表現すること、創作と展示、それと対話
イラストレーターの菊地です。この記事は、イラストレーターとしてではなく、ディレクター(口幅たいですが)的な、企画を作って運営してきた人間として書いています。noteのメンバーシップの案内になります。
ちょっと長いので、これまでの活動を知っている方は、目次から「対話の場(カフェ)、誰かと話したいとき」あたりからお読みください。
展示する場(ギャラリー)、絵を見てもらいたいとき
東北の山形県の南の端の置賜盆地でアート活動をしています。
展示するための場所(ギャラリー)ではないような場所をお借りして、個展やグループ展も行ってきました。
東北大震災以降のことです。地域の中、あちらこちらで場所をお借りして、展示する場所を探し、耕すような時間でした。2011年から2015年まで年に2回のペースで「BeHereNow」というグループ展を10回開催しました。
その後、2016年から一枚のマップに展示情報をまとめたアーツシードに移行しています。SEED(種)と入っているのは、グループ展で開墾した展示スペースに、種を蒔いていくイメージでした。この企画は置賜地方を超えて、村山地方、最上地方にも広がっています。(この生活圏としての盆地、昔の藩、風土といったものと「山形」という行政区分との差異はどこかで別に書いてみたいです)
この辺りの活動は、このマガジンの記事をお読みください。
この地域には、展示するためのスペース、ギャラリーが少ないことは知っていました。ギャラリーには、使用料を払えばお借りできるものから、ギャラリー側が展示する内容、作家など選び企画するもの、カフェと併設しているカフェギャラリーのようなものまで仕組みや、私設、公設のものと様々ありますが、この地域には一様にその選択肢は少ないのが実状かと思います。
展示する場所が少なければ、展示する機会も自ずと少なくなる、それは作家活動に影響するし、この地域の文化にも影響するはずです。
そういった思いから、グループ展やアーツシードの企画を行なっています。
創作の場(アトリエ)、何かを表現したいとき
その後、2019年からは、福祉とアートにも関わるようになりました。
米沢市主催の「わたしとあなたの表現 -障がいのある方と関わる方の作品展-」です。この公募展は市内の障がいのある方やそれに関わるご家族や友人、福祉事業所の方など幅広く作品を募集し展示して見ていただく作品展です。米沢市が共生社会を目指した条例を制定したのをきっかけに始まりました。その企画、コーディネーター、デザイナーとして参加しています。
この企画に関わるようになって、福祉事業所に訪問させていただく機会がうまれました。実際の創作活動、表現している場を見せてもらう機会です。
さまざま、事業所によっても異なりますが、創作表現活動に力を入れている事業所でも、マンパワーや画材や技法、表現活動の関わり方などは、福祉の現場ではなかなか手が回らないのが現状のようです。
(また福祉の専門性と、表現の専門性、それを橋渡しする仕事もあると思います)
常々これは作家として思うことですが、表現には環境が大事だと考えています。表現したくなる環境づくり。充実した環境があれば自ずと表現したくなるものだと思います。(教えたりは極力しません)
障がいのある人が、表現することにも障がいを感じるかといえば必ずしもそうではありません。のびのび表現される方も大勢いらっしゃいます。
ただし、ご自身で画材を選んだり、表現手段(絵画、陶芸、彫刻、音楽、etc.)を開拓するということはなかなか大変かもしれません。
その人にあった画材や表現、のびのび汚せる環境、そういった支援やアトリエが創作活動には必要です。
この地域では福祉の現場に限らず、地域にアトリエというものはほぼありません。少なくとも週末映画館に行くようにアトリエに通うということはほぼないといっていいかと思います。
そうです、展示スペースも少ないし、創作スペースはほぼないに等しかったのです。それは福祉の現場だけではありません。すべての市民がアクセス可能な表現に関わるスペースがとても少なかったことに気がつきました。
それらを「表現の保証」と呼ぶことにしました。創作と展示の保証です。
詳しくは下記の記事も参照ください。
農機具小屋からアトリエへ、ギャラリーとカフェも
2022年にアトリエの1階をリノベーションしました。言ってみれば「表現の保証」のためです。展示する場所であり、創作する場でもある。カフェもあるので気軽にどうぞ。そういう場を考えていました。(下記の記事ではコワーキングスペースもうたっていますが、現在はカフェしてくれれば場所をお使いください、という案内の仕方にしています)
カフェもできるようにしたいとはずっと思っていました。
コーヒーが好きですし、展示を見ながらや、創作のあとにお茶をする、そういう場がいい。
それに、カフェもできることで、ギャラリーやアトリエの敷居が下がると思ったのです。なんと言ってもこの地域にはギャラリーもアトリエも馴染みがないのだから、でもカフェだと何となく相場はわかるし、とりあえずお茶をして帰ってくればいい。
だから、とりえずカフェはおまけのようなものだと考えていました。
対話の場(カフェ)、誰かと話したいと思ったとき
でも、そうではなかったのです。カフェがやっぱり必要だったのです。
それは対話する場のためにです。対話する場はコミニュケーションのする場といってもいいですし、批評する場や言論空間に育てばとも思います。
(ここで批評についてどう扱うか考えるかはくわしく別の記事にします)
創作して、展示して作品を見てもらう、その感想(批評)をもらう。
これのサイクルは創作活動にはかかせないものです。作ったままでも、飾ったままでもダメで、他者からの意見をもらう、というフィードバックがあってはじめて、作品や作家が育つのではないでしょうか。
何もうちのアトリエに飾った作品でなくとも、本や映画、よその展示、新聞の記事、アートや福祉の話、実際の身の回りの些細な事柄でもよいのです。共有して共通の言葉を編んでいく、そういう場も地域に必要だと思うのです。サロン的空間といってもいいと思います。
カフェが対話の場だと気がつくまで、ほぼ2年かかりました。
それはうちのアトリエに通ってくれる常連さんが教えてくれました。常連さんと話すことが、対話だったのです。(会話ではなく)
対話からコミュニティーが育ってきたから気がつけたのだと思います。
noteのメンバーシップ
でも、ただ話すだけは言葉が留まらず、その日その時その場にいた人としか共有できない。それはもったいないし、地域的なことやお互いの気忙しい日々を思うとなおのこと言葉を留めておきたい。
文章(テキスト)にするということは、その人の考えや態度を表すことです。そのことで他者から認識される。そこからコミニュケーションが生まれていく。
そのためにはカフェだけではなく、もう少し仕掛けがいりそうです。
色々考えて、noteのメンバーシップをはじめてみることにしました。
実際の場(身体性を伴う)はあります、文章を留めて共有する場としてnoteのメンバーシップ(ネット空間)を利用して見ます。
メンバーになってくれた方には、限定の記事を読んでいただいたり、実際のカフェのメニューから100円お引きします。ささやかな特典ですがメンバーになっていただけたら嬉しいです。それは対話の場を一緒につくれることでもありますし、アトリエの維持にもつながります。
実のところ、月に一回カフェに来ていただけるだけでも、アトリエの維持に大変助かります。でも、なかなかそうは言っても忙しい、そういう方にはぜひメンバーシップになって応援いただけると大変助かります。
メンバーシップでは、アトリエでの企画や展示の話、菊地が日頃考えていること、本や映画、アートレビュー、それと「アトリエの教室」の課題テキストの公開、具体的な創作やデザインの相談なども掲示板をつかって行なっていくつもりです。
また、エッセイ、批評の書き方講座も企画する予定です。菊地のテキストだけではなく、メンバーの方のテキストもマガジンに収録していくようにします。往復書簡になっていけば良いと思います。テキストが溜まってきたら、実際に本にできたらいいですね。
では、これからも、創作と展示、そして対話とよろしくお願いします!
サポートや有料記事の売上は、シェアアトリエのリノベ資金にさせて頂きます!