初めての父の日のプレゼント
両親は不仲で喧嘩ばかりだった。
母は若いときに両親を亡くし、兄弟もなく
「天涯孤独」とよく言っていた。
その言葉にいつも心を締め付けられた。
父は母を幸せにしない”嫌なひと”だった。
その年の冬はいつになく寒かった。
寒い冬、母はくも膜下出血で急逝した。
父と不仲だった母は、生前から父方のお墓には入りたくないと
話していたので、母の両親の眠るお墓に入れた。
母の望みを父も一緒に叶えてあげた。
母が亡くなって、初めて父という人を知っていった。
父は”嫌なひと”ではなかった。
自分自身の目でちゃんと見ていたかっただけなのだけど。
母の眼鏡を外してみたとき、父は愛すべきひとだった。
団塊の世代、世情もあり、不器用でもあり、
父も母もそのときそのときを精一杯生きていた。
相性がいまいちだったのかな。
その年の父の日。
私と弟ではじめて父の日にプレゼントをした。
安物の時計。
父はしばらく大事に着けていた。
父に対して、尊敬と感謝と
今までごめんね、これからもよろしく
父という人を初めて自分の目でみたとき
そんな想いを伝えたくなった。
言葉で伝えるのは照れるので
安物の時計に伝えてもらった。