稲荷寿司の研究。
4月くらいに「宿泊費が安くなって、地域のクーポン券ももらえる」という県民割とかを使ってお得に近場の旅を楽しむべく、母と岩手県一関市の「桃の湯」に一泊してきた。
夕飯前にお風呂に入っていた時のことだ。
仙台から来たという、左手薬指に大きな宝石付き指輪をしていた奥さまがお風呂に入ってきた。奥さまは俳句の夏井先生を若くしたような素敵な女性だった。
「ここのお風呂、いいわねー」
確か、そんな感じの会話から夏井奥さま(仮名)との会話が始まったのだ。
話の仕方、声のトーンからお上品な方なんだと感じた。
「一関の大福屋のお団子、美味しいのよー」
最初は単なる世間話をしていたのだが、途中から夏井奥さまは何故か「稲荷寿司」と「寿司酢」について語り出した。
どうして、初対面の奥さまとこんな話をしているのだろう、と感じながらも、夏井奥さまは楽しそうに言った。
「稲荷寿司って簡単だし、美味しいし、夫も大好きで良く作ってあげるのよ」
「え? 面倒くさくないですか?」
私はそれまで、稲荷寿司=面倒くさいという観念を持っていた。
「ぜーんぜん。寿司酢もね、買ったのじゃなくて自分好みのお酢を手作りしてみるといいわよ」
「奥さま、今度稲荷寿司の講座を開いていただけますか?」
夏井奥さまは「オホホホ、私の話聞きたい人いるのかしら?」
そう笑うと、「ハイ」私は手を挙げた。また奥さまは笑った。
「なんでもやってみると楽しいものよ。稲荷寿司、作ってみてー」
その話を聞いてしまってから、私は稲荷寿司の研究を始めた。
それから、稲荷寿司の研究を始めた。
最初は普通の稲荷寿司を作った。
ちょっと薄味だが、まあまあの出来上がりである。
私の中でまあまあは納得いかない。
ある日、◯亀製麺に行った時のこと。
稲荷寿司が置いてあるではないか。
あまり見たことがない、三角形の稲荷寿司。
食べてみると、中に胡麻が入っていた。
「美味しい……。そうだ!今度酢飯に胡麻を入れてみよう!」
こうして、私は夏井奥さまの「稲荷寿司」と「寿司酢」の研究にどんどんハマっていったのである。
毎日、稲荷寿司を作るのはどうしても飽きてしまうため、一旦間を置いて作る。
胡麻を入れたり、岩下の新生姜を入れてみたりと
色々と工夫をしたが、「コレダ!!」と納得のいくものはできない。
私は稲荷寿司に恋でもしたかのようだった。
「君は永遠に手に入らない、素敵なお姫様なのか……」
ため息をついていても仕方がないのは分かっている。
私が作る稲荷寿司はどうしても薄味になるのだ。
ここで、思いついたのは油抜きをした時に良くお湯を切っていないということに気がついた。これじゃあ、薄くなるじゃん。
そして、今日
まだ道半ばではあるが、多少納得のいく稲荷寿司ができた。(でも寿司酢は納得いってない)
そのレシピをご紹介しましょう。
これで、美味しい稲荷寿司の皮の出来上がりである。
そして次は、納得のいく酢飯の研究が始まるのだ。
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