、希望・光の皆さんの仕事のクオリティやアウトプットによって、我々のメンバーの中に少なからずともあった「障害」へのイメージが薄れつつあるなと感じています。イメージを払拭しているのは、まさに現場で働いている希望・光の皆さんなので、そこは良い影響を受けているなと思います。
阿部:希望・光の皆さんの熱心に仕事に取り組む姿勢が、無意識に抱いてきた「障害」へのイメージを書き換えてきたということでしょうか?
足立:そうだと思います。そういうのも含めて、健常者であるとか、健常者ではないとか、少なくとも私の中では、区別する感覚はないですね。

相互成長は、オープンネスな心と実践によって生まれる

阿部:これまでのお話を伺いながら、希望・光の皆さん、そして、御社の皆さんが、お互いに良い影響を受けながら成長されてきたのだなと感じています。組織として、お互いに刺激を受けながら活かし活かしされ成長していくために、「ここが大事!」というポイントがあれば、教えてください。

足立:やっぱりオープンネスだと思いますね。
足立:ソニーの設立趣旨書にも、「自由活達にして愉快なる理想工場」というのがありますが、まさに自由活発に議論する、議論できるような環境が重要で、それがオープンネスという言葉で表現されていることかなと思います。
阿部:オープンネスだからこそ、希望・光の皆さんとの協業の中で、それぞれのもつ強みを感じることができるのかもしれませんね。そこを閉ざしていたら、その強みも活かせないのだろうと思います。
足立:あと、繰り返しになりますが、「実践する」ってことですね。
阿部:なるほど。
足立:これをやっちゃいけない、あれをやっちゃいけないって心配して、1歩を踏み出さないよりは、その不安はちょっと横に置いておいて、コミュニケーションを取りながら解決しましょうよ、まずはやってみましょうよ、という姿勢は重要かなと思いますね。
阿部:最後に1つ、足立さんの考える「障害」ってどういうものですか?
足立:「個性」ではないでしょうか?世の中には、得意とか不得意も含めて、色々な方がいらっしゃいますよね。昔、働いていたイギリスの会社にも、コミュニケーションが取りにくい方がいらっしゃいました。コミュニケーションは難しくても、回路の設計を任せると天才的な方もいて。これもこの方の「個性」でしたし、私の中で「障害」はひとつの個性のように感じています。
阿部:仰る通りですね。その人の特性が、仕事をする上での“障害”ではなく、むしろ才能や個性として活かせるような環境を整えていくことが大事になるなと感じます。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

終わり:
仕事の成功を分かち合う相互成長の物語:ソニー希望・光株式会社&ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(全3話)

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【これまでのストーリー】

仕事の成功を分かち合う相互成長の物語(1/3):ソニー希望・光株式会社&ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
仕事の成功を分かち合う相互成長の物語(2/3):ソニー希望・光株式会社&ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社


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