最新・著作権法改正の動向-柔軟性のある権利制限の行末〔1〕
第1回:検討の経緯
2017年2月24日、文化庁法制基本問題小委員会において、ある報告書の内容を踏まえた中間まとめが承認された。
この報告書とは、「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等に関する報告書」(以下「報告書」という。)である。
これは「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」(以下「WT」という。)で取りまとめられたものである。
何より報告書もWTも名前が長い。
名前の長さに比例して、この報告書の裏には、多くの人々の様々な思惑が渦巻いている。
その人々とは国会議員、内閣府、経産省、文化庁の各役人、メーカー、利用者団体、権利者団体、ネットユーザーなどなどである。
そうした人々の思惑が悲喜交々と表現されている報告書といってもよいかもしれないが、そもそも「柔軟性のある権利制限?なに、それ?」と感じる人も多いと思う。
平たく言えば、アメリカ著作権法にあるようなフェア・ユースを導入するのか否か、という議論から始まった問題である。
これは、もう「宗教戦争」と言ってよいと思うくらい長い間、議論されてきた問題でもある。
この報告書には一つの解が記載されており、この報告書に基づいて著作権法の改正がなされることになっていて、早ければ2018年1月に施行され、ビジネスシーンを変えるかもしれない。
なんだ、これで「宗教戦争」も終わりなんだ、と思うかもしれないが、個人的には、「宗教戦争」は沈静化することなく、これからも続くだろうと思っている。
なぜなら、アメリカのようなフェアユースを日本に導入するという結論に、この報告書がなっていないからである。
したがって、今後もフェア・ユース信奉者によって議論が提起され、アンチ・フェア・ユース信奉者によって抵抗がなされるという状況は続くであろう。
世界から「宗教戦争」がなくならないのと同じように、この問題は、この先もずっと続くであろうと思っている。
さはさりながら、この報告書に基づいて著作権法改正が進められることは間違いないのであるから、この報告書の内容をいち早く理解することは非常に重要である。
しかし、この報告書のページ数は、すべてあわせると80頁にも及ぶ超大作である。
「全部読んでられないよ」という方のために、この報告書を読み解くためにポイントをまとめて書いていきたいと思う(※本連載は、個人的な見解を好き勝手に書いてみようと思っているので、転載は禁止、他言無用とさせていただきたい。)。
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