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「北海道日高の浦河町で本屋を作るって可能ですか/久住邦晴」を読んで

久しぶりに爽快な読後感を感じました。

久住社長の経営する書店「くすみ書房」は、小さいころ育った町にありました。先日、帰省した際には、別の場所に移転したと聞いていたのですが、”町の本屋”として「くすみ書房」は、私の記憶に残っています。

本屋好きの自分の住居を決める基準は”近くに本屋があること”です。本屋に行くことで新たな本や雑誌と出会うことができ、新たな知識を得ることができます。本屋をぶらぶらするだけでもストレス発散にもなりますので本屋がない町に住むこと自体、私には到底考えられません。

しかし、最近、地方から本屋が消えている、という話をよく聞きます。この論考の冒頭も、こう始まります。

毎年、全国からたくさんの町の本屋が消えています。昨年も974店の本屋が姿を消しました。

そのような中、久住さんは留萌市の取り組みが紹介します。

留萌市では本屋がなくなったあとに、地元の方々が立ち上がって、三省堂書店の誘致に成功したというのです。人口30万人を出店の目安としてきた三省堂書店を人口2万4千人の留萌市に呼び込んだのです。さらに驚くべきなのは、出典を維持するためにボランティアで応援を続け、単年度で黒字なったというのです。

そして、久住さんのところにも浦河町から、”本屋を作ることが可能ですか?”という講演の依頼が来ます。

浦河町は、人口約1万3千人。馳星周さんの出身地でもあります。数年前まではあったそうですが、現在1店も本屋はありません。

論考で、久住さんは、理想論や行政論などを振りかざすのではなく、あくまで現実的な解決策を思考します。その思考過程とその裏付けが詳細に書かれているのですが、いずれも説得力があり極めて具体的です。

当日の講演では、久住さんはすがすがしくこう答えます。

「浦河町に本屋を作ることって可能ですか?」「はい、できます。但し、いくつかの条件と、そして発想の転換が必要です」

その発想の転換とは、本屋は在るものではなく住んでいる方々が作るもの、という考えではないか、と思われます。

地元から本屋が消えることについて、そこに住んでいる住民の方々が真剣に考え、本当に必要としなければ、一時的には本屋はできても維持はできないでしょう。住民が主体的に考え、動くこと。それが行政を動かすきっかけにもなります。

行政から働きかけても、住民はそれを享受するだけに終始し自分のことのように考えないかもしれません。

11月から毎週1回営業の本屋をスタートすることになりました。「六畳書房(ロクジョーショボウ)11月オープン」

講演後、地元の住民の積極的な取り組みにより浦河市にも、この11月から本屋が戻ってくるのです。

六畳書房が、今後も住民の手でしっかりと成長していくこと、そして留萌市、浦河市のこうした取り組みを事例として共有し、北海道、全国の地方の住民の方々が本屋について主体的に考えていくことを期待したいと思います。

本文中引用した箇所は、いずれも「出版ニュース 2014年.10 4-9頁」参照




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