思い出のリッツカールトン
その日、わたしは新幹線で大阪に向かっていました。
日本メンタルヘルス協会の修了式が大阪で行われるため、外部講師のわたしはそこで祝辞を述べることになっているのです。
緊張しているのか、昨晩はあまり眠れなかった。
わたしは、体のことなら緊張しないで永遠に語っていられるのですが、
そのジャンルを外れると途端に頭が回らなくなる。
「みなさま、本日は、研究コース修了おめでとうございます」
ぶつぶつと祝辞を暗唱していたら、新大阪の駅に到着。
わたしは、白いスーツで駅に降り立ちました。
日本メンタルヘルス協会会長の衛藤先生は、とてもお祭り好きで、
修了式は、リッツカールトン大阪で、全員ドレスアップして参加します。
わたしは、華やかで、でも生徒さんより少し地味になるようにと、
上下白いスーツで決めました。
駅のホームは、暑さでもわっとしていました。
少しクラッとしながら歩いていると、
正面から歩いてくる人が、わたしをぎょっとしたような目で見るのです。
ふと、胸に生暖かい感触があり、目をやると、
胸が血だらけ!?
なんと、鼻血が大量に出ていたのです。
わたしは、
新大阪駅の真ん中で、
上下真っ白なスーツの胸を血で染めながら、
「なんじゃこりゃー!?」
と叫びました。
そのままリッツカールトンに行くわけにもいかないので、
阪急だったか阪神だったかの百貨店に入りました。
入った瞬間、ザザーッと人が除け、目の前に花道が出来上がりました。
しばらくすると、遠目で様子をうかがっていた大阪のおばちゃん集団がやってきました。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「鼻血で服を汚してしまって。卒業式まで時間がないので急いでドレスを買いに」コンコンコン・・・
「お姉ちゃん、何やってるの?」
「あ、これ?鼻血止めです。」
※頸椎7番の棘突起を軽くコンコンすると、鼻血が早く止まります。
「分かった!お姉ちゃん少し休んどき。わたしが叩いてあげるから」
ガン!ガン!ガン!
「ありがとうございます・・・でも、もうちょっとやさしく(T_T) 」
鼻血が少し落ち着いたので、ドレス売り場に移動しようとすると、
おばちゃんたちがわたしの周りを囲んで、血が見えないように隠してくれました。
そして、
「ほら、見るんじゃないよ!見世物じゃないんだからね!そこ!見ない!!!」
あ・・ありがとよ(T_T)
そして、売り場では値引き交渉までやっていただき、無事、新しいドレスに着替えることができました。
少し遅れてリッツカールトン大阪に到着したわたしは、
すぐに舞台に呼ばれました。
やばい・・・
祝辞全部忘れた・・・
苦し紛れに、ここまでのいきさつを冒頭に話しました。
「なんじゃこりゃー!?」と叫びました。と言うと、
会場がドッカン!ドッカン!ウケます。
肝心の祝辞の部分は、最後に、
「ということで、みなさま修了おめでとうございます」
の一言。(だって忘れちゃったんだもん)
ところが、衛藤先生からは思いっきりgoodサイン
他の先生からも、「最高だった!」と大絶賛。
生徒さんからも、純子先生の話しが強烈すぎて、それしか記憶にないと言われ。
結果、大成功だったのか?
リッツカールトンと聞くと、いつもこの場面を思い出します。