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自己紹介:ちょっと毛深い妹の話
以前の投稿で、わたしは中学生で精神疾患になったお話をした
精神疾患の話ばかり続けていると、わたし自身がどんどん落ちていくので少し違う話をする
とは言っても、この話のきっかけも精神疾患である
鬱病を患い、引きこもりになり、食べることも動くこともできず、何をしたら快くなるのかがわからない
ある日、親が犬を飼ってみたらどうか?と言ってきた
当時はペットブームでご近所さんや同級生も犬を飼っていた
わたしは小さい頃から、もちろん今も、動物が大好きだ
ペットショップは嫌だったので、ブリーダーから譲り受けることにした
ミニチュアダックスの女の子
ペットと言うか、妹だ
ただ、ちょっと毛深い妹
引きこもりでずっと家にいたので、わたしがしつけをした
妹が少し大きくなって、散歩で外に出るようになった
妹は社交的で好奇心旺盛、犬友がいっぱい出来た
わたしとは正反対な妹が羨ましかったりした
数年経ち、気づけばわたしの体調もかなり快くなっていた
通信制の高校を卒業し、1人暮らしができるまでになった
妹のおかげだ
しばらく実家を離れていたが、妹が10歳を超えたころ、いつ何があってもおかしくないと思うようになった
当時は入りたかった会社に入り仕事をしていたが、不規則な勤務と職場イジメでボロボロだった
実家に帰るいい機会だと思った
実家に帰ると、妹の態度が違う
なんか、わたしの位が上がったようだ
これは人間の推測でしかないが、おそらく妹は家にいない時間が長い人間を偉いと思っている気がする
狩りに出ていると思っているのか、出稼ぎに行っていると思っているのか、知らんけど
推測の裏付けとしては、父親もリタイアして家にいるようになったら位が下がったからだ
妹はわたしのマネをしたがった
メイクしているのをジッと見て、メイク道具を盗んでみたり
一緒に長風呂したり、美容にいいものを試してみたり
お風呂に入る約束をすっぽかすと、部屋をぐちゃぐちゃにされたこともある
それ以降、お風呂に入る約束をするのはやめた
この話をすると、ほんとに犬なの?とよく言われた
妹の頭の中を覗いてみたかった
そんな感じで何事もなく数年が過ぎた
何事もなくとは言うが、妹は確実に老いていた
毛は白くなり、寒さに弱くなり、散歩に行かなくなり、寝ている時間が増えていった
コロナ禍で仕事が自宅待機になっていた頃、急にそのときはやってきた
妹がご飯を食べなくなった
水も飲まない
注射器で飲ませてあげればまだ飲んでくれる
フラフラになりながら、トイレには行く
もう目は全然見えていない
ついに立ち上がれなくなる
寝返りもうてない
苦しくて必死に鳴く
寝返りをうたせてあげると少し落ち着くようだ
また苦しくて鳴く
その繰り返しがしばらく続く
だんだん呼吸が荒くなる
口を開けて苦しそうに
人工呼吸もしたけど、すでに心臓は止まっていた
少しして、妹の目から光が消えた
泣きじゃくりながら、自然と出てきた言葉は【ありがとう】だった
コロナ禍で唯一良かったことは、妹を看取れたこと
なぜ、妹の話をしようと思ったのか
各地を転々とする生活を続けるうちに、犬を飼っていたことを話す機会がなくなった
話す機会がなくなると、妹の存在が消えてしまうようで寂しい
わたしにはとてもとても大切な存在
妹がいなければ最初の鬱は寛解していなかっただろう
最初の鬱が寛解していなければ、今のわたしも当然いない
だから知って欲しかった
ちょっと毛深い妹【シオン】の話