吹き替えで見る『ヴィンチェンツォ』でセクシャル問題を考える
セクシャルといえばバイオレット、じゅんぷうです。
なんでセクシャルかって? 現在、3周目の『ヴィンチェンツォ』を日本語吹き替えで見ております。韓国語音声・日本語字幕で見ていた1、2周目のときに、うっすら気になっていたポイントがありました。それが何度か出てくるワード「セクハラ」。
というのも、これが「ちょっとー、それセクハラ―!」とか「これ以上言うとセクハラで訴える」みたいなノリの会話で出てくるのではなく、それきっかけで傷害致死が起きたり、深刻な被害者がいる事案として法廷や検察内部での発言で「セクハラ」って字幕で出てくるのが、なんだかモヤモヤしていたのです。
決してセクハラが軽いというわけじゃないけど、仮にもセクハラといえるのは事件が起きる前までではないのか、と。
まず1話で、殺人罪のオ・ギョンジャが法廷で発言するシーン。
家政婦として派遣された先の主人にセクハラされ、拒んだ際に主人の打ち所が悪く…という状況説明、これが吹き替えでどうなっていたかというと、
もちろんセクハラであっても罪は罪だし、この場合は雇用関係のモラハラも含む根深い問題があるのですが、言葉として、暴行ってハラスメントというよりレイプでは? 受けとめ方が違ってきますよね。
このセリフの部分、韓国語音声に耳をすませてみると(自信はないけど)「ソンチュヘン」と言っているように聞こえます。
ソンチュヘン(성추행)=性醜行といってボディタッチなどのハラスメントのことだそうです。拒んだ際に…という状況だしレイプに至ってはいないのかもしれないけど醜悪な行為には違いなく、ただ状況を日本のニュアンスであてはめると「暴行されて」より「暴行(あるいは乱暴)されそうになって」がしっくりくると思う。
つづいて2話で、検事のチェ・ミョンヒが検事長たちに内部スキャンダルのもみ消しをゴリ押しされるシーン。
このニュアンスだと職場や何かで性的なひやかし発言や関係を強要するようなことがあったのかな、という受けとめ方になりますが、これも
と、ずばり完全に犯罪でしたし、韓国語音声にまたまた耳を傾けると「ソンポケン」と聞こえます。ソンポケン(성폭행)=性暴行。醜行も吹き替えでは暴行になっていましたが、言葉によるセクハラは성희롱(性戲弄)と、韓国ではそれぞれに表現が違うのですね。言葉だろうが行為だろうが許すまじではありますが…ひとくくりにセクハラとするのは何…やさしさ?
なんだかデリケートな問題になってしまったけど、吹き替えで見る『ヴィンチェンツォ』がいろいろ勉強になるという話でした。どうしても吹き替えだと海外ドラマ感が出てしまいますが、今のところ、われらがピョ・チスのヤン・ギョンウォン演じるイ社長がもっとも期待を裏切らない吹き替えでした。
ちなみにですが桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」(1979年)を作詞された松本隆先生、「セクシャル」「バイオレット」「No.1」と、当時時代遅れのダサい言葉を並べてカッコよく歌ったらカッコよくなると思った、とインタビューでおっしゃっていました。とにかく並べるという、すみれひまわりフリージア手法はここからだったのですね。